群馬県の交流性/関東では低水準
(2011年1月18日)
群馬の交流は埼玉、栃木、東京の3都県に固定化傾向
都道府県間の人・物の移動を集計
国土交通省が実施している「旅客・貨物地域流動調査」で、各都道府県の交流人口や物流の様子が示されている。年度ごとに鉄道、自動車、船舶、航空による人や物の動きが示され、現在、平成20年度までのデータが公表されている。なお自動車による人の移動は、完全に把握することは不可能なことからサンプル調査となっている。そのため、精度は低いものの、全国を同じ尺度で測定されたデータとして、各県の傾向を知ることができる。
当該都道府県から他の都道府県に移動した「発量」、他都道府県から当該都道府県に到着した「着量」、当該都道府県内で移動した「域内移動量」、着量・発量・域内移動量を合計した「総量」が示されている。総量に対して、発量・着量の占める割合が大きく、域内移動量の割合が小さければ、他県との行き来が多く、交流人口の比率が高いと見ることができる。
高崎市が「都市集客戦略ビジョン」に示した関東、上信越、北陸地域について、この調査結果を集計した。
交流エリアは埼玉、栃木、東京に固定化
人の移動を示す旅客移動量の総量では、群馬県は、平成20年度は17億5832万人で、全国的には「上の下」あるいは「中の上」といった順位だ。群馬は関東では低位となっている。
群馬から他県への発量は1億3077万人、他県から群馬に来る着量は1億3017万人、群馬県内で移動する県域移動量は14億9737万人となっている。
群馬から人が向かう先は、主に埼玉県に7133万人、栃木県に3046万人、東京都に1340万人。群馬県に来る人では、埼玉県から7100万人、栃木県から3040万人、東京から1324万人となっている。群馬県の着量のうち、埼玉県からが54%を占め、交流面については、群馬県は埼玉県依存している。ところが、埼玉県の交流の主力は東京へ向かい、群馬県の位置づけは、埼玉県発量の8%にしか過ぎない。埼玉県、栃木県、東京都の上位三都県で、群馬の着量の約9割となる。新潟県、長野県との交流は300万人から500万人で群馬県の着量の8%。自然や温泉などの観光で、全国から群馬に人が訪れていると思いがちだが、実際の交流は生活やビジネスが占め、総体での多様性は、群馬県は低い。
信越・北陸との交流は現状では弱い
総量に対する域内移動量の比率で、各県の交流性を見ると、地域特性が現れている。東京、埼玉は交流性が高く域内移動量は約70%、首都圏に準じる北関東が80%台、新潟県や長野県では流動性が低く、域内移動量が90%台となっている。信越、北陸では、人・物ともに、県内での移動が多く、県外との交流が少ないことがうかがえる。
新潟県、長野県は中部圏とのつながりが大きいが、関東との交流では、東京都、群馬県への移動が多い。群馬県と栃木県は、よく似た特徴を持っている。訪れる人の総量の中で、群馬県は中部地方から8%、栃木県は東北地方から7%程度の交流を持ち、それぞれ関東と中部、関東と東北の玄関口として機能していることを示している。しかし、群馬県は他県へ行く人(発量)も、他県から来る人(着量)も、関東の中では低い水準となっている。なお全国で最も交流性の高い(他県との人の往来が多い)都道府県は、奈良県と京都府になっている。
物流では関東で低水準
物の移動を示す物流移動量の総量では、群馬県は、平成20年度は1億1795万トンで、全国的には中位。物流では、群馬県は関東で最下位となっている。年度によってバラツキがあるが、おしなべて見ると群馬県の物流機能は、関東、北関東エリアでは弱い傾向にある。20年度で群馬県からの送り先で最も多いのは埼玉県で859万トン、次いで栃木県へ430万トン、神奈川県へ326万トン、東京都へ323万トンとなっている。
高速十字軸を生かす戦略、具体化を
今年3月に北関東自動車道が全線開通し、さらには北陸新幹線の金沢延伸が予定されている。20年度までを見ると、群馬県と茨城県の間では人の移動は30数万人で、群馬県・栃木県間の移動の100分の1程度。群馬県全体の交流人口から見れば、茨城県との交流は、極めて少ない。また新潟県、長野県など中部地方の移動状況を見ると、あまり関東の方を向いていないことがわかる。幸いなことに、新潟県、長野県と群馬県との移動は一定程度あり、群馬県がストロー化していないことも示されている。
関東・北信越の中で、群馬県と交流があるのは、東京、埼玉、栃木だけで、他の県とは、相互の移動の絶対量が無い。県境を接しているとはいえ、新潟、長野とも意外におつきあいが弱く、なかなか峠を越えない。高速交通網の十字軸として機能が高まる中で、物流も含めた拠点性が期待されているが、現実として交流しているエリアは埼玉、栃木、東京に限られている。
群馬県と同様に、栃木県も、東北地方を含めた高速十字軸が完成する。栃木県の方が、地理的な条件もあり、群馬県よりも、交流の多様性にやや秀でている。現状では、群馬県よりも栃木県のほうが優位と見ることができる。
群馬と北関東、上信越、北陸地域の相互交流は、これまでの歴史的なつながりなどで、自然発生した流れの域を出ていないようだ。上信越、北陸地域と群馬との交流をさらに活発化させるのは、新潟県、長野県との交流人口が少ないことに見られるように、単に高速交通網で結ばれているということだけでは難しい。高崎市の交通拠点性が、群馬県全体の発展につながると期待されている。
高崎市が示した都市集客戦略ビジョンの早期具体化をはかり、交流人口の自然増に加え、戦略的な開発が、大きな効果を上げていくよう注目される。