高崎都心がマンション時代に突入

高崎都心がマンション時代に突入

高崎都心開発・人口増と意義

 高崎駅周辺を中心としたマンション建設が再び活発になっている。現在5棟のマンション建設が進行中で、過去数年と比べ、戸数の多い大型マンションが増えている。高崎駅周辺の立地が魅力となり、発売開始から短期間で完売となっているようだ。

 「駅近」の利便性に加え、高崎の都市の魅力や発展性など、将来性のある資産として評価されているという。

利便性と将来性でマンションブーム再燃

●1棟の戸数が多く大規模化

 平成17年度から平成20年度あたりに、年間500戸を超えるマンションが高崎市内で建設され、マンションラッシュとなった。リーマンショックで下火となったが、ここ数年でブームが再燃し、マンション計画をまちなかのあちこちで目にするようになった。

 高崎市によれば、平成25年度に計画が具体化着工しているのが5棟390戸。14、15階建てが多数で、前年以前に比べると1棟当たりの戸数が多く、大規模化の傾向にあるという。関係筋では、高崎に対するデベロッパーの関心は高くマンションブームは続くだろうと見ている。

●「高崎なら売れる」着工前に完売

 マンションは着工前にモデルルームを開設して売り出されるが、現在中心市街地で進行しているほとんどの物件は半年から1年で完売になったという。早い物件では、数カ月でキャンセル待ちとなった物件もある。以前は、完成後に入居していない部屋をモデルルームとしていたが、今は、着工する前に売り切れてしまう。

 あるデベロッパーは「都内では着工前に完売するのは当たり前だが、高崎で着工前に短期間で完売するとは考えていなかった」と語る。

 「ひとむかし前は高崎でマンションが売れるのかと考えられていたが、イメージが変わってきている。高崎は売れて当たり前になった」という。

 高崎でも購入層の動きが急激に早くなり、デベロッパーは「高崎なら売れる」と自信を持っている。

●選ばれる高崎の都市ブランド

 取材した㈱タカラレーベン、あなぶき興産㈱によれば、マンションの購入層は幅広いという。価格は2千万円台の後半から3千万円台が中心。高崎の場合、マンションの規模は1棟あたり100戸前後が妥当と見ている。都内と比較すれば価格は安く、間取りも広い。

 高崎市内での住み替え、市外県外からの転入、新幹線通勤者のUターン、Iターンや投資的な購入など購入動機は様々だが、高崎駅周辺の交通利便性やまちなかの暮らしやすさを求めている点は共通しているようだ。「駅に近いのではなくて、新幹線に近い」ことが重要なポイントになっている。高崎に全く地縁のない人も購入している。

 また「マンション住まいをするなら高崎」という都市ブランドの力も働いているようで、高崎への居住志向は強いという。駅周辺のマンションに絞って購入を考えており、郊外の一戸建てや他市の物件と比較する購入者はほとんどいないそうだ。駅周辺に複数のマンションが計画されているので、ショールームを回遊しながら選べるのも魅力になっているようだ。

 高崎駅の西口エリアと東口エリアを比較すると、西口エリアの購入者の方が、高崎の歴史や文化などを含めた「まちなか生活を楽しみたい」という傾向があるようだ。

●消費税の駆け込みではなかった

 消費税引き上げに伴う経過措置として、昨年9月までの契約は5%の旧税率で購入できるため、住宅業界は駆け込み需要の波に乗った。マンション完売も駆け込みの影響とも考えられたが、タカラレーベン、あなぶき興産とも10月以降も冷え込みはなかったという。

 「消費税引き上げが購入のきっかけになったのは事実だが、9月を過ぎて消費税が8%になるから購入を考え直すと言われたお客様はいなかった」。駆け込みではなく、まちなか居住の需要があったと考えられる。

●高崎の将来性が商品力に

 マンション販売のセールスポイントや購入の動機として、高崎の将来性への期待感が鮮明になっている。新幹線やまちなかの便利さに対する魅力は以前から高かったが、高崎駅周辺における都市戦略が具体化していることで、駅周辺一帯の付加価値を高めているようだ。

 駅東口の高崎文化芸術センターや西口エリアの新体育館建設などの都市集客施設、イオンモールの西口出店計画など、発展への期待感が吸引力となり、マンション購入を後押ししているという。特にイオンモールの出店には関心が高いという。ショールームの商談スペースには、高崎文化芸術センターや新体育館の計画が掲示してあり、セールスツールポイントの一つになっている。高崎玉村スマートICの開業や、北陸新幹線金沢延伸などもセールスポイントになっており、購入者はマンションの将来的な資産価値も見込めると考えている。

高崎都心がマンション時代に突入

●都市開発が相乗効果

 都市集客施設やイオンモールの計画によって、マンションデベロッパーの開発意欲が高まっている。高崎市の計画やイオンモールの出店が進む上でも、高崎駅周辺のマンション建設は重要となっており、開発の相乗効果が生まれているのが、今回の建設ブームの背景といえるだろう。

