「雷舞フェスティバル」10年の舞台裏

「たかさき雷舞フェスティバル」が今年、第10回を迎えた。「轟くこと雷鳴の如く、激しきこと稲妻の如し」を合言葉に高崎まつりから生まれたダンスパフォーマンス「雷舞」は、高崎を盛り上げる人気イベントとして定着している。

高崎まつりの一部門から単独フェスに

「雷舞フェスティバル」10年の舞台裏第1回 雷舞フェスティバル

 雷舞は、本市独自の特色を出し多くの市民が高崎まつりに参加できるよう平成10年の高崎まつりの1部門として、高崎青年会議所が中心となって企画され「雷舞」として始まった。「雷舞」は若者を中心に浸透し、高崎まつりで一、二を争うほどの観客を集めてにぎわうようになった。雷舞登場から7年目の平成16年に高崎まつりから切り離し、単独開催することになり、同年10月2日にもてなし広場で「第1回雷舞フェスティバル」が開かれた。

 雷舞が始まるきっかけとなったのは、高知の「よさこい祭り」をもとに、札幌で北海道民謡の「ソーラン節」と合体させた「YOSAKOIソーラン祭り」が平成4年に始まり、20万人を集める人気イベントとして人気を博してたことから、「よさこい祭り」の鳴子踊りをルーツとするダンスパフォーマンスイベントが大ブームとなり全国に広まったことによる。札幌の「YOSAKOIソーラン祭り」は、参加者3万人、観客動員200万人の大イベントになっている。

 第1回の雷舞フェスティバル開催に合わせて、八木節をアレンジした曲とだるま型の鳴子「だる子」が用意された。小中学校、幼稚園・保育所園、町内会などで参加してもらい、地域の活性化に役立てるとともに、市外県外からの参加・誘客で高崎の知名度アップにつなげていくねらいだった。また雷舞フェスティバルでは、市民への定着を狙い「総踊り」の普及をめざし、運動会に取り入れた小学校もあった。

高崎の名物イベントに成長

「雷舞フェスティバル」10年の舞台裏全国で活躍する「関西京都今村組」は久しぶりの登場

 第1回雷舞フェスティバルは40団体、約1,000人が出演し、その半数は市外で埼玉・新潟・東京など県外から5団体が参加した。幼稚園、小中学校、本格的なダンスチームなど幅広い層が集まった。高崎まつりで実施してきた実績もあり、演技のレベルは高く、見応えのあるイベントとなった。

 回を重ねると、もてなし広場のメイン会場に加えてまちなかにもサテライト会場が設けられ、商店街を舞台に雷舞パフォーマンスが繰り広げられていく。雷舞フェスティバルだけでなく、年間を通して様々なイベントでダンスチームが会場を盛り上げるようになり、買い物客や一般市民が目にする機会も増えて雷舞は市民に浸透していった。

 今回の雷舞フェスティバルの見どころとなった「関西京都今村組」は第1回から4回まで特別ゲストとして招へいされた。主宰する今村克彦さんは、この分野のカリスマ的な存在で全国的に活躍している。今村さんは、問題を抱える子ども達とダンスを通じて向き合い、彼らの迫力ある演技は、全国で感動を呼んでいた。

 「よさこいソーラン」系ダンスイベントは、全国でも人気があり、雷舞も集客力のある高崎の名物イベントとして育ってきたが、全国的には後発だったため、高崎が抜きん出るには情報発信や会場規模など、更なる取り組みが必要だ。また、高崎には地域伝来の民謡や踊りの土壌が希薄で、すそ野の広がりも課題だ。

雷舞10周年を迎えて

「雷舞フェスティバル」10年の舞台裏矢嶋実行委員長

 第10回雷舞フェスティバルが行われた10月20日の日曜日は、終日強い雨にみまわれた。「雨への対応で10周年を思うひまがありませんでした」と実行委員長の矢嶋真さんは振り返る。「今年で10回目を迎えることができ、参加してくれるチーム、協力企業、会場にかけつけてくれる皆様に感謝しています」と、開会あいさつの短い言葉の中に思いを込めた。

 午後には雨が上がる予報に反して、一日中雨となったが、10周年記念で来高した関西京都今村組を含め、参加した36団体のダンスチームは雨に負けない熱い演技を披露した。富岡市長は「昨日、高崎駅西口で行われた前夜祭は見ていて鳥肌が立つイベントだった」とあいさつで雷舞の熱気を語った。

雷舞フェスを次のステップへ

「雷舞フェスティバル」10年の舞台裏雨の中、熱気あふれるパフォーマンスをみせる「襲雷舞踊団」

 「雷舞も10年がたち、商店街の活性化やまちづくりへの役割はある程度達成できた」と矢嶋さんは考えている。東日本大震災以降は、被災地のダンスチームを招へいし、復興に向けた力強い演技が披露されている。国際色を豊かにしようと、昨年から台湾からの参加チームを迎えている。会場では、大学生の企画で来場者に高崎の食文化や飲食店を紹介するマップが配布されるなど、広がりのあるイベントに育っている。

 フェスティバル以外でも、年間を通して各種イベントのアトラクションとして雷舞パフォーマンスはお馴染みとなり、矢嶋さんが主宰するダンスチーム「襲雷舞踊団」でも年間50回ほどイベントでダンスを披露している。

 しかし、「市民に飽きられてきているのではないか」といった心配もあるそうだ。雷舞のダンスパフォーマンスは盛り上がるので、アトラクションとして安易に使われてきたのではないかと、割り切れない思いを感じることもあるそうだ。

 現在のステージ進行では、雷舞フェスティバルに出演できる団体数は限られ、開催規模を拡大するためには、違った手法を導入する必要があるそうだ。10年の節目を迎え、矢嶋さんは雷舞フェスティバルを更に飛躍させようと考えている。「市民参加を大切にしながら、芸術性やエンターテイメント性を高め、全国から注目される高崎ならではのフェスティバルをつくっていきたい」と意欲にあふれている。

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