高崎市自治基本条例の素案示す
(2011年1月17日)
パブコメの結果を2月中旬に公表予定
高崎市は、「高崎市自治基本条例(仮称)」の素案を公表し、昨年12月15日から今年の1月14日、まで、パブリックコメントを募集した。寄せられた意見は、高崎市の考えとともに、今年2月中旬に高崎市ホームページなどで公表される予定。
高崎市自治基本条例は、市民自治の基本原則やまちづくりの基本方針、まちづくりの主体となる市民の権利や責務、市の役割や責務などを定めている。また、特に重要なことがらについては、住民投票を行うことも定められている。
高崎市では、平成20年から、公募による市民委員と市職員が協働で、自治基本条例の検討に取り組み、タウンミーティングや意見交換会などを実施して、市民意見の集約を行なってきた。高崎市は、中核市に移行する今年4月1日にあわせて、高崎市自治基本条例の施行をめざしている。素案の前文は次の通り。
高崎市自治基本条例(仮称)/素案
前文
私たちのまち高崎市は、古くから関東と信越を結ぶ交通の要衝として、また商都として栄え、今日でも様々な産業や経済活動が盛んなまちです。さらに、水と緑豊かな自然に囲まれ、たくさんの歴史的な遺産があり、芸術や文化に対する市民の関心の高いまちです。高崎市は、いつの時代も市民がまちづくりの中心的な役割を担い、新しい取組を積極的に行い、創造力豊かな新しいまちづくりに取り組んできました。
しかし、昨今、高度情報化社会の進展や少子高齢化.人口減少社会の到来など、高崎市を取り巻く社会環境は、目まぐるしく変化し、それに伴って人々の価値観やニーズが多様化し、コミュニティのかたちも変化してきています。また、高崎市は、市町村合併により、個性豊かな地域を持つこととなりました。それぞれの地域には、それぞれに歴史があり、文化があり、積み重ねられてきたまちづくりの実績があります。
このような社会の変化に対応していくとともに、合併前の地域の特色を生かした一体性のあるまちづくりを進め、私たちと私たちの子孫のために安心.安全で住みやすく、魅力あるまちを築いていくためには、先人たちの創造性に富んだ市民精神を受け継ぎ発展させ、これまで以上に、私たち一人ひとりが自ら考え、責任を持って、行動し、高崎らしい高崎ならではのまちづくりを自らの意思に基づいて決めていかなければなりません。そこで、市民自治に基づくまちづくりを実現するための最高規範として、この条例を定めます。
第1章 総則
■目的
この条例は、市民自治及びその基本原則について定めるとともに、市民の権利及び責務並びに市の役割及び責務を定め、もって市民自治に基づくまちづくりを実現することを目的とする。
■定義
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
- 市民 市内に住所を有する者(以下「住民」という。)その他の市内に居住する者、市内に通勤し、又は通学する者及び市内で活動する者(法人その他の団体を含む。)をいう。
- 市長等 市長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、農業委員会、公平委員会、固定資産評価審査委員会及び上下水道事業管理者をいう。
- 市 市議会(以下「議会」という。)及び市長等をいう。
- まちづくり 高崎市を安心.安全で住みやすく、魅力あるまちにするために、市民が行う活動及び市の実施する施策をいう。
- 協働 市民及び市が、それぞれの立場を尊重し、協力し、共に活動することをいう。
■市民自治
市民は、自ら考え、責任を持って、主役としてまちづくりを行うものとし、市は、主役である市民の信託に基づき、まちづくりその他の市政運営を行うものとする。
■市民自治の基本原則
前条に規定する市民自治を推進するため、次に掲げる事項を市民自治についての基本原則とする。
- 市民が、まちづくりに様々な意思を反映させるため、まちづくりについて、積極的に参加し、及び協働を行うこと。
- 市民が、まちづくりにおいて、公平かつ平等に扱われること。
- 市が、市民の意思がまちづくりに反映できるよう、まちづくりへの市民の参加及びまちづくりにおける協働を積極的に進めること。
- 市が、まちづくりその他の市政運営について、市民に情報を積極的に提供するとともに、分かりやすく説明すること。
第2章 まちづくり
