高崎哲学堂(旧井上房一郎邸)を市が取得

(2009年2月10日)

高崎哲学堂(旧井上房一郎邸)を市が取得高崎哲学堂(旧井上房一郎邸)

貴重な景観・観光集客施設/市民の財産として活用を

 高崎市は、財団法人高崎哲学堂が所有する高崎哲学堂(旧井上房一郎邸・八島町)を取得する考えを固めた。四日の高崎市議会総務常任委員会に報告し、同意が得られた。

 同邸は、昭和二十七年頃、井上房一郎氏が、交流の深かった建築家アントニン・レーモンドの東京笄町の自宅を実測して建築した。レーモンド建築を現在に伝える数少ない木造建築物となっている。高崎駅至近の場所で緑豊かで閑静な空間を作る庭園は、井上氏が設計したもの。

 井上氏は、群馬交響楽団や県立近代美術館の創設に尽力したことで知られている。井上氏は「市民の手に哲学を」と呼びかけ高崎哲学堂運動を1960年代末から提唱。市民、賛同者から浄財を積み立て、財団法人高崎哲学堂設立の会として、高崎での講演会を中心に運動を継続してきた。井上氏は高崎市民の芸術拠点としての群馬音楽センター、県立近代美術館を実現し、哲学のための拠点として高崎哲学堂を構想していた。哲学堂建設を見ぬまま平成五年に逝去し運動の継承を市民に託した。

 平成十四年三月、税金の滞納のため、同邸が公売になり、井上氏が最後の思いを託した高崎哲学堂設立の会が3億1000万円で落札。公売をめぐって、井上邸保存の世論が高まるなか、井上邸を開発から死守し、市民の財産となった。同年五月から同邸は「高崎哲学堂」として一般に公開。市民の文化活動の場として活用され、また隣の高崎市美術館との連携事業も回を重ねている。

 財団は、落札によって、それまでに積み立てた基金1億2千万円をほぼ使い果たし、金融機関から融資2億1千万円を受けた。財団は、借入金の返済に努力してきたが、寄附金だけでは、運営困難な状況が続いていた。高崎市は財団からの売却の要望を受け、検討を行ってきた。

 高崎市は、「中心市街地の貴重なオープンスペースで平成十二年に高崎市都市景観重要建築物等として指定を受けている。高崎市美術館との一体的な利用がはかれる。高崎市が取得しない場合は競売で土地建物が失われることが危惧される。集客施設として中心市街地の活性化に寄与する」などを理由に、取得を決めた。

 面積は1669・6㎡、家屋243・1㎡。高崎市は今年度末に取得する予定で、価格は1億7450万円。同財団の借入残高にあたる。1平米あたり10万4500円で、不動産鑑定価格より5万円ほど安価。井上邸そのものは、経年しており評価額二百万円程度。二十一年度に施設整備を行い、公開・活用の方向を決める。本格的な使用が始まるのは二十二年度からと考えられている。

 財団法人高崎哲学堂では「市民の寄付と活動で保存、活用されてきた哲学堂を、真に全市民の共有財産としていただけたことは、まことにありがたい。井上先生、原一雄先生のご遺志にかなう。今後は、目的が達成され基金も底をついたことから、財団解散を視野に、寺子屋活動としての学習事業に軸足をおいていきたい」と話している。

高崎の都市戦略 最新記事

勝ち残る専門店

グラスメイツ
グラスメイツ
メガネ店の店員も買いに来るメガネ専門店
辰巳
辰巳
印傳と陶器の専門店/県外からもお客様
有限会社三洋堂
有限会社三洋堂
パソコン全盛時代に書道のおもしろさを伝える

すべての記事を見る