高崎の“もてなしの心”

全国大会やスポーツイベント、映画・CM撮影を支えるまち

高崎の"もてなしの心"必勝だるまに目を入れる「HONDA」陸上部員とホテルスタッフ

 元旦に行われたニューイヤー駅伝は、コースとなった市街地の沿道で多くの人がトップレベルの選手の力走に見入ったことだろう。九蔵町の"パークイン高崎"の前では、本田技研工業㈱(ホンダ)の応援団がのぼりと小旗を振って、チームの応援に声を枯らしていた。そこには、ホテル関係者や毎年欠かさず沿道に立つという近隣の住民たちも、"HONDA"の小旗を振って応援していた。

 高崎は群馬最大の都市として、さまざまな全国レベルのスポーツ大会や会議が開催される機会も多い。そのほとんどは宿泊や市内移動を伴うもので、宿泊業界をはじめとする来県者と接する機会の多い企業には、高い"もてなしの心"が求められる。"パークイン高崎"はそれに見事に応えた例と言える。

 現在、高崎で行われる全国規模の大会、映画やテレビのロケなどの関係者にも、受け入れる側としての心構えや実際の現場のお話を伺った。

選手に大好評、ホテルスタッフの気配り

高崎の"もてなしの心"ホテル「パークイン高崎」前で横断幕と小旗でニューイヤー駅伝を応援する近隣住民とホテルスタッフ

 全国の予選を勝ち抜いた実業団37チーム259人が出場したニューイヤー駅伝。チームスタッフ、テレビ中継スタッフ、各チームの応援団など数千人が高崎や前橋など群馬県内各地に宿泊していると思われる。選手の多くはスタートとゴールのある前橋に宿泊しているが、JR東日本やホンダなど、交通の利便性から高崎を選択するチームもいくつかある。

 ホンダは、数年前から"パークイン高崎"を利用している。陸上部マネージャーの永井順明さんは「高崎はチームのある狭山市から一時間ほど。下見やホテルとの打ち合わせに来るにも交通の便がよく、移動時間も短いので選手にも負担は少ないですね」と高崎を選んだきっかけを話す。

 また、ホテル側の受け入れ体制も選ばれる理由にある。「ワンフロアを貸切にしてくださるので、器具の保管など廊下を含めて使え便利です。また、毎年壮行会を開催してくださるので選手も喜んでいます。必勝祈願のだるまに目を入れたり、お守りをいただくと気合が入りますね」とホテルの対応にも満足し、毎年利用している。

 パークイン高崎の野辺支配人は「レースに集中していただくためにも、チームの要望にはできるだけ応えたいです。宗教的な理由がある外国人選手の食事には気を付けています。選手だけでなく、ホンダの応援団の皆様にもご宿泊いただいていて、レース当日はホテルの前で社員も一緒に応援しています」と話す。

さまざまな全国大会やイベントに 満足できる関係業者の対応

高崎の"もてなしの心"シンフォニーロードで、映画「相棒―劇場版」を撮影

 たかさき雷舞フェスティバルには県外から20チーム以上が出演する。また、高崎マーチングフェスティバルも100名近い大所帯を筆頭に多くの県外バンドが出演する。日本選抜車椅子バスケットボール選手権大会にも県外から15チームが参戦。これらの恒例イベントだけでも毎年多くの人が高崎に宿泊している。平成20年に開催された全国高等学校総合文化祭(ぐんま総文)では5日間で延べ5,000泊以上の需要があり、期間中は市内のホテルは満室状態だった。これらの経済効果はかなりのものであっただろう。

 また、高崎フィルム・コミッションを通じた映画やドラマ、CMなどの撮影隊も年間を通じて高崎を訪れている。撮影隊は作品により人数や宿泊数もまちまちで、要望には柔軟な対応が必要となる。宿泊関係者は「ロケ隊はマイクロバスや機材車などの大型車両で来ることが多いので、駐車場の確保が必要です。また、撮影先での食事のゴミ処理なども引き受けています」と話す。高崎市観光課のフィルム・コミッション担当者は、「年間400件ほどの相談があり、実際にロケが行われているのは70本くらいです。撮影は朝早かったり、夜が遅かったりするのですが、宿泊や弁当などの関係業者さんがしっかり対応してくださっているようです。あえて誘致活動はしていませんが、高崎が選ばれるのは、近いだけでなく、受け入れる側のもてなしの心構えがあるからだと思います」と話す。

"もてなしの心"を発揮するためにこれから必要なこと

高崎の"もてなしの心"中央銀座で、映画「あしたのジョー」を撮影

 今後、全国規模の各種大会や会議などのイベント誘致が検討されているが、それには先行する多くの都市と競っていかなければならない。これまで以上に高度で多岐にわたる受け入れ体制づくりが必要になるだろう。

 高崎競馬場跡地に平成29年度完成予定のコンベンション施設は、コンサートや展示会用の1万6,000平方メートルの展示場と2,000名収容の国際会議場が想定されている。しかし、これらの宿泊客を受け入れるホテルの数は今のままでは十分とは言えない。また、イベント誘致を進める都市では、支援策として開催資金や宿泊への助成や貸付、バスやタクシーの提供などを打ち出している。もちろん、開催地の魅力がイベントへの参加意欲を掻き立てることにもつながるので、観光資源の掘り起こしやさらなる磨き上げが必要になる。

 将来的には高崎市は集客都市として、多くのお客様をお迎えすることになる。今後はハード面とともに、今ある"もてなしの心"をさらに成長させ、充実させて、「もてなしのまち、高崎」として確固たる地位を築いていく必要がある。

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