指針 都市の戦略・市民の戦略
(2010年1月)
群馬県立女子大学群馬学センター 熊倉浩靖
変革を期待された政権交代だが、先行き一層不安な越年となったようだ。だが、ここは新年、自らの位置をしっかりと見直すことで、高崎に暮らす指針を確実なものとしたい。
まずは、都市高崎の役割の大きな変化。
わが国が東京から西に連なる第一国土軸と北に連なる第二国土軸に沿って発展してきたことは周知の通りだ。この二つの軸で考える限り、高崎は、いかに高い交流拠点性を示そうと、大東京圏外周部の一都市にすぎない。
その立ち位置が変わろうとしている。北陸新幹線金沢延伸である。高崎は、東京と日本海を繋ぐ新たな軸上での役割を期待される。この軸を第三国土軸と呼ぼう。まだまだ脆弱な軸ではあるが、欧米とアジアを繋ぐという二十一世紀日本の役割を象徴する軸である。この軸の要、コントロールセンターとなることを期待されていることを自覚したい。
ペガサス参加のBCリーグが北陸・上信越をエリアとすることは示唆的である。ヤマダ電機が巨大な本社機能を高崎駅東口に移転させたことは時代を見据えた判断であろう。金沢の山出市長さんの呼びかけで締結した友好交流都市協定は、高崎の明日を指し示す。
こうした方向をしっかりと戦略化させたい。群馬県最大の都市などということに満足していてはいけない。第三国土軸の要にふさわしい都市整備を計画的かつ早急に進める必要がある。新幹線駅とスマートインターを結ぶ東口線などを中心に、内外の本社機能、業務機能を誘致していく活動、コントロールセンターに不可欠なコンベンション機能の確立などがまずは挙げられよう。そのためには、経済界と市執行部、議会が一体となった戦略的活動が不可欠である。今年は、ぜひとも、そうした組織的活動に着手してもらいたい。
以上が、都市としての発展戦略であるとすれば、市民としての戦略はどうあるべきか。
高崎の市民力を特長づける要素として、小学校通学区域ごとの公民館活動、自校方式の給食、学校保健会活動などが挙げられる。音楽をはじめとする多様な文化活動も内外の知るところだ。実に多様な人々が多様な市民活動、文化活動をしている。市をはじめ公的な組織の支援も比較的手厚いと言ってよい。
探っていくと、問題は、市だけでなく市民活動も縦割りで、せっかくの活動がばらばらで、大きな力になっていないところにあるようだ。それをどうやって解決していくか。
市に縦割りを直してくれというのは筋違いだ。市民自らの問題として、それぞれの地域で多様な活動を繋いでいくことが不可欠である。実際、幾つかの地域でそうした動きが出てきている。繋ぎ合う力を育てていこう。
仕組みと蓄積はある。群響や音楽センターを創った伝統もある。抱え込まず、胸襟を開いて繋ぎ合っていくこと。そこで生まれる地域力、市民力こそ、真の高崎の力である。
(2010年1月)