おじいちゃんが起こした会社を守りたい!
(2011年1月)
株式会社羽鳥鉄工所
「おじいちゃんの話をすると今でも涙が出てきます」と話す和佳さんは、大のおじいちゃん子として育った。戦地から無事帰還して起こした自分の会社や、組合の会合、地域の集まりなど何処にでも和佳さんを連れ歩き、お正月には決まってお年玉を預けに一緒に銀行に行った。ただただ可愛い孫を連れ歩きたかったのか、一人っ子の和佳さんに帝王学として何かを伝えようとしていたのか。
8年間勤めた金融機関を退職し、平成17年9月父親の武久さんが社長を務める羽鳥鉄工所に、入社した。総勢26名の鉄工業という男臭い職場唯一の女性は、経理事務や資材管理などを任されている。現場に業務の進行状況を確認してハッパをかけたり、誰かが風邪を引いたといえば様子を見に行ったりと大家族の中のしっかり者の長女のように動き回る。「だれも私を女性と見ていませんね」と笑う。歯切れのよい物言いやサバサバした性格が周囲を明るくする。
常務取締役の羽鳥和佳(わか)さん
仕事は手際よく切り上げ、余暇は習い事に励む。華道・茶道・ゴルフ・パン作り教室・ケーキ作り教室。知識や技術の習得が目的ではあるが「ゴルフは半端でなくへたくそ。でも教室で知り合った人などに誘ってもらってラウンドを楽しんでいます」と、様々な人との出会いが何より嬉しそう。一人っ子ということで、子ども時代は両親が意識的に外へ出すようにしたためか、何事にも物おじせずに新しい世界へ踏み込んでいく。
父も在籍した高崎青年経営者協議会(製造業を中心とした若手経営者の会)に入会し、結成50年目にして初の女性会員となった。現在も紅一点で、時々「女性は大変でしょう」と聞かれることもあるが、むしろ周囲の男性会員に気を遣ってもらっていると恐縮する。しかし、高崎まつりではだるま神輿に乗り怖くて大泣きした武勇伝(?)を残し、相談にのってくれる頼もしい先輩も数多く得るなど、持ち前の物おじしない明るさで、自分の居場所を広げる。
会社にあっては、ビルの免振装置、動く歩道、スノーマシン、製造ロボットのアームなど、見えない部分に使われている数々の自社製品への愛着は強く、社員あっての会社と周囲への感謝は尽きない。
“おじいちゃんが起こした会社を守りたい”という強い一念が、和佳さんの原動力となり、父の後に続く。
株式会社羽鳥鉄工所
高崎市上豊岡町571-2(八幡第二工業団地内)
TEL:027-343-5115