■まちづくりの基本方針及び指針
1 市民及び市は、次に掲げる基本方針に基づき、市民参加及び協働によるまちづくりを実践し、高崎市の一体的な発展を実現するとともに、後世に続く安心.安全で住みやすく、魅力あるまちを実現するものとする。
- 人と人とのつながり並びに地域における助け合い及び支え合いを大切にすること。
- それぞれの役割を十分に果たすこと。
- 多様な立場及び考えを持つ市民がいること、並びに地域ごとに特性があることを理解すること。
2 市民及び市が実践するまちづくりの基本的な指針は、次のとおりとする。
- 安心.安全のためのまちづくり
[ア] 市民は、自己の生命及び財産を災害及び犯罪から守るため、地域の連携を深め、自己の安全を自ら守る意識を高めるものとする。
[イ] 市は、市民の生命及び財産を災害及び犯罪から守るため、防災.防犯.救急体制の強化並びに市民の安全確保のための施設及び設備の充実を図るとともに、速やかに情報提供を行うものとする。
[ウ] 市民及び市は、連携し、及び協力して、災害、事故、事件等の緊急時に備え、総合的かつ機能的な活動が行えるよう危機管理体制を整備するものとする。 - 福祉の充実のためのまちづくり
[ア] 市は、市民が心身ともに健康で生きがいを持った生活を送るため、子育てしやすいまち、高齢者が安心して暮らせるまち及び障害者が自立できるまちの構築を推進し、各種制度の充実を図るものとする。
[イ] 市民及び市は、地域で連携し、支え合う仕組みの充実を図るものとする。 - 環境を大切にするまちづくり
[ア] 市民及び市は、環境への理解を深め、良好な環境の保全及び創造に努めるものとする。
[イ] 市民及び市は、高崎市の自然の素晴らしさと大切さを十分に理解し、豊かな自然環境の維持に努めるものとする。 - 産業.観光を盛んにするまちづくり
[ア] 市民は、高崎市の産業や観光についての理解を深めその周知に努めるものとする。
[イ] 市は、地域の特性を生かし、産業の発展及び観光の振興を図るものとする。 - 教育.生涯学習を充実させるまちづくり
[ア] 市民は、将来の高崎市を担う子どもたちを健全に育てるため、教育に深い関心とかかわりを持つものとする。
[イ] 市民及び市は、子どもたちの生きる力をはぐくむとともに、多様な個性を認め育て、家庭.地域.学校が連携した教育の実現に取り組み、地域の教育力を高めることに努めるものとする。
[ウ] 市は、子どもたちが安全に学べる学校の施設設備の充実を図るとともに、情報発信、学校行事への住民の参加等により、学校がより身近に感じられる開かれた学校の実現に取り組むものとする。
[エ] 市は、市民が生涯学ぶことができる環境及びスポーツを楽しむことができる環境の整備を推進するものとする。 - 文化を守り育てるまちづくり
市民及び市は、市民の心をはぐくんできた高崎市の音楽、文学及び歴史的遺産等の豊かな文化を深く理解し、守り広めることとし、さらに新たな文化の創造に努めるものとする。 - 多文化共生のまちづくり
市民及び市は、国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的な違いを認め合い、共に暮らしていけるまちの構築の推進に努めるものとする。
第3章 市民の権利と責務
■市民の権利
- 市民は、まちづくりに参加することができる。
- 市民は、協働をしてまちづくりをすることができる。
- 市民は、市からまちづくりに必要な情報の提供を受け、及び取得することができる。
- 市民は、まちづくりへの参加の手法及び制度を提案することができる。
■市民の責務
- 市民は、まちづくりに関心を持つよう努めるものとする。
- 市民は、まちづくりへの参加に当たっては、公共性を重視し、自らの発言と行動に責任を持つものとする。
第4章 議会の役割と責務
■議会及び議員の役割と責務
- 議会は、議事機関としての責任を自覚し、将来への展望をもって活動し、広く市民から意見を求めるとともに、市民に意思決定の内容及びその過程を説明するよう努めるものとする。
- 議会は、市政が、市民の意思に基づき、適正に運営されているか監視するものとする。
- 議員は、積極的に調査研究を行い、政策立案能力を高め、誠実に議員活動を行うものとする。
■議会運営の基本方針
