息子の夢を父が支える新ジャンルの料理店
(2009年11月)
中華茶房・茶音(チャオ)
高崎渋川線バイパスを渋川方面に向かい、イオンモール高崎を通り過ぎて2つめの信号の左側に、古い養蚕農家のたたずまいをそのまま残した「中華茶房 茶音」がある。ここは、榛名町で30年近く中華料理店を営んでいた須郷政美さんが、本来ならずっと続けたかった店をたたんでまで、息子の夢を一緒に叶えたいと始めた店である。
「本格中華やラーメン店ではなく、女性に気軽に味わってもらえるようなカジュアルな中華料理店をやりたかった」と、市内のイタリア料理店でチーフまで務めた息子の清志さんにはイタリア料理ではなく、誰の真似でもない新ジャンルの料理店への思いがあった。
店がオープンする2ヶ月前まで勤務があった清志さんに代わって、店舗物件探しから契約、リフォーム等を仕切ったのは政美さんだ。毎晩語り合った息子の描く青写真に添って、今まで経営していた中華料理店からの気持ちを切り替え、料理を彩る真っ白な洋食器を選ぶセンスのよさなど、抜群の柔軟性や感性を発揮した。
実際に店が稼働すると、教科書のない“創作ダイニング”は、父と子、スタッフとの間にイメージのズレが生じて空回りすることもしばしば。まったく違う環境でやってきた二人の料理人、ましてお互いに甘えのある肉親同士、厨房でぶつかり合うことも少なくなかった。
オープンして2年がたち、政美さんは「意見がぶつかるのはやる気のある証拠。息子のやる気を伸ばしてやりたい」と多くを任せるようになった。そんな父親に対して清志さんは、「この店は、ゆっくりくつろぎのひとときを過ごしてもらえる雰囲気作りを心がけています。しかし、父はお客様の回転を早くすることで利益率を上げることを飲食業の常識としてやってきた人。随分我慢してくれていると思います」と感謝する。
食費を切り詰める反面、ときには心ゆくまで外食を堪能したいという消費者ニーズを、しっかり受け止められる店づくりに挑む息子の傍らで「浸透するまで時間がかかる。あせりは禁物」と、政美さんの30年のキャリアが支える。
ちょっと一言
中華茶房・茶音は、カジュアル中華、飲茶点心に加え、デザートと本格中国茶にもこだわりのある店。農家の家屋や庭をそのまま活かした趣きがユニーク。ネット検索して訪れる人も増え、都内から「面白い店がある」という噂も聞こえてくるという。
中華茶房 茶音(チャオ)
代 表:須郷 政美
チーフ:須郷 清志
住所:高崎市冷水町132-1
電話:027-360-6502
高崎商工会議所『商工たかさき』2009年11月号