かつて市場を席巻した幻の国分にんじん
(2010年11月)
真塩 光枝さん
地域の伝統野菜の復活
「国分にんじん」は、根の部分が60~70cmで、葉を入れると1メートル以上にもなる長細いにんじん。色がよく甘みがあって香りも強いうえ煮くずれしにくいという特徴があり、スティックやきんぴら、煮物、松前漬けなど、にんじん本来の味が引き立つメニューにはもってこいだ。
大正時代にフランスから入ってきた種を地域の農家が改良し、昭和30年代ごろまでは長にんじんの代表品種として市場の5~6割を占めていたという。また、採種用にも栽培され種子は前橋のカネコ種苗を通じて全国に販売されるなど一世を風靡した。それが、昭和30年代ごろからの冷蔵庫の普及や核家族化を背景に、長くて納まりにくい国分にんじんに代わり、20~30センチの短根にんじんが消費の主流となって以降、市場から姿を消し“幻”の存在となった。
そして近年、国府地区の農事組合法人「国府野菜本舗」の代表者・真塩光枝さんが中心となり、国分にんじん復活への取り組みを始めた。「県中央青果市場の野菜ソムリエから、こんなにおいしいにんじんを絶やさないでほしいというお話を受け一念発起しました。最後の一軒となった生産農家から指導を受け、新たに6名が栽培に携わり、今年は24アール(約720坪)の畑で栽培しています」と話す。
11月下旬から3月下旬までが収穫時期で、JAはぐくみ国府支店の一角にある「国府野菜本舗」、JAはぐくみ直売所、JAたかさき四季彩館等の限られた店舗に並ぶ。昨年の価格は泥つきで1キロ3本程度で350円。「復活するからにはブランド野菜としての価値の構築に努めたい」と意欲的だ。
手作り料理で国府野菜をアピールし地産地消を推進
真塩さんが代表を務める「国府野菜本舗」は、30代後半から70代の地域の主婦たち23名で構成され、地元野菜やそれらを使った漬物や総菜、弁当など加工品の販売を手掛けている。さらに土屋文明記念館のレストラン&カフェの運営、出張料理教室や地域の小学校で“すいとん作り”などの食育活動なども展開する。子供たちは実際ににんじんを手に取ってにおいをかいだり、白菜をだっこしたり。高崎産の「絹の波」という小麦粉をこねながら一緒にすいとんを作ると、みな笑顔で平らげ、国分にんじんは甘くておいしいと大好評だ。
「国分にんじんは、肥沃で柔らかい土壌を好みます。白菜も国府白菜の苗が全国に多く出回っていますが、よそではここのような品質で収穫できないようです。それだけこの地域は恵まれているということ。私自身も嫁いできて、野菜がおいしくて驚いた覚えがあります」と言う。真塩さんは、8月30日の農水省の選定委員会で、“優れた地産地消の取組を実現する上で中心的な役割を果たした者”として『地産地消の仕事人』(全国42名)に選定された。今後の活躍と、国分にんじんの普及が、益々楽しみなところとなった。
農事組合法人・国府野菜本舗
代表:真塩光枝
高崎市引間町225
TEL:027-373-1121
営業時間:10時~18時。水曜定休
(日曜・祝日は10時~12時)
http://kokufuyasaihonpo.nomaki.jp/