市場では幻となった?陣田みょうが
(2010年7月)
陣田みょうが
●露地栽培ならではの香りやうま味
清涼感をもたらす夏の香味野菜のみょうが。露地物で香りやうま味、軟らかさに優れていることから、旧倉渕村の“陣田みょうが”は、昭和30~40年代頃を中心に市場を寡占し、一大ブランドを築いた。
みょうがはショウガ科の多年草で、数少ないわが国原産の野菜。全国いたるところの樹陰地や家屋の北側など、日のあまり当たらないところに自生している。特有の芳香とそう快な味があり、夏はつぼみを“花みょうが”として、冬は地下茎を軟化栽培して“みょうがだけ”として一年中利用される。陣田のみょうがは花みょうがを指す。
陣田は、倉渕町の最北端に位置し、標高約650メートル。土性は浅間火山による小石を含む黒色火山灰土壌。“みょうが畑10アール(1000平方メートル)に落葉樹林30アール”といわれるほど落葉を大量に必要とするため、ナラやクヌギの広葉樹林も確保できる山間地は、半陰性のみょうが栽培に適している。
しかし、現在、陣田地区を構成する16軒中、みょうが農家は4~5軒。「農家ではもう食べていけないからね」と嘆く中澤澤太郎さん。そして“陣田みょうが”を最初に栽培した人が、澤太郎さんの祖母のカキさんだ。大正時代に材木商の夫を早くに亡くし、跡取り息子が戦死してしまったという状況で、一家を支えるためにみょうがに着目した。「もともと自生していたみょうがを栽培して増やし、最盛期には200ケース・2トンを出荷していました。栽培や収穫作業は軽労働ですむので女性にもでき、技術的にも作りやすい。出荷期間はだいたい8月から9月の60日で、4時間みょうがを採り、4時間の箱詰め作業が連日続きます」。今では中澤さん宅の出荷量はピーク時の100分の1だ。
標高の高い地域のみょうがは、収穫期は平地より遅れがちであるが、収量が多く紅つきや品質も良いので比較的高値で売れる。現在は、ビニールハウスなどでの大量生産をしている地域も多いが、陣田のみょうがはあくまで露地もの。
「大量に供給できないと、既存の流通ルートに乗れず、大手スーパーで扱われこともありません。生産量の減ってしまった陣田のみょうがは、 現在“群馬のみょうが”とひとくくりになって流通しています」と、市場では幻となってしまった。“陣田”にこだわるなら、直接産地へ行くしかないようだ。
●地元の人に教えてもらった「みょうがの即席甘酢漬け」
〈材料〉みょうが(200g) 酢(カップ1/2) 砂糖(大さじ3) 塩(小さじ1)
〈作り方〉
1)酢に砂糖・塩を入れ、加熱して冷ましておく。
2)ガラスか瀬戸物の容器に1を入れ、みょうがを入れて漬けこむ。3、4日後が食べごろ。
〈ポイント〉
最初に熱湯に塩・酢を少々入れ、みょうがを2分くらい湯通しすると、青いみょうがでも紅色になる。みょうがが大きい場合は、半分に切って漬けると早く中まで味がしみる。
●名物をつくろう
倉渕町を南北に走る国道406号線を上っていき権田地区に入ると、途中に大きな看板にみょうがの絵と『新鮮みょうが』の文字。夏休みを利用して、キャンプや温泉、川遊びや魚釣りなどを楽しみながら、路面の農産物直売所でお目当てのみょうがをゲットしよう。陣田みょうがは、7月下旬~およそ2ヶ月間が旬となっている。めん類などの薬味や、刺身のツマ、料理のトッピングなどに使われる夏の香味野菜として最高だ!
陣田みょうが栽培
中澤 澤太郎
高崎市倉渕町権田1938
陣田みょうがのお問い合わせは、くらぶち営農生活センター電話:378-3110)まで
高崎商工会議所『商工たかさき』2010年7月号