水琴窟の伝承を考え誰でも作れるように規格化
(2009年7月)
和風の庭にぴったりの埋設式水琴窟
代表取締役 林喜代弘さん
有限会社 林造園
水琴窟は日本固有の文化。今年5月に前橋市の姉妹都市バーミングハムへ林さんの水琴窟が海を渡った。海外の人でも設置できるように作り方も漫画で書いたそうだ。露出式で水も循環する家庭用「どこでも水琴窟」は家の中にも設置できる。
水琴窟とは、広辞苑によると「日本庭園で地中に伏瓶を埋めるなど空洞を造りそこに滴り落ちる水が反響して、琴の音色に聞こえる仕組み」。江戸の中期に庭師が考案し、手水鉢(ちょうずばち)や蹲(つくばい)の近くに設置し日本庭園の趣を高める造園技術の最高傑作のひとつと言われている。江戸時代に考案された造り方は正確には伝承されておらず、戦後にまぼろしの水琴窟発見というニュースが報道されるほどだった。
林喜代弘さんは、造園の仕事を始めたころから水琴窟に興味をもち、色々な瓶を手に入れ水琴窟造りを試行錯誤。「古来日本では、松風の音や水の音のようなわずかな余韻を純粋に鑑賞しようとするこまかな感覚を持っていた。この風雅が水琴窟を作らせたのでしょう」と林さんは水琴窟の魅力を語る。
どんなに素晴らしい物でも、伝承できなければならないと考え、反響する瓶の大きさ、水の落差、水滴の大きさ、瓶の中の水深を割り出し規格を作った。高さ75cm、幅55cmの瓶を使用し、水の落差を75cm、瓶の中の水深は7.5cmという最適な規格を探り出した。ここで一番問題になったのが、滴り落ちる水量と排水する水量とで水深を7.5cmに保つことだ。昔ながらの造り方では、瓶の底に石や土の層を造り排水するスピードをコントロールすることが至難の業。伏せた瓶に底をつけて、瓶の脇に排水の穴をあけ水深をコントロールした。排水した水を瓶の上にポンプを使って戻す循環方式も考案した。
釣鐘状の大きな瓶を作ってくれるところを探し、全国の焼き物の産地を訪ね、常滑の窯元と出会い水琴窟に適した瓶が完成した。瓶を地中に埋設する方法だけではなく、地上に露出してオブジェのように見せる露出式の水琴窟も考案し、洋風の庭にもマッチさせた。水琴窟を作る技術は群馬県の一社一技術にも選定された。
注文は同業者からが多い。個人が地中に埋めるだけで完成する「そのまんま水琴窟」も発売、技術を自分のものだけにしないで水琴窟を広めたいと考えている。
有限会社 林造園
代表取締役 林喜代弘
住所:高崎市棟高町600-16
TEL:027-372-0327
FAX:027-373-5273
URL:http://www.zouenya.com/
高崎商工会議所『商工たかさき』2009年7月号