烏川からの安定取水にメド/倉渕ダム中止で矢木沢ダムを水源に
(2010年4月20日)
右岸林道橋脚
工事用道路
道路沿いの説明板
3月24日の群馬県公共事業再評価委員会答申を受け、県が倉渕ダム建設中止の方向で手続きを進めることから、高崎市水道局は今後の方向について考えを示した。
倉渕ダムは、倉渕町川浦、はまゆう山荘東付近の烏川渓谷に予定された堤高85・6m、堤頂長386・4mの重力式コンクリートダム。高崎市の水道用水確保と烏川治水対策のため、昭和59年から調査され、平成2年に事業着手された。平成5年に県と高崎市が基本協定を締結し、平成10年に市は、日量2万トンの暫定水利権を取得した。この頃から市民の間で、倉渕ダム建設に対する反対の声が上がり、高崎の水について市民の間で議論が行われ始めた。治水面では、烏川の高水流量や高崎市内の洪水氾濫地域などについて疑問が出された。
平成15年4月の高崎市長選では、倉渕ダム建設が争点となった。平成15年12月に当時の小寺弘之知事が本体工事を凍結し現在に至っている。総事業費は400億円で、負担率は県が約88%、高崎市が約12%。工事の進捗は40%、約162億円が執行されていた。
暫定水利権は、期限付きの水利権で、現状で不足している水量について、河川流量に余裕がある時にだけ取水できる権利。この暫定水利権による水を、恒久的に取水できる安定水利権として確保することが、高崎市の大きな課題だった。高崎市が烏川から取水する必要量、一日2万1千トンについて、群馬県は倉渕ダムに依らず、矢木沢ダム(利根郡みなかみ町)を水源とする方向を固めた。利根川綾戸ダム(利根郡昭和村)から取水し、群馬用水榛名幹線から高浜川を経て烏川に水を補給する。一連の工事は群馬県が行い、この方法で高崎市の水利権が解決されれば、倉渕ダムは治水目的だけの県単独事業となる。事業の費用対効果が1・0未満となり、県は、事業中止を決めた。高崎市、群馬県は、これから倉渕ダムの事業中止と水利権について、関係省庁との協議、申請手続きを始める。
倉渕ダム建設中止により、県と高崎市は、現地の防災対策や原形復旧工事を実施する。用地は100%買収済みで、跡地の取り扱いについても、県と市で協議される。現在、放置されたままの構造物、閉鎖された工事用道路などは、安全確保を中心とした対策工事を早期に実施する。ダムの代替となる治水対策は、烏川圏域河川整備計画を変更し、早期事業着手をめざす。