秘伝の”冷めても柔らかいまんじゅう”
(2010年4月)
味噌まんじゅう(1個80円)
菓子司 若柳(わかやぎ)
●良質な素材で、さわやかな後味
白くてフカフカの軽い口当たりの生地。甘くてピリ辛の味噌にナスと大葉が入った香り豊かな餡。和菓子というより惣菜感覚で食べられる「味噌まんじゅう」。
一つ食べると意外や意外、全体的な軽さとさわやかな後味という予想外の展開。そして、今の何?と確認するように、つい二つ目に手が伸びる、そんな一品だ。
「私の父が、和菓子があまり売れない時代に、目玉商品になるような独自のものを作りたいと考え、長野の“おやき”にヒントを得て考案したものです」。米の収穫がわずかな信州の山岳地帯の伝統食をヒントに惣菜感覚に仕上げ、もう20年以上も店頭に並ぶ。
一番のポイントは、“冷めても柔らかい皮!”これを実現するために大量の小麦粉を使い切って、秘密の配合にたどり着いたそうだ。「小麦粉とイースト菌を使っています。材料的にはコンビニの肉まんの皮と一緒ですが、冷めても柔らかいままというのが絶対的な違い。試行錯誤の末にたどりついたそうです」と、味噌まんじゅうだけにそこがミソだ。
そして二つ目のポイントは、良質な素材だけに許されるあと味の清涼感!「二種類の味噌をブレンドしていますが、どちらも県内産で良質なものを使っています。夏は地場の大葉やナスを使用しますが、地場産のものが手に入らない時期は、高知や博多の長ナスを使い、添加物は一切使用していません」。子どものおやつとして、安心してお勧めできる。
“冷めても柔らかい”が自慢の皮ではあるが、「作りたてのホカホカなら、3倍はうまい!温かいとしょっぱさや辛さがとんがって、独特の風味が強く出ます」。どうせなら、最高に美味しいところを食べたいと、知っている人は10時の開店と同時に買いに来る。これがよりおいしいお勧めの買い方だ。
●中華の料理人から和菓子職人へ
菓子司『若柳』は、中野さんの父親が創業して今年で42年目となる。二代目の中野さんは、もともとは中華の料理人として東京で働いていた。若い時に修業を積んだバリバリの和菓子職人の父と比べると “細工菓子”を作れないというのがちょっとしたコンプレックスではあったが、食に関する職人という点でベースは同じで、父親直伝の味と技術を受け継いだ。
「和菓子と中華の違いは、朝早く働くか、昼から動き出すかの違い」と、すっかり余裕も見せ、ぜんざい最中や四季折々の羊羹なども店頭に並ぶ。看板商品はやはり『味噌まんじゅう』と、麹菌の扱いが難しいという『酒まんじゅう』だ。
「うちの商品を楽しみに来てくださるお客さんの期待は裏切れない」と、穏やかな中にも商品に向ける目に厳しさをのぞかせる。
●名物をつくろう
出来立てのホカホカなら3倍美味しく、冷めても柔らかく美味しくいただける若柳の『味噌まんじゅう』。山梨と共に年平均、日照時間の長さ日本一、二を誇る群馬は良質小麦の生産地。その小麦を使ったまんじゅうに、群馬産のナスや大葉、味噌を加えて惣菜感覚を打ち出し、単なるおやつを越えた存在感。食べて感じる意外性が印象深く、しかも後味さっぱりで、人にあげても喜ばれること請け合い。前日までに予約しておくと確実。
菓子司 若柳
店主 中野成実
高崎市芝塚町1999-5
電話:027-323-6629
営業時間:10:00~17:00(商品がなくなり次第閉店)月曜定休
※メニュー・価格等は取材時点のものです
高崎商工会議所『商工たかさき』2010年4月号