使える!タブレット活用で広がるビジネス
手軽な情報機器として注目を集めているスマートフォン、タブレット。
特にタブレットは昨年後半から出荷台数が急激に増加しビジネスでの利用も進んでいる。高崎商工会議所でも昨年9月からタブレットを触って楽しく学んでもらおうと企画した「タブレット入門」の講習会が好評となっている。使ってみると「意外に簡単でおもしろい」と受講者の声。会員事業所の中にもタブレットを業務ツールとして活用する動きが加速しており、同所のセミナー受講者もアイデアを凝らして仕事に活かそうとしている。
タブレット端末は軽くて便利
「タブレット入門」の講習会
タブレットはA5版サイズ程(7インチから10インチ程度)の大きさで軽くて持ち運びも便利、画面を指でなぞったり触れたりして簡単に操作できるので使いやすく、携帯電話回線や無線LANを使ってどこでもインターネットに接続できる。ノートパソコンよりも起動が早く、バッテリーの持ちもよい。価格もノートパソコンよりも安価で、スマートフォンとノートパソコンの中間のような存在だ。
写真、動画の撮影機能は標準で装備し、アプリと呼ばれるソフトをダウンロードすることでワープロや表計算のデータを閲覧できたり、プレゼンテーション用のソフトも充実し、しかもアプリの価格は数百円からと極めて安価だ。
数年前にタブレットが出始めた頃は、個人使用の趣味的な要素が大きかったが、通信回線の高速化や通信料金定額制、クラウドコンピューティングの普及など出先で自由に情報にアクセスできることや、写真や動画を使ったプレゼンテーションが行えるなど、ビジネスへの応用が広がっている。保険・金融業務では、これまでいくつかのモデルパターンを紙に印刷して顧客に内容を検討してもらっていたが、タブレットを使えば顧客の目の前で条件を入力し、掛金や返戻金をリアルタイムに見てもらえるので普及が進んでいる。
市販のキーボードと組み合わせた利用も可能
国内調査会社のまとめでは、携帯電話の90%がスマートフォンへと移行している。一方タブレットの今後の出荷台数はパソコン出荷台数の約70%にも及ぶと予測されている。スマートフォンとタブレットは、今後も成長分野として期待され、各社が激しい競争を展開している。タブレットは、これまで10インチ型が主流だったが、今年は価格も安く片手で持てる7インチ型の普及が伸びると予測されている。
スビードアップで広がるビジネスチャンス
スマートフォンやタブレットのビジネス活用を提案している富士ゼロックス群馬㈱はソフトバンクモバイルと提携してお客様に合った提案や導入サポートをしている。「ソフトバンクモバイルによると、全国で既に5万社のお客様にiPadが利用されている」と話す。
主な利用方法は、まずメールやスケジュール管理、営業資料・会議資料のペーパーレス化で、実際に効果を検証すると、経費節減や売上増につながっている企業が多いという。より高度な利用として営業支援ツールの導入や受発注業務にも活用している。
今まで大量に持ち歩いていたカタログや資料を電子化することで、顧客に適切な情報をスピーディに提供ができ対面での商談や接客がスムーズになっている。特に動画を使ったプレゼンテーションは、紙では伝わらなかった商品の魅力がアピールできる。製品や技術、サービスの説明がわかりやすく訴求力も高いようだ。顧客の注文もインターネット回線を利用し会社のデータベースにアクセスし在庫をすぐに確認できるので、「帰ってから調べます」が無くなり、ビジネスチャンスを逃さない。
「何をやりたいか」が重要
富士ゼロックス群馬のマーケットサポート部高山課長は、「規模の大きな企業や資金に余裕のある企業ばかりが高度な利用をしているのではない」と話す。要はアイデア次第だ。
テレビ会議や現場との連絡など、1対1の会話であれば無料のアプリで行える。また、パソコンで作成した資料や図面を電子化してタブレットを利用すれば客先での商談に活用できる。さらに必要な環境を整えれば、出先から自分の机のパソコンにアクセスし仕事が進められるようにもなる。活用シーンに合ったアプリの組み合わせでビジネスに使える道具となる。
また、利用が進んでいる一因は、「セキュリティ対策」と指摘する。タブレットはインターネット経由でサーバーにアクセスして情報を閲覧することで、タブレット本体には顧客情報や企業情報を記録しない利用が可能だ。また不正利用を防ぐため、データの暗号化や、遠隔操作で端末を使用できなくしたり、データ消去ができるので、紛失や盗難による情報流出のリスクが少ない。このような理由からタブレットは、ノートパソコンやUSBメモリに比べ、セキュリティの高い「持ち歩きツール」と言える。
富士ゼロックス群馬株式会社
社内で情報を共有し対応迅速
顧客に合ったタブレットの活用を提案している富士ゼロックス群馬は、自社でも2年前からタブレットの導入を準備し、昨年9月から本格的な活用を全社的に実施した。高山課長は、タブレットの全社活用はIT企業としてお客様に提案していることを、自社の部門長、マネージャーに実践してもらう『言行一致活動』と位置づけている。同社ではタブレットを活用したシステム構築を顧客に提案しており、"紺屋の白袴"を改善していく取り組みのようだ。
