高崎新風土記「私の心の風景」

橋の風景から② ー柳瀬橋―

吉永哲郎

高崎新風土記「私の心の風景」

 土木学会関東支部群馬会は、高崎、藤岡市境の烏川に架かる「柳瀬橋」を、「橋の技術発展の歴史を伝えている」として、今年土木遺産に認定しました。

 東京と信越を結ぶ重要道路国道17号にあるこの橋は1930年、道の両側に綱を組み合わせた「ポニートラス」といわれる構造で建設されました。現代では橋梁技術の発展によってこうした構造の橋は、あまり目にしなくなりましたが、現在残っている国内最長の貴重な橋とされています。

 江戸時代、中山道の新町宿と岩鼻宿との間を流れる烏川は、今よりも水勢が強く、船で渡りました。この「渡し」は時に川止めがあり、旅人は難儀をきわめたようです。岩鼻下町を川原に通じる坂道をおりていく風景の中に、往事の渡船場や木橋の面影を彷彿させます。

 烏川は季節になりますと、鮭が遡上してきました。特にこのあたりは川魚漁をする人の姿があり、坂上にそれを料理する宿がありました。今も川魚料理の看板を掲げるお店があります。また対岸の川原には、近年鮎簗がありました。こうしてみると柳瀬橋界隈は野趣あふれる川魚料理を食する空間であったことが、思われます。

 橋の下流から眺める柳瀬橋や上流に架かるJRの鉄橋の風景は、その背後に夕陽がありますと、橋と自然が織りなす上州の風景の象徴だと思わずにはいられません。現代の車社会とは違った橋風景を、物語っているように感じます。

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