「高崎の空気がなければできなかった」/映画『ばかもの』

(2010年4月12日)

「高崎の空気がなければできなかった」/映画『ばかもの』上映後の舞台挨拶で金子監督(右)と高崎映画祭の志尾さんがトーク

「高崎の空気がなければできなかった」/映画『ばかもの』金子監督と絲山さん

 高崎市在住の芥川賞作家、絲山秋子さん原作の映画「ばかもの」が、10日の高崎映画祭で全国に先駆けて上映された。監督は金子修介、出演は内田有紀、成宮寛貴ほか。この映画は今秋公開予定で、今回のような先行上映は異例。原作者が高崎市在住、全編が高崎で撮影されたこともあり、高崎映画祭事務局はなんとしても上映を実現したいと努力してきた。高崎映画祭の特集「まちと映画」の一作として上映にこぎつけた。この特集はフィルムコミッション活動の評価を含め、高崎・群馬と映画との関わりをテーマの一つにしている。この日の上映には五百人の観客が来場した。

 物語は高崎を舞台に、主人公ヒデ(成宮)の19歳から29歳までの10年間を、8歳年上の女性、額子(がくこ=内田)との愛で描く。人物の台詞も上州弁。

 上映後の舞台挨拶で、金子監督は「額子という強烈な個性を中心に青年後期を描いた。原作のイメージを劇構成にできるかと難しい作品だった。高崎から発信した新しい日本映画。高崎の空気がなければできなかった。最後のシーンは、20年映画をやっているがなかなか撮れないスーパーショット。秋の公開の時には全国に広めてほしい」など、高崎や映画撮影の思い出を語った。

 記者会見で金子監督は「制作中から、高崎映画祭でぜひ上映したいとスタッフみんなと話していた。今日は観客の視線も熱かった。絲山さんが高崎にこだわって原作を書いているので、映画も高崎にこだわった。額子を生んだ絲山さんのこだわり、高崎に来れば何かあるはずだ、高崎でやらなければ意味がないと考えた。会話の台詞が優れていて、都会よりも高崎の方が額子のキャラクターを強く感じられるのではないか。魔女のような額子がヒデの最高の天使だった。高崎の人はあたたかく、フィルムコミッションの努力がなければ映画はできなかった。高崎映画祭の方にも会いたかった。高崎のまちは少しさびしいが、映画としての世界を切り取った。まちを白衣観音が見ている、生活の中に観音様が見えているのがこのまち。白衣観音のシーンもよく撮らせてくれたと思う」と話した。

 原作者の絲山さんは「群馬の女性はしっかりしていて働き者、言葉は乱暴だが情が厚い。書いている時は私の生活と作品がやりとりをするようだった」と額子を群馬の女性像に重ねている。また「”ばかもの”は登場人物の口から自然に出てきた言葉。この言葉がなければこの作品は成立しなかった。ラストシーンは緑と水が美しく、泣きそうになったが、原作者が泣いてはいけないと思ってこらえた」と作品の感想を語った。  高崎映画祭では、上映後、「ばかもの」の撮影に携わった高崎フィルムコミッションや撮影場所の提供者を招いた交流会を開き、金子監督や絲山さんと親交を深めた。

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