音楽センターの抜本的改善は困難/レーモンド事務所の調査結果
(2009年12月8日)
高崎市は、八日の高崎市議会総務常任委員会に、群馬音楽センターの建物診断調査について報告した。
この調査は、群馬音楽センターを設計したアントニン・レーモンドが設立したレーモンド設計事務所によって今年五月から十一月にかけて行われた。
群馬音楽センターは、昭和三十六年に建設され、前庭には「ときの高崎市民之を建つ」の碑が立つ本市を代表する建築物。築後五十年が経過し、老朽化の現状や、設備更新の必要性、社会情勢に応じたグレードアップに対する可能性と、改修した場合にかかる費用の概算が調査された。
総括的には、ホールの利用形態や利用者の要求が計画当時から変化している。現役の音楽ホール、特に多目的の大ホールの機能としては要求を満たしていない部分があると指摘された。改修にかかる費用は、目的の選択によって幅があり、31億円から37億円。市では庁内組織で、文化ホールについて検討を進める。調査報告の主な内容は以下の通り。
◇建物の寿命=現状の状況を維持できれば問題は無い。耐震構造も一部を必要としているが問題はない。現状を維持していくには定期的な検査と補修が必要である。
◇舞台等の近代化=群馬音楽センターは、舞台空間に高さと奥行きがないため、近年の大型化した公演ができない。舞台上部の拡幅、舞台下及び客席を掘り下げて空間を広くすることで高さの確保ができるか、舞台奥を拡幅できるか検討した。群馬音楽センターは、折版構造であるため、構造上、そうした改装はできないこと。舞台上部へのフライタワーの設置は、11カ所の折版屋根のうち、3カ所を欠損することになり、構造的に非現実的である。舞台下部の掘り下げは、工事期間中の一時的なものであっても主要構造体に大きく影響し、致命的なダメージを与えるため不可能である。
◇音響効果=群馬交響楽団などクラシックの演奏会では、残響音が少ないことが指摘されている。残響を確保する方法として、ホール空間の拡張は、舞台と同様に、構造上困難である。クラシック音楽の場合は2秒近くの残響時間が望まれるが、音楽センターでは1・0秒~1・3秒しかない。音響反射板を固定すれば、1・6秒まで確保できる見込みだが、ホールの用途が限定される。客席シートバックが木製から布製に改修されたことで、残響時間が奪われたことは事実だ。
◇観客の利便性の向上=現在の一般的なホールは、エントランス部分とロビー部分が分離し、エントランスから「チケットもぎり」を経てロビーに至る。音楽センターには、エントランス部分がなく、二千人収容のホールとしてスペースが不足している。現在の女子トイレは東西あわせて22室しかなく、不足しており、東西一方の男子トイレを女子トイレとして使用する主催者もある。各ブース内の照度が確保されていない。身障者や子どもに配慮した設備になっていない。経年により臭気も発生している。増設、更新、内装の改修が必要だ。
不足するトイレ、楽屋、ロビーについては別棟を建設することで対応する。
客席通路階段が不規則なため、移動に注意を要する。建物の構造体をそのまま使用しているので抜本的な改修はできない。足元灯を改善し、安全性を高める。
客席の前後スペースが狭い。オケピット上部を含めた前十三段と後方席では便所壁までは、床の撤去・新設が可能で、客席前後を広げることはできる。その他の部分は柱と梁で囲まれたスラブとなっており、工事のためスラブを撤去することは全体に大きく影響し、構造に致命的なダメージを与える。