平成20年度決算認定報告/松浦市長
(2009年9月11日)
松浦市長は、高崎市議会定例会に平成20年度決算を上程した。決算報告は次の通り。
平成二十年度一般会計及び国民健康保険事業ほか七特別会計を合算した決算総額は、歳入が1990億1385万円、歳出が1900億8500万円となった。前年度に比べ、歳入が37億157万円(1・8%)、歳出が80億7890万円(4・1%)減少した。
一般会計の決算額は歳入が1398億5909万円、歳出が1317億6291万円で前年度と比較して歳入で15%、歳出で12%増加した。歳入歳出差引額は、80億9617万円の黒字となった。翌年度へ繰り越すべき繰越明許費の繰越財源55億5549万円を控除した実質収支額は、25億4068万円の黒字となった。このうち17億円を財政調整基金に積み立てたため、翌年度純繰越額は、8億4068万円となった。
平成二十年度のわが国の経済は、世界の金融資本市場の危機を契機に世界的な景気後退が進んだこともあり、外需面に加え国内需要も停滞するなど、百年に一度とも言われている経済危機に直面することとなり、景気や雇用情勢が急速に悪化しただけでなく、企業の資金繰りも大変厳しい状況となった。
政府においても、国民生活の不安を解消するとともに地域の雇用を維持するため、「景気対策」や「生活対策」に重点をおいた補正予算を相次いで実施した。
国の財政は、平成二十年度末の長期債務残高が591兆円程度と見込まれるなど危機的な状況が続いている。また、地方財政においても、景気後退等に伴い、地方税収入や地方交付税の原資となる国税収入が急激に落ち込んでいるなかで、社会保障関係経費の自然増や公債費が高い水準で推移することなどにより、極めて厳しい状況が続いた。
このような状況のなかで、平成二十年度から第五次総合計画をスタートさせ、将来都市像に掲げる「交流と創造~輝く高崎」の建設に向けた施策と事業を最優先に取り組むとともに、市民一人ひとりが安心・安全に暮らしていけることを最大の目標に、魅力ある都市づくりにつながる諸施策を推進した。また一方では、厳しい財政環境に対処するため、財政の健全性に留意しつつ、経営改革の理念である選択と集中による行政運営にも努めた。
【歳入決算の概要】
歳入の根幹をなす市税収入は、553億8449万円となり、前年度と比較すると4733万円(0・1%)の増加となった。個人市民税で4億1725万円、固定資産税で8億301万円増となり、景気動向を反映し法人市民税が10億8990万円減となった。
消費の落ち込み等の影響を受け、地方消費税交付金は32億5300万円で、前年度と比べて1億2913万円の減、自動車取得税交付金は、6億3310万円で、前年度と比べて1億2731万円の減となった。 地方交付税は、83億9026万円となり、前年度に比べ1億1357万円の減。
国庫支出金は、171億7635万円で、定額給付金給付事業等の国の経済対策のため前年度と比較すると65億9485万円増となった。
県支出金は、71億979万円で、前年度に比べ13億3432万円の増。主に国民健康保険と後期高齢者医療保険の加入者の負担を軽減する保険基盤負担金、メディカルサポートセンター整備による補助金により増額した。
繰入金は、56億4461万円で、財政調整基金からの繰入金が増加したことなどにより、前年度に比べ14億8815万円増加した。
諸収入は、202億1592万円となり、前年度と比較して49億3666万円増加した。主な要因としては、中小企業による制度融資の大幅な利用増に対応するため、貸付金元利収入を補正予算で増額措置したことや、学校等の給食事業収入の増加などによるもの。
市債は、108億8640万円となり、前年度に比べ44億9430万円(70・3%)増となった。メディカルサポートセンター整備、医療保健センター(仮称)建設、堤ヶ岡小分離新設、新町第一小校舎建設などの事業によるもの。
市債の平成二十年度末現在高は、前年度末に比べ5億8831万円増加し、1115億2673万円となった。●「健康・福祉」すこやかで元気に暮らせるまち
少子・高齢社会が進行する中で、すべての市民が生涯にわたって心身ともに健康でいきいきと暮らすことのできるまちづくりに取り組むため、地域福祉計画を策定するとともに各種施策を積極的に推進した。
