高崎経済大学/法人化で「攻める大学に」
4月1日、高崎経済大学が市立高崎経済大学から、公立大学法人高崎経済大学に移行された。 公立大学法人とは、独立行政法人の形態の一つで、人事や会計など独自の大学運営を行う。行政改革の流れの中で平成16年に施行された制度で、高崎市と高崎経済大学は平成21年度から具体的な準備を進め、今年4月に法人化を実現した。
法人化で高崎経済大学がどう変わるのか、新理事長に就任した高木賢理事長にお話しを聞き、高崎にどのような影響があるのかを考えてみた。
法人化は急務だった
高木 賢理事長
公立大学法人への移行は、経営に民間企業の考え方を取り入れ、厳しい地方財政に対応することが目的の一つ。国立大学は、平成16年4月に全て国立大学法人へ移行した。公立大学は、平成21年度までに77校のうち45校が法人化へ移行している。
少子化時代に入り、将来的な入学者数の減少が予想される中で、優秀な学生を確保し厳しい大学間競争に勝ち抜く為に、大学自ら積極的に優秀な教職員と財源を獲得して魅力的な大学づくりをすることが急務だった。そのため、公立大学法人への移行は、大学の看板を付け替えるだけの話ではない。
公立大学法人が民営化と異なるのは、基礎研究や社会貢献など、非採算性分野に対する考え方だ。国立高崎病院が独立行政法人化して高崎総合医療センターとなり、救急救命、小児救急など、病院経営としては採算性は低いが市民ニーズが最も高い分野を強化したのと同様、大学の地域貢献は採算性とは別に強化拡充されなければならない。そうした分野については、高崎市がきちんと財政的にバックアップするのが、公立大学法人の仕組みだ。大学の自主努力を強化して高崎市の財政負担を抑える一方、地域貢献についてはきちんと高崎市が見守るのが特徴だ。
高木新理事長が就任
大学の財務や会計は、企業会計が原則となり人事や給与制度についても民間企業と同じく法人の実績や教職員の業績を反映した考え方が導入される。高崎市から独立した法人となるので、大学自らが主体的に経営戦略を実行していくことになる。
法人化によって大学運営を任される理事長には、学外から他の大学ではあるが教鞭を取った経験もある元食糧庁長官で、弁護士の高木賢氏が抜擢された。高木理事長は、教職員をはじめ関係者とのコミュニケーションを重視し「大学の内外との情報を共有化し『見える化』を進めたい」と風通しのよい運営を第一に掲げている。
自立した組織として予算の運用が弾力的になり「感度を上げ迅速な対応で、大学運営を展開したい」と意欲一杯だ。高木理事長は「これまでコミュニケーションが必ずしも十分でなく、惰性的に行ってきたこともあるのではないか」と改善点を一つひとつ洗い出していく考えだ。
一方、学生の育成に力を注ぎ実績を上げ自主性を高め、しっかりとした舵取りができるように学長との緊密な連携をとり「攻めの姿勢」で、大学運営に取り組む。大学事務局に広報情報課を新設し、情報の収集と発信を積極的に行い高崎経済大学の知名度を上げ優秀な学生を集め、地域との連携をこれまで以上に推進していく。「受け身ではなく、高崎経済大学ここにあり」と存在感を示していく考えだ。
経済波及効果と人材確保
大学の存在は高崎市の経済に直接与える影響も大きい。高崎経済大学の学生数は、大学院生を含めると4,292人(平成22年5月現在)、そのうち4分の3の約3,200人が県外出身者。県外出身者がアパート等に下宿し、家賃や飲食などの生活費が月10万円と仮定すると月に約3億2千万円、年間約38億円の経済波及効果が考えられる。
また、企業にとっては優秀な人材を確保することは重要な課題だ。市内の企業には多くの同大学出身者がおり、地元企業の有能な戦力となっている。高崎経済大学が法人化により大学間競争に勝ち抜くことは、高崎の経済においても大きな影響を与える。