エキサイティングなイベント都市高崎

質・量ともに全国一 戦略的なイベント連携がこれからのカギに

エキサイティングなイベント都市高崎

 商都高崎は、年間を通じて多彩なイベントに彩られている。大小さまざまなお祭りや商業イベントを始め、音楽や伝統文化を発信し"まちのにぎわい"を創出している。まちなかで年間に行われているイベント数は公的な主なものだけで約90件あり、延べ日数は130日以上。週末はまちなかのどこかで必ずと言っていいほどイベントが行われており、秋の集中期などは、特ににぎやかだ。

 高崎市民は、こうしたまちなかの様子を当たり前のように感じており、また、統計に現れることがないのであくまで推測になるが、高崎ほどイベントが頻繁に行われている都市は少なく、高崎のイベントは質、量ともに全国トップクラスではないだろうか。その多くは市民主体の実行委員会が企画運営する「高崎方式」に大きな意義がある。今回の特集では、高崎で1年間に行われた"まちなかイベント"を振り返り、さらに効果を上げるための課題を考えてみる。

エキサイティングなイベント都市高崎えびす講市

一年を通じてイベントを開催

■年間を通じてイベントを運営する関係者に拍手

 本誌がまとめた高崎の年間イベントカレンダー(8・9頁参照)を見ると、年間を通じてほぼ毎週、何らかのイベントが開催されている。毎月開催される「高崎人情市」、「たかさき昼市」、「高崎田町骨董街道」、季節を代表する「スプリングフェスティバル」や「高崎まつり」、「えびす講市」などは毎年、市民が開催を待ち遠しく感じているイベントだ。

 高崎まつりなどは、それ自身がまちなかに出かける目的になるが、多くのイベントは、買い物や飲食などのついでにまちを回遊させるためのプラスアルファとなる仕掛けで、ワクワク、ドキドキとした高崎のまちの魅力を演出する。しかも、高崎ではまちなかイベントが増加している現象がある。富岡賢治市長の「エキサイティングなまちづくり」宣言が、今まで思いとどまっていた人たちの背中を押し、遠慮がちだった心の縛りを解き放ったのかもしれない。

 高崎のまちは魅力がいっぱいで、楽しいことに出会うことができる。「通りのテントで物産を売っている」、「ストリートライブの音楽が聞こえる」、「よくわからないけど人がいっぱいいるから寄ってみよう」。来街者にそんな発見をして欲しくて、およそ自分の利益に直接結びつかないイベントの運営に手弁当で汗を流している人たち。失敗もあるだろうが、けっして諦めず地道な努力を重ねている。まず、第一にこうしたイベントを企画運営する多くの人たちに喝采とエールを贈らなければならないだろう。

 もう一点、見逃せないことは、まちなかの通行者が減っているというものの、イベントには人が集まり、出店者にある程度の売上が見込めるだけの集客があることだ。県内最大の集客施設「高崎駅」を中心に、高崎の集客力は持続されており、諦めずにまちづくりの努力を継続している成果と言えるだろう。

エキサイティングなイベント都市高崎高崎音楽祭

■3大芸術文化祭が都市ブランドに

 春の「高崎映画祭」、秋の「高崎音楽祭」、「高崎マーチングフェスティバル」は、国内トップクラスの芸術文化事業であり、多くのファンを広域から集客する都市フェスティバルとして知名度も高い。質の高い3つの芸術系ビッグイベントが毎年実施される都市は、全国で少ない。

 今年、高崎映画祭が第26回、高崎音楽祭とマーチングフェスティバルが第23回と、およそ四半世紀続いている。この3つのフェスティバルは、高崎独自の個性的な芸術性を創り上げ、「音楽のあるまち高崎」、「映画のまち高崎」として高崎の都市ブランドとなっている。運営の仕組みも完成域にあり、苦労を重ねて作り上げたノウハウが詰まっている。市民による実行組織は、翌年の準備のためにオフシーズンも活動しており、資金面で応援する人たちを含め、他の都市が真似のできない市民力、都市力を象徴している。

