被爆体験の静かな「かたりべ」/庁舎前に被爆アオギリ・被爆クスノキの二世
(2009年12月14日)
被爆体験を伝える平和教材として活用を
高崎市議会十二月定例会一般質問で、白石隆夫議員が、高崎市の平和教育についてただした。白石議員は、この夏、高崎市議会の派遣団として広島平和記念式典に参加し、平和を願う気持ちを子ども達に伝えることの大切さを再認識したと言う。
高崎市は、昭和六十一年に「核兵器廃絶平和都市」を宣言した。世界の恒久平和を願う市民の決意を示し、市役所庁舎前には、宣言のモニュメントが設置されている。
白石議員は、高崎市の平和啓発事業の中で、庁舎前広場に植樹されている「被爆アオギリ二世」、「被爆クスノキ二世」を紹介した。この二本は、日本非核宣言自治体協議会を通じて広島市と長崎市から贈られている。議員は、この二本の植樹について「ほとんどの市民が知らない。子ども達が平和や戦争について関心を持ち、事実を知ることが大切」と指摘し、高崎市の平和教育に活用することを提案した。
被爆アオギリは、広島市の爆心地から北東1・3キロにある郵政局の中庭にあり、爆心地側の幹半分が熱線と爆風により焼けたが、焦土の中で芽を吹き返し、被爆者に生きる希望を与えたという。その後、平和記念公園内に移植され、樹皮が被爆の傷跡を包むように成長しているという。
被爆クスノキは、長崎市の爆心地から南東8百mの山王神社境内にあった二本で、原爆により大きな被害を受けた。生存が危ぶまれたが、樹勢を盛り返し長崎市の天然記念物に指定されている。
広島、長崎ではこのアオギリ、クスノキが、被爆体験を次世代に語り継ぐ活動に生かされ、平和運動のシンボルの一つとなっている。被爆アオギリ二世、被爆クスノキ二世を、この木の種子から育て、原爆の恐ろしさと生命の尊さを伝えるために配布している。
「日本非核宣言自治体協議会」は、核廃絶を宣言した都市が手を結び、核兵器の廃絶と恒久平和の実現を世界の自治体に呼びかけようと1984年に設立されており、その二十周年事業として、高崎市に「被爆アオギリ二世」、「被爆クスノキ二世」が植樹された。植樹の前には、銘板が設置され、二本の木の意義が説明されている。植樹当時は1mほどの若木だったが、現在は3m程度に成長している。