よくわかる福島原発事故と放射線/第1回
(2011年4月2日)
意味がわかれば心配も解決!
ラジオ高崎『AIR PLACE』
出演:
株式会社環境浄化研究所 代表取締役・工学博士
須郷高信
聞き手:
田野内明美
福島原発事故の被害を防ぐ方法はありますか?
田野内:この時間は、株式会社環境浄化研究所代表取締役、工学博士の須郷高信先生のお話を伺います。須郷先生、こんにちわ。よろしくお願いします。
須郷:こんにちわ。大変な地震でした。皆さん必死で頑張っています。原発事故の被災地には心からお見舞い申し上げます。
田野内:福島や郡山の方は不安な毎日を過ごして居られるようですが、何か良い方法は無いでしょうか?
須郷:今回の原発事故の特徴は放射性ヨウ素が大気中に飛散したことです。ヨウ素は気化し易い元素で風に乗って遠くまで拡散する特性があります。放射性ヨウ素は酸素と一緒に肺に入り甲状腺に蓄積します。福島県内の方は外出時にマスクをすることが良いと思います。
田野内:マスクをするだけで放射線ヨウ素を防ぐことができるのですか?
須郷:ヨウ素は気化し易いためマスクに付着しても直ぐに気化してしまいます。普通のマスクではこまめに交換することが必要です。
田野内:もっと安全な防護方法は無いのですか?
須郷:実は1999年に東海村でウランの臨界事故があり、茨城県内に放射性ヨウ素が拡散して大きな社会問題になりました。当時、放射性ヨウ素を防御するフィルターが無かったため、日本原子力研究所で合成化学の研究をしていた私にヨウ素フィルターの開発依頼がありました。その時に、大気中のヨウ素を効率的に吸着除去する高機能フィルターの開発に成功し、国際特許を取得いたしました。
田野内:須郷さんが開発したのですか?
須郷:はいそうですよ、フィルターメーカーと一緒に私が開発したものです。「イソジンガーグル」をご存知ですか?イソジンガーグルはドイツの製薬会社の商品名で正式化学名称は「ポビドンヨード」と言います。これはヨウ素を液体に固定化したものですが、乾燥するとヨウ素が気化してフィルターに加工することが不可能でした。私が世界で初めてヨウ素を長期間安定に固定化するフィルターの合成技術を確立し、特許を取得するとともに、インフルエンザ用のイソジンマスクの商品化に成功いたしました。
田野内:昨年は新型インフルエンザが大流行しイソジンマスクが大活躍でしたね。
須郷:はい、イソジンマスクはポビドンと言う成分をフィルターに化学結合した後、ヨウ素を固定化した物です。だから、イソジンマスクを掛けている間、イソジンガーグルで嗽をしていることになるためインフルエンザの予防に効果を発揮致します。そのため、イソジンマスクがヒット商品となり、1千万枚を生産しました。お蔭様で異業種交流財団から優秀技術賞を受賞いたしました。
田野内:イソジンマスクと放射線防御と関係があるのですか?
須郷:ポビドンと言う成分はヨウ素の吸着特性が高いため、イソジンマスクを掛けることで大気中のヨウ素を効率的に吸着除去することができるのです。通常は大気中にヨウ素は殆どないため、今回は原子炉から放出された放射性ヨウ素を効率的に吸着除去することが出来るのです。
田野内:それでは、外出するときにイソジンマスクをつけていれば大気中の放射線ヨウ素の防御に役立つわけですね?
須郷:はい、そうですよ。今回の原子炉事故で苦しんでいる福島の方々にフィルターメーカーを通して、1万枚のイソジンマスクと同じ「グラフトシャットフィルターセット」を寄贈いたしました。現在も7万セットの出荷準備を進めているところです。
(2011年3月放送分に加筆しました)