 デベロッパーは、開発に直接関わる用途地域(いわゆる線引き)やマーケティングに加え、市勢の動向や都市計画などについても周到に研究しており、民間活力を活かすには、都市ビジョンが不可欠だ。高崎市都市計画マスタープランは高く評価されている。高崎の積極的なまちづくり戦略が、多方面から注目されている証と言えるだろう。

 また、まちなみの景観も重要で、電線地中化や歩道整備など、行政が都市基盤整備に力を入れ、美しいまちづくりに取り組む姿勢にも着目しているようだ。

●増加するまちなか人口

 マンション建設がまちなか人口に与える影響を、江木町の日清製粉跡地で高崎市とタカラレーベンがマンション開発した「都心東地区再開発事業」で見ると、第1期工事は109戸、第2期95戸、これから入居となる第3期91戸を分譲した。

 平成17年12月末の江木町は、世帯数3,062世帯、人口7,160人だったが、平成25年12月末は、世帯数3,380世帯、人口7,501人に増加し、318世帯、341人が増加している。

 東小学校は、平成23年まで児童数約160人前後、学年1学級で推移してきたが、平成25年の児童数は212人になり約50人増加、低学年で複数学級になっている。

 また高松中学校は、平成17年が生徒数379人、全校12学級だったが、平成25年は生徒数531人で約150人増、学級数も17学級に増加している。

●中央駐車場跡地に「多機能型住宅」

 現在建設が進められている5棟の入居は約2年後となり、まちなかの人口増加が更に見込まれる。

 高崎市は市営中央駐車場に、高齢者や学生、外国人の住宅と介護サービス施設などを備えた「多機能型住宅」の整備を進め、中心市街地の活性化、多世代交流、福祉サービスの拠点としていく。事業予定者の医療法人社団山崎会の提案では、地上12階建てが計画されており、まちなか居住を促進する。この多機能住宅は平成26年度に建設工事に着手、平成27年度中の完成をめざしている。

ビジネスの拠点性が人口の基盤に

●ビジネス交流、都市居住の受け皿に

 高崎市の人口構造は、古くから交流性を持ち、ビジネスを基盤とした転入によって人口が増加してきた。転入転出を合わせると年間に約2万5千人が流動し、6割が県外となっている。東京、埼玉を中心とした首都圏が中心で、春の人事異動の季節には一度に8千人超の人が動いている。こうしたビジネスによる流動人口の受け皿として、マンションや賃貸アパートなどの需要が高崎には潜在する。

 また、県内からの転出入の差し引きを見ると、年間に約1,000人の転入超となっており、他市町村から高崎に移り住みたいと転入して来る人は、近年増加傾向にある。前橋市との転出入が最も多く、差し引きでは年間に約300人の転入超となっている。

 高崎市の人口はビジネス拠点性を基盤としており、マンション建設の動向と一体的にとらえる必要がある。東口エリアの都市集客施設や高崎玉村スマートIC周辺の産業団地などビジネス活性化を狙う戦略は、こうした高崎の特性を活かしたものと言える。

 首都圏と交わされる人口流動は、高崎に都市の多様性をもたらし、産業や文化芸術の発展につながる。マンション建設は進んでいるが、昭和50年代に新幹線開業に伴う東口開発が行われて以降、新規のオフィスビルが建設されていないので、今後はビジネス向けの都市整備が求められるだろう。

●中心市街地の空洞化に歯止め

 1970年代からモータリゼーションの進行、幹線道路の整備、地価の高騰、公共施設の郊外化などにより、中心市街地の空洞化が進んできた。まちなかの居住人口を回復させるのは全国的な課題であり、実際に成功している都市は少なく、中心商店街の衰退が懸念されて久しい。高崎の中心商店街を支えてきたのは「買い回り品」を中心とした広域的な買い物客であり、まちなか人口の増加がすぐに商店街の活性化に結びつくとは言えないが、まちの活力が総体的に上がることは間違いない。

高崎都心がマンション時代に突入

 東小学校や高松中学校の大幅な生徒増に見られるように、まちなかでは、30代から40代の子育て家族、働き盛りの世代が増えている。中心商店街にとっては、マンションに住む数百世帯の潜在客が増えることになり、買い物需要をまちなかに取り込んでいくための取り組み、魅力づくりが重要となるだろう。

 マンション購入者には都内への新幹線通勤者も多いようだ。高崎駅に近い保育園は「新幹線通勤する子育て家族を支えていくのも、駅周辺の保育所の使命だと考えている。新幹線通勤する母親もいるので、会社の始業に間に合う新幹線に乗れるよう、早い時間から子どもを預かり、帰りも遅い時間まで預かれるよう努力していきたい」と話す。子育て環境を含め、まちなかの生活基盤を整えていくことが、今後ますます重要となるだろう。

