中心市街地活性化基本計画による“街の再生”なるか?

(2009年2月)

中心市街地活性化基本計画による“街の再生”なるか?

街が“賑わう”ということ
中心市街地活性化基本計画による“街の再生”なるか?

 12月3日市総合福祉センターで開催された高崎経済大「市民公開シンポジウム」のパネラーとして参加した当所・原浩一郎会頭は、「高崎は他の都市から見ると、百貨店や高感度ショップが充実していて、高速交通網も含めて交通の利便性は稀に見る高さ。運転免許証を持たない18歳未満の学生も鉄道を利用して高崎駅周辺に集まってくる。先日も28名の当所議員で金沢市へ視察交流に行ったが、あの金沢市の皆さんが高崎に学びたいと交流拠点都市として注目しているほどです。11月12日の新聞では〝中心市街地活性化基本計画〟の認可が下ったと報道されました。今後5年5ヶ月の期間に約290億円が街を賑やかにするために投入される予定です」と解説した。
 今月の特集は、この「活性化基本計画」とはを見る。


●北関東では初めて 中心市街地活性化基本計画が認定

 多くの地方都市で中心市街地の衰退・空洞化が進んでいる。その原因は、少子高齢化の急進、公共公益施設(病院・学校・福祉施設等)の分散、住宅や大型店の郊外立地の増加、地域間競争の激化などである。“まちの顔”ともいえる中心市街地の空洞化は、商業だけの問題に留まらず、企業や伝統・文化、地域コミュニティにも大きな影響を与え、地域社会全体の衰退を招いている。
 こうした中、2007年には中心市街地の再構築など“コンパクトで賑わいのあるまちづくり”を趣旨とする「改正まちづくり三法」が成立し、各地で様々な取り組みが進められている。
 高崎市では昨年、「交流と創造~輝く高崎」を将来像に掲げた『第五次総合計画』がスタート。その中に位置づけられた商業施策としての『中心市街地活性化基本計画』が、内閣総理大臣から認定を受けた。北関東では初めてである。これにより、国からも幅広い支援が受けられることとなり、“商都高崎の再生”を目指し、今後、中心市街地活性化に向け、大きな期待が寄せられている。


●コンパクトシティづくり まちづくり三法と改正の背景

 中心市街地は多様な都市機能が集積し、長い歴史の中で文化、伝統を育んできた“まちの顔”だ。その空洞化はまさにまちのアイデンティティ喪失の危機と言える。この深刻さを増す中心市街地の空洞化に歯止めをかけ、都市の再構築を進めるための枠組みとして大きな期待を集めたいわゆる「まちづくり三法」が成立したのは1998年である。
 これらが総合的・一体的に運用されることにより、中心市街地をはじめ都市の活性化が図られるものと期待されていた。しかし、全国的に中心市街地の衰退傾向が顕著になり、様々な問題が顕在化してきたため、2004年7月、日本商工会議所は中小企業4団体の連名で政府等関係機関に対し『まちづくりに関する要望』を提出した。
 「まちづくり三法」が制定され6年が経過したにもかかわらず当初期待された効果は得られず、全国の中心市街地は活性化するどころか三法制定時より更に寂れ、中心市街地の衰退は一層深刻化しているとした。原因として、郊外における大規模な農地転用や無秩序な開発などにより、都市機能の拡散が加速されたことによる影響が大で、現制度の総合的・抜本的な見直しを要望した。
 人口減少、少子高齢化、地域コミュニティの崩壊など危機的状況の中で、中心市街地がこれ以上衰退し、とりかえしのつかない事態に至ることを真剣に憂慮する動きが全国的に出てきた。国は従来の都市政策を転換し、住宅・事業所・病院・商店など様々な機能を都市の中心部に集中させ、活力を保持する「コンパクトシティ」づくりに取り組む方針を打ち出した。
 これにより2007年に三法は改正されたが、改正中心市街地活性化法では都市機能集積や商業活性化などで自治体が数値目標を設けた『中心市街地活性化基本計画』を策定し、国の認定を受けると財政支援等を受けることができるとした。基本計画認定には原則、自治体や商工会議所などで組織する「中心市街地活性化協議会」の設置が必要となる。高崎の場合は、その会長には当所原浩一郎会頭が就任した。
 衰退する中心市街地の活性化を目指した「改正まちづくり三法」が完全施行されて1年余、典型的な車社会の北関東でも中心部の賑わいを取り戻そうと、この「中心市街地活化協議会」が相次ぎ誕生し、各地で改正法に基づく活性化基本計画の策定作業が進んでいる。現在、全国で129の協議会が誕生しており、67市町村の基本計画が認定を受けている。一方、改正都市計画法は、床面積10、000㎡超の大型集客施設の郊外出店を規制するもので、施行前に駆け込み案件が相次いだこともあり、規制後の本格的な影響はまだ見えていない。


