バスガイドから転身”看板”高速バス運転士
(2010年10月)
日本中央バス高速バス運転士 小渕 久美子さん
「バスさん、今日もよろしくお願いします」。この言葉で勤務モードにスイッチが入る。小渕久美子さんは、前橋〜池袋・新宿間を往復する高速バスの運転士。女性の高速バス運転士はまだまだ少なく、百十数人の運転士が勤務する日本中央バスにおいても、小渕さんを含めて二人だけ。バスの運転には大型二種免許が必要で、最初は路線バスで経験を積み、次に貸し切りバスを経て高速バスの運転が任される。
勤務は、水・木・日の週3日、午前7時20分に出社し8時に出庫する。復路便で午後5時45分に到着後、バスを洗車し6時30分には退社となる。ご近所さんが見たら主婦をしながら普通に働く会社員のようだ。
「会社には家庭を持つ主婦として勤務しやすい路線に配置していただいて感謝しています」と言う小渕さんに対して、青木総務課長は「高速バス運転士には、運転の適性はもちろん、気配りや臨機応変に対処する能力等が必要。そういった資質に恵まれ当社の看板運転士として活躍する小渕さんには、働きやすい環境を整えるのは当然です」と、絶対の信頼を寄せている。
結婚・出産・育児を経て、パートタイムのバスガイドとして日本中央バスに勤務するようになった。バスガイドは運転士を助け、乗客に気配りしながらの長時間の立ち仕事、早朝や夜遅くまでの勤務になることもあり、心身共にキツイ面も多い。それにもかかわらず、運転士に転身したきっかけが「運転士の大変さを見ていて、自分がバスを回送できたら助けになれると考えました」というから恐れ入る。
免許取得は大変だったが、バスに乗務した経験が活き、運転士のハンドルを切るタイミングを体感できたことが強みになった。数度の挑戦で試験にパスし、バスガイドとして培った乗客への気配りや接客サービス能力に、運転技術まで加わった稀に見る人材が誕生した。
車内清掃を徹底し、前列を優先席にし、お客さんに「ありがとうございます」の一言を添える。到着時間が遅れるときはアナウンスを入れ、乗客とともに安全・快適を運ぶ。
社内では“当たり前”のことだが、バスガイドの経験を活かした小渕さんの接客は他の運転士とはどこか違うようだ。女性のお客さんには好評で、小渕さんの乗務を問合せして乗車する常連のお客さんもいる。
男女区別のない職業だが、きゃしゃな体に洗車だけが少々負担。そこは男性社員のやさしいフォローに上手に甘えたりする。
日本中央バス株式会社
前橋市下佐鳥町455
電話:027-287-4400
高崎商工会議所『商工たかさき』2010年9月号