お客様自慢の”たおやかな”おかみさん
(2008年12月)
店内には保彦さんの作品が飾られ、購入できる
手づくりがんも680円と保彦さん製作の器
酒房と器 月輪(げつりん)
●陶芸家の御主人の思い入れ
大通りから少し入った路地のマンションの1階。控えめにともる看板の灯をたよりに奥へ進むとある酒房「月輪(げつりん)」。25人程で満席になる店内は、落ち着いたくつろぎの空間。たおやかな女性店主・大須賀時子さんが温かく迎えてくれて、まさに癒しの隠れ家という風情だ。
店内の空間デザインと製作は、時子さんの夫で陶芸家の大須賀保彦さんが手がけ、月とお酒が好きな人の思い入れがこもっている。
●自然味あふれる器に家庭の味
時子さんは、青森県の竜飛岬を少し南下したところ十三湖(五所川原市)の出身で、料理好きの祖母の影響を受けた。
実家から送ってもらうという十三湖産のしじみの味噌汁(590円)と、地元の漁師たちが漁をしながら食べるという一枚の海苔をぐるっと巻いた長方形のおにぎり「タケちゃんにぎり」(400円)をオーダーすると、結構な夕食にもなる。一番人気は「手づくりがんも」(680円)で、揚げたての熱々を塩で食べるといっぺんにファンになること請け合いだ。
日本酒をオーダーすると、数種類のおちょこの中から気に入ったものを選べる。徳利やおちょこ、皿に小鉢などはほとんど保彦さんの作品で、酒や肴の美味しさを一層引き立てている。保彦さんの作品は地の素材に他の材料を埋め込んで図柄を描くという手間のかかる象嵌技法で、蛾や蝶の羽の模様や草木などをモチーフにした自然が感じられる作品が多く、まるで森の中での酒宴のような趣があって楽しい。
●よろいを脱ぎ素の自分に戻るとき
この店の何よりのごちそうは、時子さんのもてなしの心。「お客様がどこのどなたなのか知らないことが多いです。この店では昼間身に着けている鎧を脱いで、お酒とお料理を味わい、人と人が触れ合う温かさを感じてほしいです」と話す時子さん。月輪の〝輪〟は、人の輪。みんなで輪になって和んでほしいという思いがある。
おっとりとして、出過ぎない、ほんのりと温かな人柄がまるで月のような時子さんに会いたくて、足を運ぶお客様はきっと多いはず。
大須賀 時子さん
住所:高崎市羅漢町24-6 サンローゼ高崎103
電話:027-328-2828
営業時間:午後5:30-11:00
(ラストオーダー10:30)
定休日:日曜
※メニュー・価格等は取材時点のものです
高崎商工会議所『商工たかさき』2008年12月号