三カ月遅れの授賞式に笑顔と涙/高崎映画祭
(2011年6月20日)
東京で出張授賞式。受賞者に喜びの声を取材
6月18日(土)、東京都渋谷区にあるミニシアター、ユーロスペースで、3月27日に行われる予定だった第25回高崎映画祭の授賞式が行われた。 この授賞式は映画『ヘヴンズストーリー』の配給と映画関係者が企画したもので、『ヘヴンズストーリー』上映終了後に出張高崎映画祭授賞式として行われた。当日は、最優秀作品賞受賞の瀬々敬久監督、最優秀主演男優賞受賞の長谷川朝晴さん、最優秀助演女優賞受賞の山崎ハコさん、最優秀新人女優賞受賞の寉岡萌希さんが登壇。さらに忍成修吾さん、片岡礼子さん、村上淳さんら、映画を彩った出演者も登壇し、集まった80人の観客を沸かせた。
瀬々監督は「10年前に『RUSH!』という映画で賞をもらった。高崎映画祭は自分たちが観たい映画を地方でもやろうという考えのもと始まった映画祭。そういった意味では今回高崎と東京が繋がったということは非常に嬉しい」と前代表の故茂木正男さんとの思い出を振り返り喜びを語った。
長谷川さんは「役者をやって20年近くだがこんな賞をいただけるとは思わなかった。受賞を電車の中で聞き、その場で涙が出た。作品は色んな感じ方をされると思うが、こうやって長いこと上映され、お客さんが観に来てくれる、すごくいい作品に出会えた」と受賞を知らされたときのエピソードを披露した。
山崎さんは「トロフィーが恭子のオルゴールそっくり。映画があんまり好きでライブのない時は映画ばっかり観ているので、出られただけで神様からのプレゼントなんだと思っていた。初めての映画、初めての賞。皆さんのおかげです。瀬々監督、一度もお会いできなかった茂木さん、市民の映画祭嬉しく思います」とトロフィーを感慨深そうに見つめていた。
寉岡さんは「5歳の頃からこの仕事をやっているが、初めてこういう形で自分の演技を評価していただいてとても嬉しい。そして、このヘヴンズストーリーという思い入れのある作品で賞をいただけて本当にすごく光栄」と涙声で感想を述べた。
高崎映画祭からはスタッフを代表して、山藤堅志さんが挨拶し、賞状とトロフィーの授与が行われた。また、この日の為に新たにミニサイズの映画祭名物高崎だるまが用意された。
山藤さんは「配給と映画関係者からの呼びかけをもらい、高崎映画祭がみんなに愛されていると感じた。今年は授賞式ができなかったので、スタッフの中でもなんとなく終わってない感じ、きりがつかない感じがあった。出張授賞式をやったことによって25回がちゃんと終わった」と笑顔を見せた。25年の歴史ではじめての出張授賞式、高崎映画祭を訪れたことのない観客にも高崎の春の風物詩を知ってもらうチャンスとなった。
授賞式後には関係者を集め、撮影終了後初めての打ち上げが賑やかに行われた。各受賞者から高崎新聞だけに喜びの声をいただいた。
- 長谷川朝晴さん
- 「普段俳優は褒められることがないので嬉しい。みんなで好きなものを作った、言わば自主映画と言えるこの作品で評価されたことが嬉しい。受賞の記事が全国紙に載った時は震えた」さらに、高崎映画祭の公式パンフレットで一際目を引く感想を寄せてくれた長谷川さん。「昨年、その前のパンフレットを見て、他の俳優さんが余りに格好いい事を書いているので・・・あんなのですみません」と照れ笑いを見せた。
- 寉岡萌希さん
- 「本当に初めてもらった賞だったので嬉しかった。家族と車に乗っていたときに授賞の知らせを聞き、本当かどうか疑ってしまった。自分が成長している時に撮影したので、この映画を通して精神的に成長する事ができた。撮影ではキャストの皆さんと仲良くしたいけれど、近くなりすぎると役柄に影響すると思った」という撮影秘話も教えてくれた。
- 瀬々監督
- 「高崎映画祭は市民がやっている映画祭。この映画を撮ろうと思ったのは、世間で起きている様々な出来事の当事者に自分たちもなるような時代になった現在、こういう時代になったのはなぜかということを問う映画を作りたかったから。それは自分が今やるべき事だと思う。キャスト選びでは、今を生きている、生々しい感じを出してくれる役者を求めて今回のキャスティングになった」と作品に対する思いを語ってくれた。
- 山崎ハコさん
- 「生まれて初めて個人でもらった賞。36年間歌を歌ってきたけれど、初めて評価された。賞をもらったと聞いた時は「新人賞かな」なんて冗談を言っていたが、助演女優賞に選ばれ、光栄に思っている。助演というのはこの映画を助けている要の存在であるので非常に嬉しい」と助演女優賞が贈られたことに大きな喜びを感じている様子だった。