■高崎名物として定番イベントに

 毎月第4日曜日に開催される「人情市」は平成11年から始まり、今年12月で162回を数える。中心市街地で定期的に開かれる青空市場として市民に愛されている。田町通りの活性化のために始まった「高崎田町骨董街道」は、毎月最終日曜日に行われ20年以上も続いている。群馬県内のストリートマーケットとしては屈指の歴史を持つだろう。

 長期間続くとマンネリ化が危惧されるが、決まった日に決まった所で同じものが開催されることは、ぶらっと行ってみようと思う側にはとてもわかりやすい。よほどの悪天候でなければ開催されている。

 人情市は、物産販売やイベントに主催者の知恵が絞られている。季節に合わせ、遊び心あふれる工夫があり、定番の出店と合わせて来場者を楽しませる。運営している「NPO法人高崎やる気堂」は、様々な団体と連携しながら限られた予算のなかでも人情市の楽しみを倍増させていきたいと考えている。

 マンネリと言われようが、これだけ継続するには、主催者の執念にも似た意気込みが必要で、イベントのお手本となっている。一つのイベントを、浸透、定着させたのは、なみなみならぬ力だ。

■さすが高崎商人! 問屋町が激アツ

 商都高崎を担う問屋町の卸商社街が問屋街センターで春と秋に開催している「上州どっと楽市」は、高崎問屋町駅開業を機に始まり、今年の秋で第15回。約80社が出店、3万人の来場者を迎え、大盛況となっている。

 同じ問屋街センターを会場に平成22年から始まった「わけあり大処分市」は、開場時に500人の行列ができ、1時間で4,000人が殺到した。混雑して会場内を進めないほどの状況となった。在庫品、B級品、型落ち品など文字通り「わけあり品」を販売する処分市だが、何が「わけあり」なのか、消費者の心をくすぐり、掘り出し物を期待して覗いて見たくなる。問屋から放出される商品ということで割安感が購買意欲をそそる。これまで4回開催され、「わけあり大処分市」のネーミングも見事であり、さすが高崎商人と言える。買い物を目的としたバーゲンイベントして問屋町ならではの強みを発揮している。

エキサイティングなイベント都市高崎キングオブパスタ2012

イベントには商店街や市民の協力が必要

■大イベントに成長「キングオブパスタ」

 ここ数年で大成長し、内外から注目を集めているのが「キングオブパスタ」。4回目となる今年は高崎競馬場跡地で開催され、出店数は21店舗、主催者発表で7,500人を動員した。動員数はチケットの実売数でやや控えめな数字だ。家族客の子どもたちを含めれば優に1万人は超えていると考えられる。

 青島真一実行委員長は「高崎を全国に発信できた」と手応えを語る。キングオブパスタを目的に県外から宿泊で訪れた来場者もいた。

 キングオブパスタは、高崎まつりの一部門「テイストオブ高崎」から独立したイベントで、B級グルメなどの野外食イベントがブームとなっているとは言え、「パスタのまち高崎」を旗揚げした市民活動を大イベントに成長させた実行委員会の手腕はお手柄だ。

■競馬場開催が呼んだ小さな波紋

 今年のキングオブパスタが、もてなし広場から高崎競馬場跡地に会場を移して開催することが発表された時は、事情がわからず「なぜ?」とささやく声も聞こえた。昨年、もてなし広場から人が溢れ、お堀の周囲まで待ち行列が並んだ光景はインパクトがあったが、周辺から苦情もあったようで主催者としては、会場探しの結果今回は競馬場跡地になったそうだ。青島実行委員長は、「できることならまちなかで開催し、にぎわいを作りたい」と話しており、来年の開催はまちなかを視野に入れているようだ。

 イベントに伴う苦情は悩ましい問題だ。人通りが少ないと商店街の嘆きが聞こえる一方で、人が集まり過ぎるとイベントの開催が難しくなるという矛盾した問題をはらんでいる。商店街や住民を含め、まちなか全体として来街者を迎える気持ちや危機感を共有しないと、官民を挙げた多くの努力が水泡に帰してしまう。

