父の背中から学んだ“商売のいろは”
有限会社矢嶋園
(2011年8月)
代表取締役・矢嶋新平さん、長女・矢嶋裕子さん(写真左)、次女・遠藤庸代さん(写真右)
創業50年を超える茶類卸小売業の矢嶋園。
矢嶋新平さんが静岡県牧の原で茶を栽培している農家と知り合ったのをきっかけに、下豊岡町でお茶屋を始めた。
当時流通し始めた「深蒸し茶」を高崎でいち早く扱い注目を浴びた。
生育環境で茶の良し悪しが分かるため、新平さんは一軒の農家と一つの製造元にこだわる。
ブレンド茶は扱わない、ほうじ茶も自店で煎る。作り手の見えないものは安心して販売できない、生産者・卸・小売・消費者すべてが納得してこそ商売が成り立つと考えている。
そんな新平さんの背中を見て育ったのが2人の娘さん。
長女の矢嶋裕子さんは、特に強いられたわけではなかったが、大学を卒業後すぐに家業を手伝い、その年の11月には自分一人で店をやりたいと言い出し父を驚かせた。中泉町に店を構え忙しいなか日本茶インストラクターの資格を取得するなど、お茶の勉強に励んだ。「商売が好きなんですね」と父の横顔を見ながら笑顔で答える。その後サラリーマンだったご主人も加わったことで、下豊岡の店を任されるようになった。
「まさか自分もお茶屋を始めるとは思わなかった」というのは次女の遠藤庸代さん。結婚後、子育てをしながらできる仕事を探したが、選んだのは実家の家業と同じだった。高関町に店舗併用の自宅を新築し、若い人も入りやすい雰囲気の店「茶葉家」をオープンさせて8年が経つ。
娘たちが自分と同じお茶屋であることに関しては「本人が選んだ道が、たまたま親と同じ商売だっただけ」と、つっけんどんに言い放つが、表情はうれしそうな笑みを浮かべている。
「娘たちには好きにやらせていますが、常に初心を忘れないようにと釘は刺しています。でも、時代の流れゆえの変化は受け入れるつもり」と表向きは厳しくしつつも、娘たちを気にかける父親の姿が印象的だ。
現在、新平さん夫婦は中泉町の店から娘たちを見守っている。
ちょっと一言
日本茶インストラクターの裕子さんが教えてくれた、これからの季節の日本茶の飲み方が「水出し」だ。茶葉に冷水を注ぎ時間をかけて待つだけという簡単な作り方だが、意外に知らない人が多い。茶の甘みを感じつつすっきりした口当たりは、蒸し暑い日にぴったりだ。
有限会社矢嶋園
住所:高崎市下豊岡町140-6
TEL:027-323-2836
営業時間:9時-19時(定休日/日曜日)