高崎映画祭開幕/受賞者から喜びの声
(2009年3月31日)
「こんなに楽しい気持ちになる映画賞は初めて」橋口亮輔監督
「第二十三回高崎映画祭」のオープニングセレモニー・授賞式が三月二十九日、群馬音楽センターで行われた。
今回、映画祭始まって以来の全員出席。受賞者が登場すると満席の会場から一斉に大きな拍手と歓声が湧き、盛り上がった。昨年、映画祭代表の茂木正男さんが他界し、存続できるのかといった声が多く寄せられたという。「これまで以上の質の高い映画祭として守り続けていく事が、茂木さんへの感謝の気持ちになる」と映画祭のスタッフや市民が総力を上げて取り組み、今年も開催となった。
映画祭の大宮登委員長は「市民の手で見たい映画を選び、市民の手で上映し、市民自身が鑑賞するという全国でもめずらしい映画祭。市民力を代表するイベント。最後まで楽しんでもらいたい」。松浦市長は「高崎映画祭は映画のまち高崎、市民のまちたかさきの象徴といえる存在。企画から上映まで市民の大勢のボランティアで成り立っている。高崎市は映画を初めとする芸術文化が熱意ある市民の手によって高められている。映画祭がさらに発展していくことを願う」とあいさつした。
「接吻」で最優秀作品賞を受賞した万田邦敏監督は「小池栄子、仲村トオル、豊川悦司と一緒に受賞した事はこの上ない喜び。二○○三年『UNLOVED』で若手監督賞を受賞した。その時、はじめて茂木さんに会い、それからずっと茂木さん、高崎映画祭のみなさん、高崎市のみなさんに見守られ続け、励まされ続けられていたのだと思う。ありがとうございます。この喜びは映画の制作に関わったスタッフ、キャストのみなさんと分かち合いたい。これからも面白い映画、異色な映画を作り続けたい」と喜びを語った。
「ぐるりのこと。」で同賞を受賞した橋口亮輔監督は「『ぐるりのこと。』でいくつか映画賞をいただいたが、こんなにリラックスして楽しい気持ちになれる映画賞は高崎映画祭が初めてだと思った。スタッフのみなさんの細かい気配りとかが繁栄されているのではないかと思う。六年前、前作の映画『ハッシュ』で作品賞をいただいた。病気で映画祭に出席はできなかったが、高崎名物のダルマをいただき、その時片方の目を入れた。すでに、『ぐるりのこと。』の企画はあったが、自分はもう、病気で映画がつくることはできないのではと思っていた。しかし、絶対にもう片方にも目を入れてやるぞと高崎のダルマを大切にしていた。編集が終わった時、もう塗ってもいいだろうと塗った。励みになった」映画祭に支えられたと話し、感動をさそった。
最優秀監督賞を受賞した黒沢清監督は「トロフィーをいくつもらえるか記録に挑戦しようかな。受賞理由を聞いて、細かい所まで見ていてくれていたのだと思いうれしかった」と嬉しそうに話した。同賞を受賞した是枝裕和監督は「つくり手にとって継続して見続けてくれる人がいることは嬉しい。またここに帰ってこられるような作品をつくっていきたい」、最優秀主演女優賞を受賞した小池栄子は「映画の世界観に怖じ気づき、最初は断った。しかし、可能性を絶ってしまうのではと思い挑戦した。怖かったけどやってよかった」、同賞を受賞した木村多江は「監督に毎日ダメだと言われ、自己嫌悪になっていた。でも、賞をいただき俳優の一歩を踏み出せた気がする。原点を忘れずに、これからも挑戦していきたい」とそれぞれ作品づくりに必死に取り組んでいたことや、映画祭が励みになったことを話した。
最優秀主演男優賞を受賞した仲村トオルは「受賞の知らせを聞いた時から、『もらっていいのかな、リリー・フランキーさんではなくていいのかな』と思い、動揺していたが、受賞理由に感動した」、最優秀助演男優賞を受賞した豊川悦司は「この暖かさはなんだ。高崎だからか。続いていってくれることを願う」と笑いをさそいながらあいさつ。
最優秀新人女優賞の甘利はるなは「地元の映画祭で賞をいただいて嬉しい。群馬をたくさんPRしていきたい」と意気込みを語った。 今回、受賞者から映画祭のスタッフの気配りの良さ、雰囲気の良さ、質の高さを評価する声が多く上がった。
最後に恒例、受賞者に来高記念の名前入りダルマをプレゼント。様々な角度からダルマを見つめ嬉しそうに抱えていた。