第10回あすなろ忌/詩人や芸術家が集う
(2011年4月14日)
7日から12日まで「甦るあすなろ」展も開催
鞘町にあった喫茶店「あすなろ」と同店の店主で詩人の故・崔華國さんを偲ぶ「あすなろ忌」の集いが、10日にNTTユーホールで行われた。あすなろ忌は今年が10回目で、記念展「甦るあすなろ」も7日から12日まで同ホールで開催された。
あすなろでは、群馬交響楽団員によるコンサートや詩の朗読会などが行われ、高崎の文化を育てた喫茶店として、未だ市民の記憶に残っている。あすなろ忌は崔さんの命日にあわせて開催されており、詩人や当時の関係者らが集まった。
主催者の関口将夫さんは「あすなろは文化の磁場であり、私たちはあすなろを通じてさまざまな人達と関わってきた。みんなで場とは何か考えていこう」と参加者に呼びかけた。
講演では、あすなろで働いていた曽根ヨシさんが、「あすなろの日々を生きて」をテーマに、初期の詩の朗読会の様子や、崔さんが詩作を始めたきっかけ、閉店を決めた崔さんの胸中などを語り「諧謔とユーモアにあふれていた」と崔さんの人柄を偲んだ。
また上毛新聞であすなろの特集記事をまとめ、あすなろ忌のきっかけを作った同社論説委員長の藤井浩さんは「大震災で日本は危機に直面しているが、こういう時代だからこそ、崔華國さんの精神がさらに意味を持つ。浮ついていない本気の道楽、命がけでやっていたのが崔さんだ」と話した。
あすなろで演奏したことのある小田原由美さん、青柳高夫さん、田村次男さんによるミニコンサートが、来場者の心を打った。小田原さんは「大学を卒業し、群響に入団した日に、高崎で知らなければならない場所があると、先輩に言われて連れていかれたのがあすなろだった。私は、あすなろに衝撃を受け、すばらしいまちに来たと感じた」と振り返った。
詩の朗読では、伊藤信一さん、志村喜代子さん、神保武子さんが茨木のり子や吉原幸子らの作品を紹介した。
毎年、アメリカ在住の崔さん夫人・金善慶さんが参加しているが、今年は大震災の影響で航空機がキャンセルとなり、やむなく欠席となった。「一年に一度、花の季節のこの日のために過ごしてきましたが、大地震の惨事で行けなくなりました」と夫人のメッセージが紹介された。