■イベントとまちの回遊性

 キングオブパスタで周辺に人が溢れたことに対する苦情の受け皿や、善後策について、まちなかの人たちが相談に乗らなければ、近隣に迷惑をかけないよう開催場所を変更する方向に動くことは当然のことだ。昨年の状況は想定外で、あれほど来場者が押し寄せることは予想しえなかったこともあるだろう。キングオブパスタで、もてなし広場に集まった人たちをまちなかに迎えるための発想、対応が必要だ。そんな事情を知らなかった商店街の人からは、相談してくれれば何か方法はあったのではないかとの声も聞こえた。

 キングオブパスタに限らず、もてなし広場のイベントに集まった人たちを中心商店街に引き込むことが、課題として以前から指摘されている。スズラン前の交差点を越えさせて商店街に回遊させることができれば、もてなし広場本来の目的が大きな効果を上げる。

 イベント企画時の問題点などを相談できる体制があれば、キングオブパスタもまちなか開催が実現したかもしれない。高崎観光協会など、あるいはそれに準ずる組織などがイベントの特徴を生かしたパイプ役として機能していくことも重要となるのではないだろうか。

エキサイティングなイベント都市高崎高崎バル

高崎のイベントをより魅力的にするために

■連続性を意識した仕掛けづくり

 中心市街地東西に位置する高崎駅周辺とスズラン・もてなし広場の2核を結ぶ大手前慈光通りを中心に、歩く魅力の連続性、回遊動線を作り上げていくことが重要なポイントになっている。

 この動線の魅力づくりとして重要なのが、さやもーる、大手前慈光通り、東二条通り(ハナハナストリート)で、「たかさき昼市」や、「ハナハナ市」、「音人祭り」などが仕掛けられている。高崎音楽祭の西口特設ステージがまちなかの回遊に果たした効果も見逃せない。今年9月に試験開催され、来春から本格的に動く「オープンカフェ」もまち全体の流れを生み出す効果が期待されている。

 歩き回るイベントでは、機関車だるまがもらえる「機関車の街・高崎まちなかスタンプラリー」、「高崎商都博覧会」、「高崎バル」があり、まちなか全体を大きくとらえた視点のイベントが新しい動向となっている。今年「ぐるりん」の都心循環線がまちなかルートに変更されたことも、回遊性、連続性を狙ったもので、同じ目標に向かった総体的な取り組みが本格化している。

 イベントがにぎわっても、飲食を除けば各個店の売上に結びつかないといった声も聞こえるが、個店の魅力、集客があってこその「まちなか」だ。魅力的な店舗の連続がまちのおもしろさで、イベントはあくまで集客を補完するものと言えるだろう。実際にまちに買い物の用事がなければ、イベントのためだけに出かけることはおっくうになるという声もある。

エキサイティングなイベント都市高崎

■イベント複合化で相乗効果

 今年の10月20日(土)、21日(日)の2日間は、高崎の中心市街地で大型イベントが同時開催され大勢の来街者でにぎわった。

 「高崎マーチングフェスティバル」、「高崎音楽祭」、「たかさき能」、「高崎商都博覧会」、「高崎バル」、「青空シェフの日」、「高崎昼市」などまちなかイベントが相乗効果を発揮した。高崎マーチングフェスティバルのパレードが行われたシンフォニーロードやアイドルグループのコンサートが行われた高崎音楽祭の高崎駅西口前ステージなど高崎駅周辺では大きなにぎわいとなった。

 各イベントの主催者は、まちづくりの仲間として意識を共有していたものの、今まではそれぞれの領域の中にとどまっていた状況だった。高崎マーチングフェスティバルに集まる観衆をまちなかに回遊させる商業効果は大きい。意識的なイベント同士の連携が生まれたことで、新たな展開が期待できる。

■イベントネットワークの踏み込んだ組織化を

 まちなかで開催されるイベントの多くは、限られたスタッフと予算で運営されており、準備に追われ、宣伝力も小さい。すばらしい内容の事業なのに、単独では集客がいまひとつ、という状況も否めない。

 各イベントの個性を発揮し、連携によって集客力を高めるためには、パイプ役となる機能が必要で、徐々にネットワークが形づくられてきた。このネットワークを組織化し、情報を集約、共有する仕組みが必要だ。