子育て支援については、不妊治療を受けている人の費用負担を軽減するため、経費の一部に対して助成を始めたほか、妊婦健康診査の助成対象回数を拡大し、安心して子どもを産めるよう環境づくりを推進した。
医療費助成の対象を、外来は小学校三年生、入院は中学校三年生までに拡充した。
施設整備については、箕郷第一保育園の園舎改築工事に着手したほか放課後児童クラブ施設の建設を行い、次世代を担う子どもたちが心身ともに健やかに育つよう環境整備に努めた。
地域医療体制の整備としては、国立病院機構高崎病院の建て替え工事に併せて、メディカルサポートセンターの整備を引き続き推進した。
新図書館との複合施設となる医療保健センター(仮称)についても、平成二十三年一月の完成を目指して事業を推進してきた。
高齢者福祉については、後期高齢者医療制度がスタートしたことにより、市民は周知と制度の円滑な運営に努めた。
本市独自の施策である68、69歳の医療費助成や、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らせるように在宅での生活を支援する給食サービスなども引き続き実施した。
障害者福祉では、新町福祉作業所が完成したほか、障害者自立支援法に基づく適切なサービス提供を実施してきた。
●「教育・文化」豊かな心と感性が育つまち
家庭、学校、地域が一体となって、心豊かでたくましい子どもたちを育てるとともに、生涯にわたって学習活動が行える環境づくりと歴史や文化の薫り高い環境の整備・支援に努め、豊かな感性を育むまちづくりのための諸施策を推進した。
学校教育については、「二十一世紀の変化の激しい時代を、生涯学び続け、心豊かにたくましく生きぬく子ども」の育成を目指した教育活動の充実を進めている。
各学校では、子どもたち一人ひとりが確かな学力を身につけ、豊かな人間性を育めるよう、日々の教育活動の充実や改善に努め、地域に根ざした特色ある学校づくりを推進した。
教育に関わる様々な問題の解決のためには、「学校支援員」を全小・中・特別支援学校、幼稚園に配置したほか、「通級指導教室」では一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な指導等に引き続き取り組んだ。
学校の危機管理においては、地域や関係機関との密接な連携により児童・生徒の安全確保に努めた。
義務教育施設の整備では、堤ヶ岡小学校の分離新設による桜山小学校と新町第一小学校の校舎建設が終了した。そのほか、倉渕中学校、箕郷中学校の屋内運動場の建て替え、中尾中学校及び養護学校の校舎の建て替えにも着手した。
新耐震設計基準以前に建築された校舎の耐震診断、補強設計、補強工事についても順次実施し、教育環境の整備と充実を図った。
史跡の保存整備では、日高遺跡、箕輪城跡、保渡田古墳群等の保存整備を引き続き進めた。
北公民館は、昭和町の北部プール跡地への移転工事が終了し、本年四月に開館した。
昨年六月には新町図書館が開館した。新図書館については、平成二十三年度の開館に向けて、医療保健センター(仮称)との複合施設として事業を推進した。
平成二十年度は、北京オリンピックでの女子ソフトボールチームの金メダル獲得や上武大学の箱根駅伝初出場など、スポーツによって高崎市民が大変勇気づけられた年でもあった。
生涯スポーツの推進については、施設の維持管理に努めるとともに、地域スポーツの振興や学校体育施設の開放に取り組みました。
高崎経済大学では、学生数の増加に対応するため建設した新教室棟が完成した。
芸術文化の振興としては、各地域の特色を生かした企画文化事業や文化活動を継続・推進し、市民文化の振興を図った。
市美術館では収蔵庫の建設を行うとともに、タワー美術館と合わせ、それぞれの特徴を生かした企画展を開催した。
総合文化センター臨時駐車場の整備や文化会館の舞台照明設備等の改修を行い、施設利用者等の利便性の向上を図った。
●「環境・安全」安心でやすらぎのあるまち
自然環境と調和した循環型社会を目指すとともに、地域防災の強化など、だれもが安全で安心して暮らせるまちづくりのための諸施策を推進した。
ごみの減量化とリサイクルの推進については、資源ごみ分別排出を徹底するとともに、町内会や育成会などの団体による古紙類等の有価物集団回収を引き続き奨励した。
環境教育の一環として、学校給食では、給食残渣の堆肥化を継続して実施し、児童・生徒の環境意識の啓発を図った。
