「パワーセンター うおかつ」の出店攻勢/まさに快進撃!
(2009年5月)
100年に一度と言われる世界同時不況。業種を問わず、まっ暗闇にわずかな光を求めて誰もが奔走する昨今、この不況風をものともせず、むしろアクセル全快で突き進む注目企業がある、「(株)カルチャー」がそれだ。黄色の店舗にバーコードが付された「パワーセンターうおかつ」といった方がお馴染みか。
榛名店、吉井店に続き、昨年5月の倉賀野店と4月16日にオープンしたアカマル店は、いずれも同業の食品スーパーが営業不振で撤退した跡に出店し見事に繁盛店へと再生させた。
単に安いだけでは通用しない時代、なぜ「うおかつ」がここまでお客に支持されているのか、その裏側に迫った。
●行商時代の10年が原点
うおかつの前身は父が興した、いわゆる町の魚屋。旧榛名町の住宅街で父は店売り、中嶋社長は行商を行なった。売れそうな食材を仕入れ客先に出向く。「最初は、農家や酪農家が忙しい時間に行って怒鳴られたり、欲しい物が無いと商品が売れない日もありました」。
お客は今日どんな物が食べたいのか、何時ごろだったら買物をしてくれるのか、試行錯誤と失敗の毎日だった。「お客様はいつ・何を望んでいるのか」、10年間お客から直接学んだ叱咤激励が中嶋社長の商売の原点となった。
その後、町の魚屋は昭和57年にスーパーという形態に進化し下里見町に、昭和61年には上里見町にも出店した。そして平成8年、現在の「パワーセンターうおかつ」1号店が中里見町に誕生した。
平成17年に吉井店、平成20年には倉賀野店、先月16日、4店目となるアカマル店をオープンさせた。
この相次ぐ出店について中嶋社長は、「世の中の環境変化が激しい中、いかにその変化をキャッチして経営するかが生き残りのポイント」。何が起こるか分からない今、大企業や大資本が強いとは限らない、個人商店が弱いとも限らない。重要なのは時代の変化に対応する経営なのだと言い切る。
「我々は常に考え、働くという“考働”を行なっている」。毎日の小さな改善の積み重ねが重要なのだ。
●型破りな出店
うおかつの出店地は、大手スーパーの隣接地であったり、最近は同業者が撤退した店舗への〝居抜き〟出店。常識では頭をかしげる所だが、「我々は大手スーパーとは違うスタイルの商売をしている、あえてこのような出店地を選んだ」。
特に居抜き出店は、これまでの出店コストに比べ1/10程度におさえられ、その分商品を安く提供できるというメリットも生まれた。
平均的な4人家族の場合、月の食費と生活必需品で7万円、都市部でも8万円程度とされている。品数だと月300~400品が平均。単純に計算すると単価は200円~250円となる。スーパーで1回の平均的な購入品数は多くて10品程度だと言われるが、うおかつでは平均18、19品が購入されている。
「主婦は価格に敏感です。これ位買うと、いくら位という金銭感覚がインプットされている」。大掴みだが、倍近い品数を購入しているにも係わらず、価格に敏感な主婦を納得させ支持されている現実が伺える。
●なぜ支持されるのか
うおかつが支持されているのはいくつかの要因が考えられる。「激安」・「品数」・「天の声」・「ポイント制」など、様々な仕組みが掛け合わさり支持されている。差別化だけでなく、そこにお金を払ってもらえる仕組みが重要なのだ。
食に敏感なこの時代、単に「激安」だけでは支持されない。安全・安心・美味しいは当たり前のこと。「お客様が欲しい物は天候や季節、生活環境によって毎日変化する。農繁期には郡部の店では塩辛い商品が良く売れますよ」。今お客が欲しい商品をいかに揃えられるかが問題なのだ。
うおかつでは特定の仕入先でなく、安くて良い商品があると聞けば県内外を問わず仕入れに出かけるが、生鮮品はほぼ100%、その他の部門でも約50%はそれぞれの売り場担当者が行なっている。「今日は何を望んでいるのか。お客様を一番知っているはずの売り場担当者が仕入れを行なうのはごく自然の成り行き」だと説明する。
うおかつの「品数」は米だけでも100種類はある。普通、品揃えが増えれば仕入れや在庫管理が非効率で煩雑化し経費が増えるのだが、こうした理由は全て売り手側の都合だという。「チェーン店では、ほとんどが本部から供給された商品を陳列するが、うおかつではお客様が欲しいという物をなるべくたくさん並べている」。
「天の声」と言う独自の仕組みもあり、これは、お客の何気ない会話や接客の際に寄せられた要望や意見・苦情など、ありとあらゆる情報をうおかつ全体で共有するシステムだ。わずかな顧客のニーズや変化をキャッチしスピーディーに店や経営に反映させる。「効率は自分の都合、お客様への効果が最優先ですね」。うおかつの効果とは、お客様に喜ばれることを指している。
●雑然とした陳列
一歩店内に足を踏み入れると、一見雑然と商品が陳列されている。通路は迷路状で歩きにくく、陳列棚は高さもばらばらで凸凹。棚など、じゅう器のほとんどが「うおかつ工房」で手作りされている。
「通路をすいすい歩けたら、買おうと決めた商品にしか目が向かないでしょ」。そう言われて店内を回ると、なるほど!、目的以外の物が目に入り、何となく手にすることになる。一体、どこに何があるのか分からないと思いきや、実は戦略的な陳列なのだ。
●中期目標10店舗、200億円
本当の意味でうおかつの快進撃を支えるのは、やはり人である。従業員が〝うおかつイズム〟を理解し、お客様最優先を軸足にした仕事への姿勢こそがうおかつを支えている。帰宅した従業員が、売り場が気になって戻る事もしばしばだとか。
その従業員の先頭に立つのが3人の息子さん。既に会社の中枢に成長した息子たちと共に、「中期目標として10店舗200億円の目標を置いております」。
自らを草野球チームに例え、「郡部で優勝し、ようやく県大会に出場できるようになった、子ども達の前でグチを言わず、魅力ある背中を見せられるかどうかが今後を左右する」。
今、燃えているそうだ。
〈会社概要〉
株式会社カルチャー
社長:中嶋 雄三氏
高崎市中里見町373
TEL027-374-2112
従業員400人
資本金5,000万円
高崎商工会議所 『商工たかさき』2009年5月号