高崎の「ものづくり」ここにあり
(2009年9月)
たかさき産業祭ものとぴあ
楽しさそのままにビジネスチャンス拡大を
「たかさき産業祭ものとぴあ」が「高崎発地球にやさしいものづくり」をテーマに、11月7日(土)、8日(日)に高崎問屋街センターで開催される。「たかさき産業祭ものとぴあ」は3年に一度、高崎地域の先進的な技術や製品を紹介し、ものづくりのプロから子どもたちまで大勢の来場者を集めている。
今年の開催について、西田隆良実行委員長と会場部会の皆さんに産業祭のあり方や準備の状況をお聴きした。
●高崎の産業力を発信・伝統ある産業祭
「たかさき産業祭ものとぴあ」の誕生は今からちょうど60年前。高崎青年経営者協議会(青経)が昭和34年8月21日から3日間、高崎市立第二中学校の校庭で第一回「高崎工業製品展示会」を開催した。校庭に長屋風の展示ブースを作り、高崎市内外の企業や東京からも出展者があり大盛況だった。この工業展は以降も継続され、現在の「産業祭ものとぴあ」として受け継がれ3年に一度の開催となっている。
西田実行委員長((株)ヌカベ会長)は「工業展、産業祭ものとぴあは、高崎の産業発展のため、時代のニーズを反映してきた3年に一度の大事業であり、高崎の産業はここにありと内外に発信していきたい」と高崎産業界の存在感を示したいと考えている。これまで「産業祭ものとぴあ」は、高崎の産業技術や製品の見本市として、市民にも地元の産業を知ってほしいと集客してきた。若者のものづくり離れが進んでいることから、前回は、子ども達にものづくりに親しんでもらえるような企画にも力を入れた。今回はイベントの楽しさはそのままに、出展者のビジネスチャンスにつながるよう準備が進められている。
●環境技術をコンセプトに地場産業にスポット
今回のプロジェクトの特徴は、LLC(合同会社)とLLP(有限責任事業組合)の二つの組織を組み合わせているところにある。出資会社となるLLCには、企業や個人がお金を出し合う。それをLLPに出資する。LLPは事業の主体となって屋台通りを運営していく。
これによって、お金を廻す仕組みと事業を廻す仕組みが分離され、出資者と運営者それぞれの役割が明確になる。
また、本プロジェクトでは、地元金融機関に対して資金面のサポートを要請しており、手法等も含めて検討してもらっているところである。いくつかの形態が考えられ、もし、実現すれば地域金融とまちづくりの新たな関係が構築されると期待が集まる。
LLPでは、屋台通りの店舗デザインの決定や出店者の募集からセレクト、PR活動やイベントの企画運営を行うことになる。現在、設計を担当する若手建築家集団のメジロスタジオと屋台通りのデザインを進めている。また、9月7日には出店希望者を集めて説明会が開催された。当日はおよそ120人が参加。この事業への注目の高さがうかがえた。今後は、PR活動やイベントを開催して話題づくりに力を入れていくという。
●上州・高崎にこだわった屋台事業/県内産食材の調達率50%へ
西田委員長は「おおげさに言えば、高崎地域の産業を世界に発信していく気持ちで取り組んでいる。地元の人に高崎の産業の今を知ってもらいながら、県内、全国からも広く来場してもらえるようPRしていきたい。来場者1万人を期待している」と言う。市内中小企業は、世界不況によって痛手を受け、まだ傷口は癒えていない。疲弊した地域産業を活性化させるためには、官民一体となり、全力で取り組む必要がある。今回は、産学官によるものづくりを軸に、話題性のある事業を計画している。高崎のものづくりを市民へ浸透させながら、出展各社のビジネスに少しでも結びつくよう、本来の目的を強く打ち出していく。
また、コンセプトに『環境に配慮した技術』を置き、省エネやクリーンエネルギーの導入、エコ技術など現在のトレンドにも注目していく。「こんな時だからがんばろうと、高崎のものづくり企業が集まってきている」と言う。
高崎の交通拠点性を生かし、観光や飲食を含めた商工業の発展、交流人口の拡大が大きく期待されている。高崎スマートIC周辺に新たな物流拠点も計画され、西田委員長は「高崎の産業の核を作るチャンス」と捉えている。また一方で、高崎には清涼な水、豊かな森に囲まれた環境があり、バランスがとれた発展が可能だ。
「高崎の地場産業って何?と聞かれるとなかなか答えが返せない。今こそ官民一体となって、大きなプロジェクトを動かす時だ」。ものとぴあは、産業界の将来に向けた前哨戦となるかもしれない。そのために、西田委員長は「工業系の学生や、ものづくりを学ぶ若者たちにぜひ参加してほしい」と次代を担う若い力にも期待を寄せている。
●産業祭ものとぴあは大きなチャンス・ビジネスマッチングの場に
実行委員会では、11月の開催に向けて、約90人の運営スタッフが部会ごとに準備を進めている。9月中には、具体的な内容が煮詰まる予定だ。
会場部会は、高崎青年経営者協議会の荻野修理事長((株)荻野製作所)、善養寺茂部会長((有)善養寺興業)、石垣直也副部会長((株)石垣商店)を中心に準備が行われている。三人は同じ歳でもあり、普段から意気を合わせて青経を引っ張っている。
今回の「産業祭ものとぴあ」は、もう一度産業祭の原点に帰り、地域の活性化につながるよう実効性のある事業を目指している。ビジネス集客の柱となる主力事業には、ものづくりの専門家によるガッチリとした企画を用意し、話題性も十分だ。
荻野理事長は「産業祭ものとぴあは土日に開催されるので、ファミリーイベントとして高崎の産業を市民に知ってもらい、楽しんでもらうことは大切だ。一方、不況で苦しむ中小企業は、今日、明日の仕事を取りたいと必死になっている。潜在客やビジネスパートナーに結びつく場にしていきたい」。善養寺部会長は「お互いが刺激しあい、出展企業のビジネスチャンスにつなげていきたい」。石垣副委員長も「集客の中身を考えていきたい。出展企業から仕事上のメリットがあるよう努力していく」と話す。
楽しいイベントづくりに加え、実質的な経済効果を生み出していくのが、今回の挑戦だ。青経では、実施内容が決まり次第、来場者の呼び込みに動いていく。招待状を持って県内や近県の工業団地に飛び込み営業をかける。「高崎の産業は全国に展開している。とにかく足で稼いでいきたい」と燃えている。こうした飛び込みがビジネスに結びつくチャンスもある。「産業祭ものとぴあ」を機会に各地の工業地域との交流も視野に入れている。善養寺部会長、石垣副部会長は「多くの市民が楽しめるファミリーイベントとしての面と、ビジネスに結びつく集客をなんとしても両立させたい」と余念がない。荻野理事長は「新潟県の三条市、東京の大田区のように産業分野で高崎ブランドを確立していきたい。高崎地域の総合力があれば、勝負できるはずだ」と、今回の「産業祭ものとぴあ」は大きな注目を集めそうだ。
(文責/菅田明則・新井重雄)
高崎商工会議所『商工たかさき』2009年9月号