地域防災対策としては、コミュニティ消防センターの建設や耐震性貯水槽の設置のほか、市民の生命、身体及び財産を災害から守り、安心して暮らせる高崎市をつくることを目的とした新たな地域防災計画を策定し、市民の皆様が安心して暮らせるまちづくりの推進に努めた。
公園緑地事業としては、たくさんの市民の皆様のご協力のもと、「全国都市緑化ぐんまフェア」を開催し、市内外から延べ160万人を超える多くの来場者で、大変な好評をいただいた。
三ツ寺公園などの整備を促進したほか、観音山公園内のカッパピア跡地の再整備に向けた取り組みを行った。
●「産業・観光」人々がつどう魅力あるまち
商都高崎にふさわしい、にぎわいのある中心市街地の形成を図るとともに、新産業の創出や起業支援などにより、商業・工業・農林業の各産業にバランスの取れたまちづくりを推進した。また、個性ある地域資源を活用した観光地づくりなど、広域から人々がつどう、魅力あるまちの実現を目指した諸施策を実施した。
中心市街地活性化の取り組みについては、活性化支援のための各種事業のほか、本市最大の商業イベントである「えびす講市」や「商都フェスティバル」などを総合的に支援した。
中小企業への支援では、世界的な金融危機により、景気や雇用情勢が急速に悪化したことから、本市の中小企業においても資金繰りが大変厳しい状況となったので、緊急的に制度融資預託金の大幅な増額を行った。
産業創造館を拠点として、企業支援等を行うなど、産学官連携や新産業、新技術の創出を総合的に実施してきた。
観光振興については、高崎まつりをはじめ、各地域のお祭り・イベントを支援するとともに、榛名湖・榛名神社や、みさと芝桜公園など多様な観光資源を複合的に整備・活用し、県内外から集客できる観光都市として賑わいを創出した。
高崎フィルム・コミッションでは、映画やテレビなどの撮影協力に市民と行政が一体となって取り組み、本市の知名度向上と地域の活性化を図った。
農業については、集落営農組織の育成強化、地域の特性を生かした果樹生産振興や野菜産地育成、畜産振興対策などの事業のほか、地産地消の推進、農業体験による食農教育、グリーンツーリズムなど市民参加型の事業を推進し、地域農業の振興を図った。
林業については、森林整備計画に基づいた間伐の推進や林道整備などを行い、林業経営の振興を図るとともに、森林の持つ多面的機能の発揮・活用に努めた。
●「都市・建設」便利で快適な住みよいまち
地域の特性に配慮し、都市と自然が調和した快適な住環境を備えた利便性の高いまちづくりに向けた諸施策を推進した。
都市計画事業では、高崎駅東口ペデストリアンデッキの整備、駅舎改修等の整備を推進したほか、スマートインターチェンジについては、具体的な設計に着手した。
地方道等改修事業では、広小路栄町線や中央通り線などの整備を実施し、安全性や利便性の向上を図った。
区画整理事業では、高崎駅西口周辺地区や倉賀野駅北地区、浜尻北地区、高崎操車場跡地周辺地区、上中居地区、群馬中央第二地区を重点的に整備するとともに、その他の継続事業についても着実に推進した。
また、街路事業では、高前幹線、飯塚並榎線など十三事業を推進した。
市内循環バス「ぐるりん」については、ノンステップバスを二台購入したほか、利用者のさらなる利便性の向上を図るため、運行路線の見直しに向けた調査を実施した。
市営住宅の整備については、山名団地の第三期建設工事と新町つくし団地の第二期建設工事を実施したほか、新たに若者や子育て世代等の定住を促進するため、倉渕ふるさと住宅として戸建て住宅六戸の建設を行った。
●「地域・自治」市民とつくるみんなのまち
地域の主体性が求められる分権型社会に対応し、自主自立の行財政運営を目指すとともに、市民と行政の良好なパートナーシップのもとに、市民主体のまちづくりを推進する諸施策を実施した。
吉井町との合併では、合併協議会を設置し、さまざまな協議を重ね、本年六月一日に合併が実現し、人口三十七万人を超える新しい高崎市が誕生した。
また、平成二十三年四月の中核市移行に向け、組織体制を整え、必要な事業を推進した。
住民記録や税などの電算システムを大型汎用コンピューターから効率の良いサーバーシステムに切り替え、経費削減に取り組むとともに電子自治体たかさきの構築を積極的に推進した。
また、住民自らが、自らの発想と自らの手により、自主的・主体的に取り組む地域づくり活動への参加意識を喚起し、地域活動の一層の推進を図った。
●特別会計
