高崎新風土記「私の心の風景」

74. ヨシキリを聞く橋

吉永哲郎

高崎新風土記「私の心の風景」

  毎年、五月十日から一週間はバードウィークです。普段、野鳥に関心がなくとも、鳥の姿や鳴き声が気になります。高崎は、観音山という里山が近くにありますので、野鳥に親しむ絶好の自然環境に恵まれた都市だと感じます。

 市の鳥は「うぐいす」、時々その澄んだ声を聞きに、高崎駅から烏川に架かる聖石橋を渡り、里山に向かいます。近年、橋が整備され、特に両側の歩道の幅が広くなりました。ゆったりとした気持で、橋上からの広がる風景を眺めながら、歩くことができ、自然と心が癒されます。

 さて、年々烏川岸の整備も進み、以前よりも自然の川岸風景は少なくなりましたが、それでも川の中島にある蘆や薄が、五月になりますと、新芽が出て冬の枯れ野原から一変します。

 この季節、橋下の草原から、さまざまな野鳥の声を耳にしますが、その中で際だって「ギョギョシ」とやかましいヨシキリの鳴き声が耳に入ります。江戸時代の俳人たちが好んで「行々子」と表現しましたが、葦を切り裂くような鳴き声から「葭切・蘆切・葦雀」とも書きます。私は浄瑠璃「丹波与作待夜の小室節」にでてくる「吉原雀」という呼び名が好きです。

 ヨシキリの囀りのやかましいことから、おしゃべりな女の子のことをいいますが、まさに喧噪の花街吉原はかくあったかと、心に描きつつ、しばし橋上から鳴き声を聞いています。鳥の鳴き声の表現には、「カアカア・チュンチュン」のような写生語と、「チョットコイ・焼酎一杯グイー・東京特許許可局」などの聞き取り語があります。さて、後者の「聞き取り語」から、何の鳥かお分かりですか。

(高崎商工会議所『商工たかさき』2010年5月号)

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