3、映画を語り継ぐ~フィルムで観る映画と活弁の魅力~

(2012年10月日)

3、映画を語り継ぐ~フィルムで観る映画と活弁の魅力~写真を拡大「生演奏で楽しむ映画の醍醐味『かつべん』」10月13日(土)/高崎市文化会館

第1回第2回の続き】

 今回はフィルムで見る映画と活弁の魅力について、語ってみたいと思います。第2回で映画の始まりに触れましたが、リュミエール兄弟が発明したシネマトグラフによって、一度にたくさんの人が観賞できるようになりました。この、一緒に、というのが映画の根本にあるのだと思います。シネマトグラフの最初の興行はパリのキャピシーヌ通りのカフェ。最初の映画は『工場の出口』で工場の門が開きそこから仕事を終えた人々が出てくるというもの。

 他に数本の短編が同時上映され、その中に『ラシオタ駅への列車の到着』がありました。列車がスクリーンの奥から観ている観客の方へ向かって突き進んでくる様に、腰を浮かせて逃げようとする人たちがいたという話もあります。視覚的には今で言う3D映画を見ているような感覚があったのでしょう。その感覚を観客が共有する事で、驚きと興奮はさらに大きく生きたものになったのだろうと容易に想像がつきます。

 シネマトグラフはそもそもダゲレオタイプと呼ばれる写真技術が根底にあります。さらにその写真をつなげて動画として目に映るものにしたのがエジソンの発明・キネトスコープです。キネトスコープとはフィルムをつないで輪にして専用のプレーヤーで回転させると、一つ一つだったコマが動いて見えるというものでした。これは覗き込むので一人でしか見られなかったわけで、それをスクリーンに投影させたのがリュミエール兄弟のシネマトグラフです。そこから映画の歴史が始まります。

3、映画を語り継ぐ~フィルムで観る映画と活弁の魅力~

 サイレント映画時代を経て、技術の発達でトーキーといってフィルムに音が入るようになり、モノクロだった映像はカラーになりました。サイレント映画時代にはそれを楽しむ方法が考案され、国によって工夫がなされ、日本では活弁が発展したわけです。技術革新はその都度、映画の装いや観賞スタイルを少しずつ変えては来ましたが、今現在のフィルム上映というのは、音声が入ったり色がついたりという変遷は経ていますが、原理的には1895年の映画の誕生から現在まで変わっていない事になります。こう考えてみるとすごいですね。フィルムで撮影し、機械を通して投影し、沢山の人と一つのものを見つめ、場と感覚を共有する。それが映画の本質なんだと思います。

3、映画を語り継ぐ~フィルムで観る映画と活弁の魅力~

 現在では更なる技術革新を経て、物質的な質量があったフィルムは、信号化されたデジタルデータへと移り変わっています。数年後にはフィルムという物質がなくなるとも言われています。そんな今、目に見える映像の向こう側で物質的なフィルムが映写機を通って映画を投影している事に何の意味があるのかと言えばもうそれはロマンしかないのではないかと思ったりする訳です。

 1895年に誕生した<映画>の感動と興奮は、その本質でもって現代にも同様の感動と興奮を与えてくれます。そして、日本ではサイレント映画を楽しむために活動弁士が生まれ定着したわけですが、それは浄瑠璃や能、歌舞伎といった語りを用いた伝統芸能を育んできた日本ならではの趣向を凝らした楽しみ方の工夫からであり、娯楽を意識した日本人の粋な楽しみ方でもあったわけです。そうした歴史と心根は、受け継ぐべき大切な味わい方だと思っています。

 日本映画史のロマンを今一度。そして何度でも。今回の活弁上映会を通して次世代へつなげて行けたらと思っています。

(高崎映画祭スタッフ 志尾睦子)

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