- 議会は、市民に対する説明責任を果たすため、積極的に情報公開を図り、開かれた議会運営を行うよう努めるものとする。
- 議会は、市民が議会活動に関心を持つことのできる環境づくりに努め、議会の活性化を図るものとする。
第5章 市長等の役割と責務
■市長の役割と責務
- 市長は、高崎市の代表者として、誠実に行政運営に当たるものとする。
- 市長は、市民自治に基づくまちづくりを行うものとする。
- 市長は、職員の能力向上に努め、その能力を発揮させるものとする。
■市長等の役割と責務
- 市長等は、その権限と責任において、高崎市のために、事務を誠実に執行するも のとする。
- 市長等は、市民の意思及び地域の実情の把握に努め、相互に連携を図り、質の高 い総合的な行政サービスの提供に努めるものとする。
- 市長等は、この条例に規定された市民の権利を保障するため、適切な組織運営及 び制度運用に努めるものとする。
■職員の役割と責務
- 職員は、市民自治に基づくまちづくりのため、質の高い行政サービスの提供に努めるとともに、法令及びこの条例を遵守し、誠実に職務を遂行するものとする。
- 職員は、市民に誠意を持って接するとともに、市民の視点に立って職務を遂行するものとする。
- 職員は、職務の遂行に必要な知識の習得及び技能の向上のため、自己研さんに努めるものとする。
第6章 市民参加と協働
■市政への参加
- 市は、市が実施する情報収集並びに政策の立案、実施及び評価の各過程に市民の参加が図られるよう、市政への参加の機会を積極的に設けるよう努めるものとする。
- 市民は、前項の機会を積極的に活用するものとする。
- 市長等は、附属機関等の委員を選任するに当たっては、委員の公募について検討し、その実施に努めるものとする。
■地域活動への参加
- 市民は、自らが地域の自治の担い手であることを自覚し、地域のつながりをもとにしたコミュニティを守り育てるよう努めるものとする。
- 市民は、互いに連携を図りながら、地域の課題の解決に努めるものとする。
- 市長等は、地域における公益的な団体活動を尊重し、必要に応じて適正な支援に努めるものとする。
■協働
- 市民及び市は、協働の機会を積極的に設けるものとする。
- 市民及び市は、協働のあり方について検証し、及び研究するものとする。
- 市は、協働を進めるための体制整備及び環境整備に努めるものとする。
■情報の共有
- 市民及び市は、市政への参加、地域活動への参加及び協働によるまちづくりを推進するため、情報の共有に努めるものとする。
- 市は、次に定めるところにより、情報の共有を推進するものとする。
(1)市民に対して市政に関する情報を分かりやすく提供すること。
(2)市民からの説明の求めに対して速やかに応答すること。 - 市民及び市は、情報の共有に当たっては、別に条例の定めるところにより、適切に個人情報を保護し、取り扱うものとする。
■人材の発掘と育成
市民及び市は、市政への参加、地域活動への参加及び協働によるまちづくりを推進するため、人材の発掘及び育成に努めるものとする。
■市民参加と協働の推進
市は、別に条例等を定め、市政への参加、地域活動への参加及び協働を推進するものとする。
第7章 住民投票
■ 住民投票
- 市長は、別に条例で定めるところにより、市政に関する特に重要な事項について、住民若しくは議会から請求があったとき、又は自ら必要と判断したときは、住民の意思を確認するために住民投票を実施することができる。
- 市長は、住民投票を行う場合は、対象となる事項の必要性について、市民への周知に努めるものとする。
- 市は、住民投票の結果を十分に尊重するものとする。
第8章 行政運営
■行政運営の基本原則
市長等は、次に掲げる事項を基本として、行政運営を行うものとする。
- この条例にのっとり、市民が主役のまちづくりを推進すること。
- 行政運営への市民の参加及び協働によるまちづくりの推進に努めること。
- 地域の特色を生かし、高崎市の一体的かつ持続的な発展に努めること。
- 「高崎市民憲章」 をはじめとする各種の憲章及び宣言を尊重し、その目的.理念を踏まえた行政運営に努めること。
■総合計画
- 市長は、総合的かつ計画的な行政運営を図るため、まちづくりの指針となる基本構想並びにその実現のための基本計画及び実施計画をまとめた計画(以下「総合計画」という。)を策定するものとする。
