高崎のイベントは、集客力、経済力、市民力、創造力、発信力を高めているか?

賑わいを演出し、文化を発信するイベント

 全国の地方都市の中でも、高崎市では多くのイベントが行われている。イベントに訪れた人たちは、高崎の街や市民は元気があり、行動的だと感じる。イベントを通して発信される高崎の元気さは、メディアや口コミを通じて高崎市のイメージアップにつながる。

 そのことが、今まで以上に、人・モノ・情報が高崎に集まり、経済や文化の力をさらに高めることになる。高崎の幾つかのイベントを改めて取り上げて、イベントの目的、役割を検証し、高崎の集客力、経済力、市民力、創造力を高めていくことになっているのかどうか、その効果や成果を探ってみる。

冬の高崎を彩る風物詩/榛名湖イルミネーションフェスタと高崎光のページェント

高崎のイベントは、集客力、経済力、市民力、創造力、発信力を高めているか?榛名湖イルミネーションフェスタ

手づくりイベントの域を越えた発信力/榛名湖イルミネーションフェスタ

 榛名観光協会榛名湖支部が榛名湖に活気を取り戻すために、自分達の手で運営し、達成感を感じようと2006年から行っている。当初、2万3千人の動員と考えていたが、湖面に映る光の美しさが口コミで伝わり3万人の人たちが足を運んだ。昨シーズンは16万人の集客。効果が確実に表れている。

 「飾りつけはメンバーが胸の上まである長靴を履いて、湖に入り設置しています。費用負担も大きいため、規模上のナンバーワンは目指していません。その代わり榛名湖という最大の素材を生かしたオンリーワンの演出をしたいと考えています」と支部長の小林信彦さんは話してくれた。

高崎のイベントは、集客力、経済力、市民力、創造力、発信力を高めているか?高崎光のページェント

高崎の夜の都市景観を演出/全国でも先駆けの高崎光のページェント

 1994年から行っている。時代の風潮を意識し、今まで世界エイズデーにちなみ、レッドリボンのツリー作成やフォトコンテンスト、 エレクトーン、ジャズ、フラメンコのコンサートなどを行った。

 市内幼稚園、保育園児によるモニュメントは、ほかの地域にない市民参加型のもの。近年には、プロがデザインしたモニュメントも登場した。今年は空間プロデューサー・新屋真和氏が設計した、真っ白なオブジェ「天使のドレス」が目玉。群馬県で採れたウンリュウヤナギとホウキグサ計2000本を使い「エコ」をPRしている。

 この事業は、都市の景観やにぎわいのあるまちづくりが目的であり、榛名とは開催の狙いが違う。つまり、都市力の象徴なのだ。この趣旨に賛同し、ヤマダ電機LABI1高崎、高崎高島屋などの商業施設は、独自でイルミネーションを飾りつけ、イベントを盛り上げてくれている。

 高崎駅や前橋駅、渋川駅から榛名湖へ発着される日帰りナイトバス、タクシーを使った観光プラン、大宮―高崎駅間に臨時列車運行など交通手段も充実している。

 今後、両イルミネーションは、相乗効果を得るために、連携を考え、1つのチラシに2つのイベントを掲載、榛名湖から高崎駅までバスで客を送る際、駅の手前で停車させ客に歩いてもらうなどの仕掛けをする予定だ。

音楽のある街高崎をPR/高崎マーチングフェスティバルとミュージック高崎ジャパン

高崎のイベントは、集客力、経済力、市民力、創造力、発信力を高めているか?高崎マーチングフェスティバル

市民主導で高崎の音楽文化を育てる「高崎マーチングフェスティバル」

 シンフォニーロードにもっとも人が溢れるイベント。1990年に高崎市制90周年事業として、(社)高崎青年会議所が主体となってスタートさせた。同じ年に、マーチングフェスティバル実行委員会(現・高崎マーチングフェスティバル協会)という、市民主体の団体が運営し、今年21回目の開催を迎えた。毎年30名ほどの大会本部スタッフが中心となり、当日ボランティア約400名と協力し運営にあたる。

 今年も城南球場で披露された市内幼稚園・保育園児643名によるキッズドリル、市内小中学校と招致団体など2020名によるフィールドドリル、約2時間かけて2664名がシンフォニーロードを演奏・行進するパレードが行われた。このスケールは群馬県最大の人口37万人を誇る新高崎市にふさわしい、大規模な大会だ。市制110周年を記念し、「高崎花路花通り」や「高崎商都博覧会」なども同時開催され、例年以上に集客があった。

