高崎女性フォーラム(旧婦人会館)の再検証を
(2010年1月14日)
中村岳夫
まちなかの大通りを本町三丁目交差点から末広歩道橋に向かう左側に風格のある歴史的建造物、高崎女性フォーラム(旧婦人会館)が現れたのを、みなさんお気づきだと思います。私も、その姿を通りから見た時は、大きな驚きと感動を覚えました。それまで本町の市営住宅の陰に隠れて、通りからは見えませんでしたが、市営住宅の解体によって、工事壁の向こう側に高崎女性フォーラムの二階部分と屋根がはっきりと見えるようになったのです。
この建物は、昭和十年(1935)に当時の図書館を解体して建築され、高崎市が所有する数少ない歴史的建造物の一つです。昭和四十四年に発刊された高崎市史によれば、この建物の一部は、大正元年(1912)までさかのぼるとされているようです。
高崎市では、この建物の老朽化、耐震性の問題などから、女性フォーラムの機能を移転し、まもなく解体を行う計画を進めています。私は、このまま解体されてしまうのはとても残念であり、都市景観の観点から再度ご検証をお願いできないものかと強く思っています。
現在に至るまで、「男女共同参画の拠点」として高崎市議会の審査や、高崎市教育委員会の指摘による「文化財」としての調査は行われた様ですが、外観を主とした都市景観の観点からの評価がなされていないように思われます。
旧景観条例の下で平成十一年ごろ行われた景観建築物の悉皆(しっかい=全棟)調査では、固定資産台帳をもとにしたとのことで、寺社仏閣、公共施設が対象となっていなかった様に聞いております。そのため当該建築物の景観的価値の本格調査がなされないまま現在に至ってしまったのではないかと、私は推察しています。そこで、あらためて新景観条例の下で「景観重要建造物」として指定可能か否か、検証をしていただきたいのです。
「景観重要建造物指定基準」には必須基準が三点ありますが、その一つに「道路その他の公共の場所から公衆によって容易に望見されるものであること」と定められています。今までこの建物の前には市営住宅と北公民館がありましたが、それが解体された今だからこそ満たされる基準です。従って、今現在であれば「景観重要建造物指定基準」を十分に満たしていると考えます。
この建物の近くには、旧景観条例で景観重要建築物に指定され新条例で景観重要建造物に移行する「山田家」「吉田家」や、登録有形文化財の「日本聖公会高崎聖オーガスチン教会聖堂」「水村園土蔵群」、その他歴史的建築物の「本木家」「倉上家」「荒木家」「須田家」等価値ある建造物が多数あります。 単体の建築物としてだけではなく、歴史的建造物の集積地の顔としても今後の都市景観やまちづくりに重要な存在になると考えられます。
建物内部の使用は不可能としてもその外観が景観上貴重であることは間違いありません。ぜひ、もう一度高崎市に、景観重要建造物としての調査、ご検証を頂きたくお願いしたいのです。高崎市のすばらしい景観の創造、保全を指導する立場として、行政自身の在り方を市民に示すことになるのではないでしょうか。
市民の皆さんも、ぜひこの建物の風格ある姿を、道路から眺めてほしいと思います。きっと誰もが、高崎のまちづくりに役立つすばらしい景観であることを実感されると思います。(下小鳥町)
(2010年1月14日)