 現状では、もてなし広場でのイベント開催は、まちなかへの波及力は小さいと言わざるを得ない。また高崎駅西口からまちなかへの回遊性も商店街からは不満の声が聞こえる。

 雷舞が高崎駅周辺など複数会場で開催したり、高崎駅西口からもてなし広場と意図的に連続性を持たせるイベント配置も更に機能強化したい。単に同じ日に開催するのではなく、各イベントの特徴を生かし、内容に踏み込んだ連携、乗り入れが重要となりそうだ。高崎音楽祭のマスカレードの仮装パレードが、商都博覧会の大型店をにぎやかすのも面白いだろうという意見もあった。

 個々のイベントの情報発信とともに、より広域から集客するための取り組みが必要だ。高崎まつり、山車祭り、花火大会、神輿のもみあいは、高崎の名を全国へ広める圧倒的な内容を持っているが、日本一の声を上げ、対外的なキャンペーン活動が十分に行われてきたのか検証する必要があるだろう。他にも広域的な集客につながるイベントをさらに磨き上げることも必要だ。

エキサイティングなイベント都市高崎

高崎商工会議所副会頭
高崎まちなかオープンカフェ推進協議会会長
綱島 信夫 氏

■今こそ性根を据えて連携を

 週末はまちのどこかでイベントが行われており、積極的に発信すれば魅力を倍増できるが、スタッフは手一杯の状況だ。人手が足りず、店を切り盛りしながらイベントの会議をし、危機感やジレンマを抱えながら準備している。もう少しそれぞれのイベント同士が情報交換をして、そのうえで個店の取り組みと連携プレーを行いながらまちなかの活性化に性根を据えて取り組む必要がある。

 個々の店が光り輝き、まちに魅力があれば人通りは取り戻せる。子どもの頃からまちなかで買い物をしたり、イベントに参加することが、その人の人生のストーリーとなり、「通い慣れている道」として愛してもらえるようになるはずだ。

 最近は、まちの中に人が戻りつつあるように感じている。まちの中を歩いてみたいというお客様が増えている。「まちなかぐるりん」も、ちょっとしたブームになっている。まちなかの魅力を発信する場所が必要だ。田町の骨董市から大信寺の徳川忠長公墓所まで散策してもらったり、年齢層や興味にあわせた提案が重要になる。

 オープンカフェは、例えば団塊の世代の夫婦がまちなかをゆっくりと散策するためのスローな時間を提供する場所にしたい。新しいライフスタイル、新しい文化を創造する事業なので、定着するまでに時間がかかるかも知れないが、積極的に取り組んでいきたい。

エキサイティングなイベント都市高崎

高崎観光協会理事長
末村 歓也 氏

■ハブになる組織づくりが急務

 ひとつひとつのイベントは、とてもすばらしい。その中には、マンネリ化の行事もあるかもしれない、宣伝がうまくいかずに集客につながらないイベントもある。イベントスタッフとは別の組織が宣伝、告知をサポートすることで、もっと人を集めることができると考えている。高崎は地の利に恵まれ集客の努力をしてこなかった。これからはハブとなる組織がないと広がりが生まれないので、ボランティアではなく責任を持って取り組むスタッフ人員の雇用も視野に入れた取り組みを検討していきたい。

 観光は、全ての業種にかかわる事業なので幅広く観光協会の会員を募りたい。ハブ組織が情報を発信して集客につなげ、パンフレットやグッズを通じて高崎に訪れた人へPRや販促を行うなど、会員に具体的なメリットを感じてもらうようにしていくことも重要だ。「将来的に」と言っていたら、いつまでたっても実現できない。

 1万5千発を打ち上げる高崎の花火大会は全国に誇れる内容を持っているのに、祭りと同時開催という理由で、全国の花火大会の日程表に出ていない。これは絶対におかしい。こうしたことを、ひとつひとつチェックしていくのも観光協会の役割だ。JRと連携して乗車切符と花火の桟敷席をセットに商品化してもおもしろい。

 高崎が元気になるためのお手伝いをしていきたい。やってみないことには失敗も成功もないので、私はそのための理事長だと考えている。

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