月3回開かれる定例の幹部会議では、これまで紙の資料を配付していたが、一人1台のタブレットを渡し、資料は画面で閲覧するペーパーレスの仕組みに変えた。高山課長は「会議の資料は、最新の経営情報が必要なので、会議の直前に作り変えたり、差し替えたり準備が大変だった。作業の手違いも発生したり、社内資料を作るために残業したり、経費のロスは資料の用紙代だけではなかった」と言う。「お客様に課題解決を提案しているのに、自社の幹部がITを使いこなせないようでは困る。言うことと行動を一致していきたい」と実施に踏み切った。
会議資料は、サーバーにアクセスして見てもらう。資料をコピーする煩雑さから担当者は開放され、正確、確実に情報が伝達できるようになった。
わかりやすい提案で一歩先を行く
顧客への提案も紙ベースの資料の場合、他社のパンフレットと同じで、どこのメーカーも同じような印象を与えがちだった。また、営業マンはもっと商品イメージをしっかり伝え、顧客の要望にすぐに応えたいと考えていた。しかし、実際の商品や資料を全てカバンに入れて持ち歩くことはできない。
「タブレットで、顧客の要望に応じた資料や動画を見せることで、商品のイメージをリアルに伝えられるようになった。特に動画を使うと効果的に商談を進められるようです」。
運用にこぎつけるまでには、情報管理などセキュリティのルールづくりも重要で、商談に使う資料づくりも営業の場面を想定し実際に検証しながら進めてきた。「営業スタイルが変わり契約率も上がっている。一人ひとりが頭を働かせ、工夫するようになった」と手応えを感じている。
株式会社群馬イートレンド
社内で情報を共有し対応迅速
地域のポータルサイト「だんべー」を運営する群馬イートレンドの柴田社長は、持ち歩き用はノートパソコンからタブレットに乗り換え愛用している。「本体価格の安さ、起動時間が早くストレスがない」とメリットを挙げる。ホームページのデザインを顧客に説明するのもタブレットを使い「ウケがいいですね」と笑顔を見せる。
群馬イートレンドは、グーグルがインターネットで無料提供しているカレンダー機能を使い、スタッフ全員のスケジュール管理を行っている。「出先からでも顧客との打ち合わせや撮影のスケジュールが組みやすい」と便利に使いこなしている。スタッフの営業日報もクラウド環境を使って、入力・閲覧ができるそうだ。
情報発信の可能性が広がる
柴田社長は、ホームページの新着情報などの情報更新にタブレットが使いやすいと、顧客に勧めている。タブレットで商品の写真を撮影し、紹介文を加えて情報を更新してもらえば作業は簡単だ。簡単だから更新の頻度も上がり、情報はいつも新鮮でアクセスアップにもつながる。「今まで、パソコンの作業が煩雑と感じていたお客様がタブレットの手軽さを実感している。タブレットの利用者は増えている」と言う。「タブレットで情報発信のすそ野が広がる」とその可能性を実感している。
また、タブレットが、パソコンの機能を全てまかなえるわけではなく、「データ入力が中心となる作業やしっかりとした資料作成にはパソコンを使ったほうが効率が良く使い分けている。しかし、徐々にパソコン、タブレット、スマートフォンの境目が無くなってきているようだ」と話している。
善如寺自動車株式会社
やってみてよかった
「自動車保険の契約内容をお客様に説明するため、タブレットを1台購入してみた。ところがほとんど使わずに置いたままになっていました。しかし、高崎商工会議所のタブレット入門講習を知り思い出したように参加してみたところ、興味がわくと同時に応用できそうだ」と考えるようになったそうだ。
仕事でパソコンを使っているので、操作の流れはすぐに理解ができた。思ったよりも簡単で「やってみてよかった」と会議所の講習会を評価していただいている。
写真やホームページ閲覧でも充分
写真が簡単に撮れるので車体のキズや故障箇所を撮影し、タブレットでお客様に修理前の確認をしてもらったり、オイルの汚れを写真で見てもらったりと、善如寺自動車はタブレットの標準機能を使ってお客様の満足度アップにつなげている。
客先でのサービス紹介では、特に新しく資料を作らなくても現在持っている自社のホームページにアクセスして、コンテンツを見ながら説明できるので便利になったそうだ。今後は同社のオススメ商品「エコ整備」のエンジン洗浄の様子を動画で撮影し、動画サイトYouTube(ユーチューブ)に投稿して見てもらえるようにしていきたいと考えている。
「独自性と工夫次第で便利に使える」と満足そうな様子。情報を活用したいと「頭ではわかっていたが、なかなか手が出せなかった」という善如寺自動車。タブレットを使ったら「本当に簡単だった」と実感している。
「タブレット入門」の講習会
ビジネスシーンで進むタブレットの活用、利用方法に関してはパソコンとの使い分けが現在の主流のようだ。インプット(データ入力)などの作業はキーボードが使いやすいパソコンを利用し、一方、対面での接客や商談などの閲覧には、画面がきれいで携帯性に優れたタブレットが適している。
高崎商工会議所のパソコン研修で、パソコンは初めてという受講者に、タブレットを紹介すると指で触って操作する使い方は簡単でパソコンよりわかりやすいとの声を聞く。タブレットは難しい道具ではないので、自ら積極的に触れて自社でのタブレットの活用方法を探ってはいかがですか。