●旧市内・箕郷・群馬地域で人口増加

 日本の人口が減少し、群馬県人口も200万人を割り込む中で、高崎市の人口は、微減ながらほぼ横ばいで、旧市内・箕郷・群馬地域が堅調に伸びている。

 これまで、旧市内・箕郷・群馬地域の人口増加分が、他地域の減少分を上回り、市全体としても微増傾向にあった。

 平成18年から3回の合併が行われたが、合併時と平成25年10月の人口を比較すると、倉渕地域は716人減少し3,967人、箕郷地域は1,394人増加し2万854人、群馬地域は3,368人増加し3万9,936人、新町地域は181人減少し1万2,527人、榛名地域は1,179人減少し2万1,210人、吉井地域は488人減少し、2万4,888人、旧市内地域は3,400人増加し25万1,837人、合併時期が異なる為全体での増減比較できないが、高崎市全域の人口は37万5,219人となっている。

 群馬地域は幹線道路の開通やイオンモール高崎など生活利便性が高まり、人口が大きく伸びている。郊外地域では、一戸建ての需要が中心となっている。新しく着工した住宅では、分譲や一戸建てなど持ち家が好調で、群馬県全体でも大きな伸びを示している。平成25年4月から12月までの累計は、前橋市が最も多い2,186戸、次いで高崎市が2,173戸。高崎市は9月までやや低調だったが、10月の着工数が伸び、この3カ月は県内最多となった。

 高崎市内では10月から分譲住宅が増えており、4月から12月までの累計で市内の分譲住宅は613戸となり、県全体の分譲住宅数1,835戸の約3分の1を高崎市が占めている。

中心市街地の都市力は高崎全体を牽引

●人口増加地域は年齢層も若い

 大きく見れば、近年、都市基盤整備が行われ開発の手が入っている地域は人口が増加していると言え、市内で地域差が生じている。

 支所地域だけでなく、中心市街地においても地区の状況に差が出ている。地域の高齢化率を見ると、平成25年6月現在で、高崎市全体の平均は24.3%。倉渕地域が37.8%で高崎市内で最も高いのは、中山間部として仕方がないと言えるだろう。次いで市街地の北地区が31.3%、中央地区が28.9%となり、中心市街地の高齢化率はきわめて高い。東地区は22.0%で市街地の中では低く、マンションが建設され、地域が若返っているようだ。郊外では、佐野地区が19.3%、群馬地域の堤ケ岡地区は17.4%で、人口増加地域は年齢構造が若いことが示され、地域の人口増加と高齢化率も密接な関係がある。

 一方、まちなかに高齢者が多いことは、安心して住み続けられる環境や地域と人とのつながりが失われていないなど、暮らしやすさを示すものとなっている。まちなかの暮らしやすさを求めて中心市街地のマンションを購入する需要もあり、高崎市が中央駐車場跡地に計画している多機能住宅に設置する高齢者支援サービスなどは重要になってくるだろう。

●行政の貴重な自主財源

 高崎市も高齢化が進行しており、18歳から65歳までの生産年齢人口の減少に伴い、住民税収入は減少していくことになる。自主財源となる税収のうち、住民税の減少分を補えるのは現在の税制では固定資産税で、固定資産税収入では、中心市街地は大きな比重を持っている。

 高崎市が質の高い行政サービスを提供し、健全な財政体質を維持するためには、財源を確保する必要があり、中心市街地の活性化は固定資産税に結びつく。土地の高度利用をはかるマンションは固定資産税収入でも重要だ。

●高崎駅周辺エリアの重要性

 少子高齢化、人口減少社会となり、人口は都市間、地域間で奪い合うと言っても過言ではない。パイは限られ、ある場所の人口が増えれば、他が減少する。少子化対策が効果を発揮し、出生率が上がって年齢ピラミッドのバランスが回復するようになるには、数十年単位の時間が必要とも言われる。少なくとも、5年、10年で回復する見通しは持てない。高齢化率や人口減少を抑止するための施策として、長期的で巨額予算を伴う基盤整備を高崎市の460平方キロの全市域で行うことは不可能であり、地域の特色を生かした発展のためには総花的な対策を行っても効果は期待できない。

 高崎の活力を生み出す拠点、高崎が踏ん張る拠点として中心市街地や各地域の核となるエリアが必要であり、そこに資源を集中させることによって、都市全体を牽引していく力が生まれる。「高崎駅周辺の一人勝ち」という声が聞こえることもあるが、このエリアを防衛できずに衰退すれば、高崎市全体が死に瀕することは目に見えている。マンション購入者の動機にあったように、高崎には「ここに住みたい」という都市ブランドが形成されている。人口は、更に規模のメリットを生み出す。高崎駅周辺に蓄積された都市力は、高崎市のみならず、群馬県全体についても重要な役割を担っている。

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