榛名山麓の活性化を担うブランド野菜
(2011年1月)
十文字地区の冬の風物詩、大根干し
榛名十文字だいこん
たくあん漬けに最適。その名も“干し理想”
11月中旬から12月下旬頃まで、榛名山麓南面の榛名・十文字地区では、十文字だいこんの収穫最盛期を迎える。たくあん漬けにするために、白いだいこんが竿に吊るされて連なる様がそこかしこに見られ、この地域の冬の風物詩となっている。土から抜いただいこんは、乾かないうちに泥を洗い落として、1~2週間かけて榛名山麓を渡る寒風にさらして干すことにより、本来の旨味がより強くなる。十文字地区の気候、気温、風がこの作業に最適であるようだ。
この地域に古くから伝わる十文字だいこんは、たくあん漬けに最適だが、形状は長細く半分から下部にかけて緩やかに下ぶくれして、多少の曲がりがある。そのため、他のだいこんと比べて土から抜きにくく、洗って干してと一連の手作業を続けるとかなりの重労働になる。
「十文字だいこんの中でも、曲がりのあるのは“干し理想”という種類のだいこんです。品種改良されて真っ直ぐに育つものもありますが、個人的には曲がりがあっても、昔ながらの“干し理想”で作る歯切れのよいたくあんが一番と、うちではこれだけを作っています」と話す。
干し上がっただいこんは、ビニール袋を入れた樽に糠や塩、ザラメ、昆布、唐辛子、乾燥したナスの葉などをよくかき混ぜて糠床を作り、隙間のないようだいこんを並べ入れ、最後に空気に触れないようビニール袋の口をしっかり縛る。一ヶ月ほどしたら食べごろとなり、ひと樽約20kgに約30本前後入って6500円で販売している。
しかし、「十文字だいこんの栽培数やたくあんを漬ける時間に限りがあるので、常連さんや前年に予約をいただいたお客様のニーズに応えるだけで精一杯」というのが高橋さんの現状で、周辺の農家も人に頼まれて作ったり、自家消費用、贈答用に作っている程度。十文字だいこんのたくあん漬けは、残念ながら簡単には口に入らない“高嶺の花”となっている。
高橋敏治さん
十文字だいこんのブランド化に取り組み、
地域活性の起爆剤に
高橋さんが観光地などの土産物屋への卸売業を営む傍ら、十文字だいこんのたくあん漬けを作るようになったのは、今から17年程前のこと。地域の仲間と話すうちに、もっと心豊かに楽しく暮らしたい、地域にとって何かを成し遂げたいと思うようになった。そして、中山間農業地域にとっては、質の高い農産物などを生産しブランド化していくことが大切という信念を持つようになった。
都市に暮らす人たちに、自分たちの住む地域の自然環境や農産物を知ってもらい、日常的に購入し、農作業や加工食品の手作り作業に親しみたくなるような仕掛けを作る。ほかの地域から農業を志望する若者を受け入れる態勢を整えるといった、外に向かった着想が必要と語る。十文字だいこん作りは、まさにそうした視点に立った地域活性化の起爆剤といえる。
名物をつくろう
幻とまでいわれる懐かしい味わいの“十文字だいこんのたくあん漬け”。榛名の「はるな梅マラソン」(平成23年3月13日開催)と「榛名梅まつり」(3月第3日曜日)の会場で販売される予定だが、早めに足を運ぶことをお勧めする。また、運が良ければJAはぐくみ久留馬総合選果場に並んだ“古漬けたくあん”に会えるかも。ちなみに、たくあん漬けは1本300~500円。
観音山にある新栄物産の直売店、「つけもの処 旬彩」にいずれは“十文字だいこんのたくあん漬け”もお目見えする予定だが、今はまだない。
有限会社 新栄物産
代表:高橋敏治
高崎市本郷町2093
電話:027-344-4646