地域メディア「ラジオ高崎」の新展開
パソコン+タブレット+スマホへ情報発信
ラジオ高崎は平成9年春に産声をあげた。16年前の開局当時と現在とでは情報通信を取り巻く環境は劇的に変化している。インターネットはより高速になり常時接続が当たり前、情報を受け取る端末も、パソコン主流からスマートフォンやタブレット型PCなどの携帯情報端末へ主役が移り変わっている。また、Twitter、Facebook、LINEなどのソーシャルネットワークサービスが次々に登場し、世代を超えて人間関係の構築や情報収集に活用されるようになった。
こうした変化に対応するように、ラジオ高崎もこれらの携帯情報端末への番組配信や地域情報の発信など、新たな展開に乗り出した。
「web radio」事業を本格的にスタート
昨年度から手掛けていたラジオ高崎のインターネット放送が本格的にスタートした。「ラジオ高崎web radio化」と名付け、FM電波のみで届けていた放送を、インターネットを通じて、聞き手に届けようという取組みである。
これには2つの狙いがある。まずは、現在、多くの人にとってラジオ以上に身近な存在となっているモバイル端末(スマートフォン・タブレットなど)やパソコンでの聴取を可能にすることで、改めてラジオ放送の価値や存在感を認識してもらうことである。日本でFM放送がスタートして既に40年以上が経過。悪くいえば古いメディアとも感じられるFM放送を最新のデジタルツール上に乗せることで、ラジオの面白さを知らない若い世代にも新しいメディアとして楽しんでもらおうという狙いである。また、現在FM放送を楽しんでいる人でも、カーステレオ以外にラジオ受信機を持たない人も多いという現状を受け、パソコンやスマートフォンで手軽にラジオを楽しんでもらう側面もある。
そしてもう1つは、世界中で聴取できる環境を整え、高崎の情報や空気感を高崎市内はもちろん全国へ発信していくことである。昨年秋からラジオ高崎が制作・放送している、元・BOØWYのベーシスト松井常松さんのレギュラー番組「SOLLID SOUNDS」は、全国各地のファンから多くのメッセージが届く全国区の番組となっている。また、ラジオ高崎の電波は20Wと制限があり、高崎市内でもラジオ高崎を聴取し難い地域が存在する。そういった場所でもモバイル端末とインターネット回線があれば、ラジオ高崎の放送を聞くことができるようになったのも大きな進歩である。
スマホ向けのアプリで手軽に聴けるのが魅力
国内でスマートフォンやパソコンでラジオを聞くサービスは数年前から登場し、代表的な「radiko」は2010年にスタートしている。在京・在阪の民放局と㈱電通の主導で、コミュニティFMを除く全民放の参加を目指しているという。ラジコのアプリケーションは正にラジオそのもので、エリア内のラジオ局を一覧から選んで聴取するという仕組みである。
コミュニティFMであるラジオ高崎は専用のアプリ(無料)のダウンロードが必要になる。ダウンロードしてしまえば、「ラジオ高崎」のアイコンが画面上に出現するので、それをタッチして起動、画面上に現れる大きな再生ボタンにタッチするだけで簡単にラジオ高崎の放送を聞くことができる。誰にでもできるシンプルな操作は魅力的だ。地域との様々な関わりの中で市民との関係を構築し、聞き手を開拓し続けているラジオ高崎にとって最適のアプリといえよう。
高崎観光協会と連携し、まちなか情報を発信
ラジオ高崎のモバイル端末向けアプリは動画配信やスマートフォン用のサイトを閲覧する機能を備えている。高崎観光協会がスタートした「TAKASAKI THE LUCKY TOWN PROJECT」と連携。ラジオ高崎のコンテンツ力を活かしてまちなか情報を中心としたスマートフォンサイトを制作することとなった。
ラジオ高崎のアプリにも特定のサイトを簡単に閲覧する機能があるため、「高崎を楽しむ為のアプリ」と改めて位置付け、観光協会のまちなか情報サイトの閲覧、ラジオ高崎の放送の聴取、イベント等の動画受信など、高崎に関する多彩な情報を一元的に収集できるものとなっている。これにより、高崎で暮らす人々の必須アイテムとなる可能性がある。「TAKASAKI THE LUCKY TOWN PROJECT」は今夏の本格スタートを目指しており、高崎まつりの動画中継などを計画している。
ラジオ高崎の開局当初のキャッチフレーズに「高崎を伝える」、「高崎を拡げる」、「高崎をわかりやすくする」というものがあった。開局後16年を経過し、スマートフォンの活用で当初の"志"がより具体的に展開できるのではないかと期待されている。
地域防災情報の発信で真価を発揮
防災情報は市民生活にとっていざという時に必要な情報だ。ラジオ高崎も防災情報の発信は最優先事項であると考えている。今回の「web radio化」によって広域で情報を受け取れるということは防災情報の発信にとって大きな意義を持つ。
山間部のラジオ難聴地域でも、携帯電話の電波が届いていれば、ラジオを受信して災害状況を確認することができる。また、仕事やレジャーなどで市域を離れた時に災害が発生した場合でも、高崎の状況を逐次確認できる。
ラジオ高崎の放送を聞くスマホ向けのアプリ
2011年の東日本大震災にて大きな役割を果たしたと評価されたラジオ高崎。緊急情報の発信はもちろん、トークの温かさ、音楽の力による癒しなど、ラジオ放送の力を多くの市民が楽しんでいる。この魅力を埋もれさせずに、最新のデジタルツールでも手軽に楽しめるようにしたことは非常に意義がある。
開局17年目に入り、新しいステージに進んだラジオ高崎の試みは、今後の高崎市民にとってより身近で重要な存在となっていくだろう。