まちづくりの「手段」と「目的」とは
(2010年12月14日)
生涯学習フェスで座談会。「今までのやり方を変えないといけない」
高崎市生涯学習フェスティバルが12日に高崎市文化会館で開催された。社会教育関係団体、公民館関係団体などが集い、高崎第九合唱団による生涯学習活動の発表、功労者表彰、講話、公開座談会が行われた。
講話では、高崎経済大学准教授の櫻井常矢さんが、事業の目的を明確にすること、社会実験として実行していくことの重要さを語った。櫻井さんは「(手段)を通して(目的)を行う」ことを考えてほしいと強調した。「地域の防犯パトロールは、悪い人を捕まえることが目的ではない。捕まえるのは警察の役割。子ども達や近所に声をかけ、地域の人間関係によって悪い人が入りにくい環境をつくることが目的。また、未経験の取り組みは、うまくいくのか誰にもわからない。社会実験としてとにかくやってみよう。市民の主体的な取り組みをサポートしていくのが公民館の役割」と話した。
公開座談会では、高崎市区長会長の竹中三郎さん、高崎市公民館連絡協議会長の中曽根史一さん、高崎市生涯学習推進協議会委員の片貝由記さん、コーディネーターとして高崎市公民館運営審議会長の熊倉浩靖さんが登壇し、櫻井さんがアドバイザーをつとめた。
登壇者からは、日頃の生涯学習活動、まちづくり活動の工夫や課題について意見が出された。竹中さんは「私の住む南地区では、公民館を中心に情報発信していくように、みんなで心をあわせてきた。先輩達が大切に残してくれた山車が町内の絆になっている。まちづくりを行う上では、その都度、その都度、難しい問題に直面することも多い」。中曽根さんは「私の地元豊岡町では、町民運動会の参加者を増やすために『応援』という参加方法を取り入れた。高齢者が運動会を見に来てお弁当を食べていってもらう。高齢化に対応した参加の在り方を考えた。行事の中には、高齢者には体力的に大変なものもあり、時代に合わせて内容を変えていくことも必要だ」。片貝さんは「市民がより良く生きるためには地域全体ががんばらないといけない。私たちは『つなぎ人』として人、団体、行政をつなげていきたい」と述べた。
また、課題として中曽根さんは「公民館利用者は年間98万もおり、その82%が女性。一方、高崎市の区長529人の中で女性は6人、公民館長は43館あるが、現在、女性の館長はいない」と述べた。片貝さんは「地域活動、公民館活動には、お金と雑務が伴う。お金と時間を無駄に使わず、できることで無理なく参加できるようにしないといけない」と提起し、中曽根さんも「豊岡地区では、長寿会が残っているのは10町内のうち一つだけ。子ども会育成会も組織率が58%になってしまった。どちらも役員のなり手がいないのが理由だ。運営方法や体制を工夫することが喫緊の課題だ」と警鐘した。
櫻井さんは「女性館長をつくる、若手を育てるための仕組みについて、分科会をつくって議論し実行しているまちもあった。『今までのやり方を変えないといけない』という認識が必要だ」と助言した。熊倉さんは「高崎市の一校区一公民館は、日本で最もすばらしい仕組みだが、その仕組みが機能しているのが考える必要もある。37万市民が次のステップに挑戦していこう」と述べた。