- 市長は、総合計画の策定に当たっては、市民の参加により、市民の意見を適切に反映させるとともに、策定後は、総合計画の内容を広く市民に説明し周知を図るものとする。
- 市長等は、総合計画に基づいて効果的かつ効率的に行政運営を実施するとともに、その進行管理を適切に行うものとする。
- 市長は、社会の変化に対応できるよう必要に応じて総合計画を見直すことができる。
■行政評価
- 市長等は、効果的かつ効率的な行政運営を行うとともに、その透明性を高め説明責任を果たすため、適切な行政評価を実施するものとする。
- 市長等は、市民、有識者等の参加による評価の仕組みを整備するよう努めるものとする。
- 市長等は、行政評価の結果を分かりやすく公表するとともに、評価結果を踏まえ、行政運営の改善に努めるものとする。
■財政運営
- 市長等は、財政状況を総合的に把握し、自立的な財政運営を行うことにより、財政の健全性を確保するよう努めるものとする。
- 市長等は、適正かつ効率的な予算の執行に努めるものとする。
- 市長等は、財政に関する情報を市民に分かりやすく公表するものとする。
- 市長等は、財産の保有状況を明らかにし、財産の適正な管理及び効率的な運用を図るものとする。
■適正な行政手続
市長等は、市民の権利利益の保護に資するため、別に条例の定めるところにより、処分、行政指導及び届出に関する手続を明らかにし、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るものとする。
■監査
- 監査委員は、市の適正で効率的な行政運営を確保するため、監査を実施し、事務事業の適法性、妥当性、経済性等の評価を行うものとする。
- 市は、前項の監査のほか、外部機関その他第三者による監査を行うものとする。
- 市は、前2項の監査の結果を踏まえ、必要な措置を講じるものとする。
- 監査委員は、第1項及び第2項の監査の結果並びに前項の規定により市が講じた措置について、分かりやすく公表するものとする。
■組織体制の整備
市長等は、社会情勢の変化及び多様化する行政運営の課題に的確に対応するため、効率的かつ機能的な組織体制を整備するものとする。
■人事管理
- 市長は、行政運営に要する事務量及び外部委託等を含む事務の執行方法、財政状況、職員の執行能力並びに事務改善等を考慮し分析の上、適正な職員定数を定めるものとする。
- 市長等は、行政運営の効率的かつ適正な執行を図るため、職員が適切に職務を遂行することができるよう、公正かつ適正な人事管理に努めるものとする。
- 市長等は、職員の能力開発や人材育成に努めるものとする。
■意見要望の取扱い
市長等は、市民からの行政運営に関する意見、提案、要望等に対し、迅速かつ誠実に対応するとともに、行政運営に反映するよう努めるものとする。
■公益通報
市長等は、公益に反する事態を是正するため、職員等市政の執行に携わる者が正当な通報をしたことにより不利益取扱いを受けないように措置を講じ、透明で適法かつ公正な行政運営を確保するものとする。
第9章 連携と交流
■国、群馬県及び他の自治体との連携と交流
- 市は、国、群馬県及び他の自治体とそれぞれの役割のもとに連携するものとする。
- 市は、他の自治体と交流を行い、広域的な課題や共通する課題の解決を図るために必要な情報を交換し、連携して、地域全体の発展に努めるものとする。
■国際交流
- 市は、互いの文化等の向上と友好.親善を深めるため、「姉妹.友好都市」をはじめ海外の自治体、関係機関、団体等と国際交流を推進するものとする。
- 市民は、公益的な国際交流活動に関心を持つよう努めるものとし、市は、市民が行う公益的な国際交流活動について必要な支援を行うものとする。
第10章 条例の位置付け
■ 条例の位置付け
市は、他の条例、規則等の制定改廃、解釈及び運用、総合計画等の策定及び運用その他市政運営に当たっては、この条例を最大限尊重し、及び遵守するものとする。
第11章 条例の運用と見直し
■条例の運用と見直し
- 市長は、必要に応じ、組織等を設け、この条例の運用状況について検証を行うものとする。
- 市長は、検証の結果を市民に公表するとともに、これを尊重し、広く市民の意見を聴いた上で、この条例の改正その他の必要な措置を講じるものとする。
条例の施行日(予定) 平成23年4月1日