歴史ある八間道路で見つけた高崎で一番安いまんじゅう
(2010年3月)
黒糖まんじゅう(左)、酒まんじゅう(右)
風味堂の黒糖・酒まんじゅう
●まんじゅうが安いワケ
こしあんの黒糖まんじゅう・酒まんじゅうが各40円。つぶしあんの黒糖まんじゅう・酒まんじゅうが各50円。くるみ入りつぶしあんの黒糖まんじゅう・酒まんじゅうが60円。さらに、10個以上買うと合計額(税別)から100円引きとなる。
直径約5センチ、重さ約40グラム。ちまたで流行りの10円まんじゅうより格段に大きいが、一口サイズの範囲だ。とにかく安価で、昨年末に高崎市商業課より商業応援団事業の一環で発行された「たかさきまんじゅうマップ」の中で一番安い。こしあんの黒糖まんじゅうならば10個買うと300円、1個あたり30円で買える。酒まんじゅうが、焼きまんじゅうとマップで紹介されていたので理由を聞くと、まんじゅうの餡は違うが形が同じで間違わないように表面を焼いて印をつけているとのこと。焼印で印をつけることもあり、いつもこの焼きまんじゅうに出会えるわけではないようだ。
原価計算を几帳面にやっていたら、とてもかなわない価格設定だ。「この価格でまんじゅうの販売を始めたのは、昨年5月頃。弁当だって200~300円で買えるものがあるのに、まんじゅうが100円もしたらおかしい。もともと素朴で庶民的なおやつの値段としては、40円~60円というのは妥当だと思う」と、まんじゅうを売って儲けようと思っていないようだ。商売人というより菓子職人としての思いで安価な理由を語ってくれた多田さん。毎朝120個程度の出来立てホヤホヤのまんじゅうが店頭に並ぶ。
●まんじゅうを作り続ける
風味堂は多田さんの祖父が昭和27年に創業し、現在3代目。高崎神社の結婚式場などに赤飯や菓子等を作って卸しながら店頭販売も行ってきた。正月用の餅は、良質なもち米「こがねもち」を使用しておりファンが多く、市外からも毎年注文があって多忙を極めるという。
風味堂が面している八間道路は、田町通りから旧伊勢崎街道JR踏切の間を指し、かつて高崎でも相当賑わった通りだ。昭和3年11月昭和天皇即位の御大典のとき、八間道路に27台の山車が繰り出し、人でごった返す風景をとらえた写真が残っている。昭和30年頃は夏の夜に法輪寺の門前を中心に露店が並び多くの人出があったという。風味堂の菓子も良く売れた。しかし、そんな賑わいは昔のこと。「ご覧の通り人通りもまばらで、まんじゅうを買っていくのは近所のお年寄り。安いから人数の多い職場用や会合用に重宝がられている」と、多田さん。
時代とともにその姿を変えてきた高崎の歴史ある通りにたたずむ小さな菓子屋の店主。さまざまな事情や想いを抱えながらも、自分のできることをたんたんとこなす。
「自分の代で、この店を止められない」その一念で、早朝より高崎一安いまんじゅうを作り続けている。
●名物をつくろう
高崎で一番安いまんじゅうには、店主の人生のほろ苦い思いが詰まっているが、それでもまんじゅうはやっぱり甘く、毎朝店頭に並ぶ。作り続けることが多田さんにとって何より大切なまんじゅう。
毎日作るまんじゅうの数は少ないので、数がほしい人は事前に予約すると作ってくれる。とにかく安いので、皆さんの会社や会合のお茶うけに、いかがだろう?
風味堂
店主 多田典嗣
高崎市田町146
電話:027-322-4273
営業時間:10:00~18:00火曜定休
※メニュー・価格等は取材時点のものです
高崎商工会議所『商工たかさき』2010年3月号