国民健康保険事業は、健全な財政運営に努める一方、平成二十年度において、高齢者の医療に関する制度が大きく変わったことから、保健事業に特定健康診査等の事業が加わったほか、日帰り、一泊及び脳ドックに対する費用の一部を助成することで、加入者の疾病予防と健康づくりに努めた。
介護保険については、短期入所サービスの利用日数を確保する特別給付を継続して実施したほか、地域ケアを支える中核機関である地域包括支援センターの円滑な事業運営や介護予防を重視した施策を推進した。
七十五歳以上の高齢者の医療制度として、平成二十年度から新設した後期高齢者医療特別会計については、市の事務である徴収業務を行った。
老人保健、簡易水道事業等、農業集落排水事業、駐車場事業についても事業の効率的運営に努めた。
土地取得事業については、都市計画事業用地の取得を行った。
●水道事業
平成二十年度水道事業会計の決算額は、収益的収支において事業収益総額が63億102万円、事業費用総額が57億8499万円となり、差し引き5億1603万円の純利益が生じた。前年度と比較すると、収入で3478万円、支出で1億4221万円の減少となった。
資本的収支については、資本的収入額が資本的支出額に対し不足する額28億6621万円を、当年度分損益勘定留保資金等で補てんした。
公的資金5億3009万円の補償金免除の繰上償還を行い、将来の利子負担の軽減を図った。
主な事業として、配水管整備事業は新たに延長1万198mの管路を布設し、さらに1万2019mの布設替えを実施して、安定した給水サービスの向上に努めた。
施設改良事業としては、新町浄水場において、受変電設備・ポンプ設備等更新工事を、中島浄水場ろ過機設備更新工事、乗附浄水場系テレメーター更新工事などを実施し、施設設備の強化を図るとともに、安全でおいしい水道水の供給に努めた。
●公共下水道事業会計
二十年度の決算額は、収益的収支において事業収益総額が78億85万円、事業費用総額が71億6371万円となり、差し引き6億3714万円の純利益が生じた。前年度と比較すると、収入で1億7253万円の増加、支出で3259万円の減少となった。
資本的収支については、資本的収入額が資本的支出額に対し不足する額42億8525万円を、過年度分損益勘定留保資金等で補てんした。
公的資金29億5179万円の補償金免除の繰上償還を行い、低利な民間資金による借換えにより、将来の利子負担の軽減を図った。
主な事業として、管渠布設事業としては、1万4千mの管渠を布設し、39ヘクタールの面整備を行った結果、普及率は71・2%となった。
雨水対策事業として、一貫掘川雨水10-1号幹線築造工事等を、合流改善事業としては、引き続き平成二十三年度の供用開始を目指す城南雨滞水池建設事業を実施した。
榛名湖水質管理センターにおいては、管理棟の改築と電気・機械設備の更新工事、阿久津・城南水処理センターにおいても、電気・機械設備等の施設更新工事を行い、適正な維持管理と環境整備に努めた。
世界的に経済の先行きが不安定な状況の中、本市を取り巻く財政環境も、引き続き大変厳しい状況ではあるが、健全財政を維持しつつ、市民サービスの向上を目指すことが行政運営の基本である。
「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」が公布され、平成十九年度の決算から健全化判断比率の公表が始まった。
平成二十年度決算における本市の状況は、平成二十一年六月一日に吉井町と合併したことに伴い、吉井町分との合算数値により算定した。実質赤字比率、連結実質赤字比率及び資金不足比率については、それぞれ収支が黒字だったため、数値が示されなかった。
実質公債費比率は、早期健全化基準値の25%に対して10・5%、地方債など将来負担すべき実質的な負債を捉えるための将来負担比率は、基準値350%に対して96・3%となり、健全な財政を維持することができたと考えている。
景気の先行きが不透明で、本市においても大変厳しい経済状況ではあるが、財政需要は今後も一層の増大がみこまれており、より一層事務事業の合理化に努め、多様な市民ニーズを的確に把握し、事業の取捨選択と効率的な執行に努めていく。
人件費、公債費などの義務的経費については、その動向に留意するとともに、中長期的な視点に立ち計画的な行財運営を行っていく。
公営企業会計についても、常に経営状況を明確にし、生活環境整備のなお一層の充実を図っていきたいと考えている。