●高崎市の活性化基本計画では数値目標と期間設定がある

 同基本計画では、高崎駅周辺と、予定のJT高崎支店跡地周辺を東西の核とし、これらのコアゾーンをつなぐ「商業軸」「文化軸」を設定し、それぞれの都市軸機能を強化し、市街地175haに人・物・情報の流れを促進し、歩いて回遊できる中心市街地の形成を目指す。
 幸いにして、高崎市の中心市街地は集客が期待できる仕掛けがそろっていた。「商都高崎」の再生を目指し、高崎駅周辺の商業施設やペデストリアンデッキの整備、新図書館・医療保健センター合築、スズラン高崎店の増床など計60事業で構成されている。また、古くから音楽とともに歩んできた歴史から、「音楽のある街たかさき」を活かした取り組みも進められる。
 基本計画では数値目標がある。1.小売業年間商品販売額を現状の970億円から24%増の1、200億円に増やす、2.休日の市街地の歩行者・自転車通行量23%増、3.各種文化施設の利用者数6%増を掲げた。2008年11月から2014年3月までの5年5ヵ月で実施する。
 差別化が求められる都市間競争の時代では、高崎ならではの独自性と、戦略的なまちづくりが、新たな文化や産業の創造・発信を可能にする潜在力の高さに期待したい。しかし、世界的な金融危機に伴い、地域経済の減速が一段と深刻化する中、まちづくりには今まで以上にソフト・ハード両面での知恵と工夫が求められている。また、急速な景気後退で民間の投資意欲や消費マインドも冷え込んでおり、期待と不安が交錯する中、商業者だけでなく住民を含めた地域との連携が重要となる。


●商工会議所の姿勢は “まち育て”の役割を

 今回の法改正は、人口減少社会に対応するとともに、都市機能の集約化によって社会総コストを極力抑制し、高齢者にも環境にもやさしく、安心・安全で美しい「コンパクトなまちづくり」を推進する。中心市街地の活性化支援と、ゾーニング等の計画的な土地利用規制との合わせ技による、新たなまちづくりの“仕組みと道具”が整備された。
 しかし、この法改正だけで中心市街地が賑わいを取り戻せるものではなく、行政・事業所・住民・中心商店街関係者などが一体となって、地域ぐるみでまちづくりに取り組むことが何よりも重要である。これらを活用できるかどうかは、地域それぞれの選択と判断に委ねられている。
 商店街も大型店も消費者・住民にとっては共に必要なものである。何よりも大事なことは、両者が共存共栄し地域にとって大切な歴史・文化が守られ、高齢者や若者にとっても魅力あるまちづくりが、地域自らの手で進められることである。
 国は、大型小売店の郊外出店だけでなく病院や学校などの都市機能が分散したことが中心市街地の空洞化を招いたとの認識があり、支援策も「歩いて暮らせる街づくり」に軸足を置いている。しかし、まちなかの定住人口が増えても、周辺の商業機能が低下したままなら住民は郊外に買い物に行くだろう。個店の自助努力はもとより、商店街も自ら創意工夫し連携に基づく活気と魅力あるまちづくりが重要な課題である。
 高崎商工会議所では高崎市の取り組みと軌を一にして、『高崎市中心市街地活性化基本計画』に掲げる目標の実現を図るため、高崎市都市整備公社や、民間事業者、地域関係者、行政と協働して、新法に則った「高崎市中心市街地活性化協議会」を組織している。
 本協議会は、地域住民等の生活基盤の核となる中心市街地の活性化を総合的かつ一体的に推進するタウンマネジメント組織であり、「行政の〝まちづくり〟をソフト面から補完する〝まち育て〟の役割」を担う。
 今後、活性化基本計画の進捗状況及び事業効果について協議し必要に応じて説明を求め活性化事業の検証を行っていく。


■中心市街地活性化基本計画
【基本理念】
 高崎の活力と新しい文化を創造・発信する「賑わい・交流・文化都心」
【基本方針】
1、広域交通拠点の持つ高いポテンシャルを活かした経済活力の増進
2、楽しく歩いて回遊できるコンパクトな中心市街地の形成
3、「音楽文化」を活かした高崎らしい中心市街地活性化への取り組み
【数値目標】
1.高崎都市圏の地域活性化を牽引する、経済活力に満ちたまち~「商都・高崎」の再生
 小売業年間商品販売額
 970億円(H19推計値)→1、200億円(H25)
2.市民の出会いと交流の舞台となる、賑わいあふれるまち~広域交流拠点づくり
 歩行者・自転車通行量
 22、400人(H18)→27、500人(H25)
3.音楽を中心とした「高崎文化」を創造・発信するまち~文化が薫るまちづくり
 各種文化施設(音楽センター、シティギャラリー、市美術館、市タワー美術館)の利用者数663、800人(H19)→704、300人(H25)

来街目的聞取り調査 100人に聞きました!
街のどちらへ? スズランヘが42人

 1月27日火曜日(快晴)の平日午前11時から12時頃に、高崎市の中心市街地の“ヘソ”ともいうべき場所、市内連雀町サウンド・エコー前で街を歩いている方100人に「どちらへ行かれるのですか?」という質問をしてみた。
 結果は、100人中“スズランでの買物”が42人で圧倒的に40代以上の女性であった。以前言われていたことは、高崎病院等への通院が意外に多いとの事だったが、周辺の他の病院も含め11人。その他では、スズラン以外の買物16人、市役所7人、銀行3人だった。
「どちらから?」の質問に、遠距離では、東京都、埼玉県本庄市、深谷市、松井田町、水上町、桐生市、沼田市、榛名湖町がそれぞれ2人か1人だった。

(根岸良司)

高崎商工会議所 『商工たかさき』2009年2月号

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