 スクールバンドの参加が中心のため、若々しい音楽を育てるまちのイメージを与え、都市が明るく、活気あるイメージを人々に与え、「音楽文化都市・高崎」のイメージを鮮烈にPR。大空の下、子ども達に多くの人達が、拍手・喝采を与えることは、豊かな情操教育を育て、教育的効果も高い。

 年5回プロを招いて全校生徒、教師に対し、講習会を継続的に行っているため、演奏レベルも向上。今年の西関東小学校バンドフェスティバル、西関東マーチングコンテストでは、東部小学校、豊岡小学校、塚沢中学校、高崎商業高校が華々しい成績をおさめ、全日本小学校バンドフェスティバルでは東部小学校が金賞を授賞した。

 近年、市内9つの小学校と2つの中学校の子どもたちによるバンド「TTL(高崎テクニカルリーダーズ)」が結成され、「高崎商都博覧会」や「高崎光のページェント」、「群馬デスティネーションキャンペーン・プレイベント」などに参加し、市民との交流も行われている。

 ①市民自身の手で運営する②子どもたちに貴重な体験をさせる③音楽のある街高崎のイメージを高める④音楽を媒体とした交流拠点都市の具現化を行う、の4つが主な目的だが、すでにすべての目的を達成している。

その名が示すように音楽をテーマにした集客イベント「ミュージック高崎ジャパン」

 2008年から開催されているブラスバンドの祭典。マーチングフェスティバルが教育を前面に打ち出した市民主体の祭典であるのに対し、ミュージック高崎ジャパンは民間の実行委員会が主催。(財)高崎市文化スポーツ振興財団、高崎市文化課が事務局となっている様に民間と行政がジョイントしたイベント。

ミュージック高崎ジャパンの目的は3つ。

  1. 名前の通り海外からの招聘も含めて専門家も満足するレベルの高い演奏会を開催し、多くの人に最高の演奏を味わってもらう。
  2. 楽器を触ったことがない人、プロと一緒に演奏してみたい人、本格的な指導を受けてみたい人が満足できる公開レッスン「楽器クリニック」や楽器の体験レッスンを開催。高崎のブラスのレベルアップと音楽人口の底辺拡大を図る。
  3. 日本全国からの集客を図り、市街地の活性化と経済効果を上げる。

高崎市民はもちろん、市外、県外からも集客できる音楽的質の高いイベントだ。

 初年度は、陸、海、空自衛隊の中央音楽隊が高崎を訪れ演奏。ブラスの最高峰である自衛隊の3つの音楽隊が揃ったイベントは日本初で、2年目以降も1隊が継続的に参加し、目玉の一つになっている。20年以上マーチングと関わってきた高崎の人に、別の角度からより幅広く参加してもらおうという狙いがある。

 両イベントは、「音楽のある街高崎」をPRするために、それぞれの役割を果たしているが、市民自らの手でつくり上げるという立場と、質の高いレベルの音楽を与えるという正反対の面からアプローチしている。

伝統ある商店街の催事と新しい大型店の連携イベント「高崎えびす講市」と「高崎商都博覧会」

高崎のイベントは、集客力、経済力、市民力、創造力、発信力を高めているか?高崎えびす講市

商都高崎の伝統と心意気/時代とともに変わる「高崎えびす講市」

 昭和初期の景気悪化打開策として、高崎実業組合連合会が提案したのが高崎えびす講市。当時は大変繁盛したが、再び景気が悪化した現在、売り上げが下降傾向だった。

 「特に、5年前は雨のため、人出が少なく危機感を感じた」。翌年から新たな試みを行うようなった。高崎商店街連盟の代表幹事で高崎えびす講市実行委員会の副委員長を務める堀米正一さんは「これからは、内容を変える必要がある」と力説する。

 3年ほど前から、えびす講市では、若者達の参加を歓迎。人の流れも活気に溢れるものになった。2008年から群馬県内の高校に通う生徒たちが商品販売の売上や接客技術を競い合う「熱血!高校生販売甲子園」を共催。82回目の開催となる今年、高崎経済大学の学生が実行委員会を組織し、高崎えびす講市実行委員会の本部事業とした。結果は良好、売上は確実にアップしている。

 「えびす講市は伝統行事ですが、まちづくりの方向性を定める実験イベントの意味もかねています。『高崎で商売を始めたい』と思うようなまちになることがこれからは必要ということが実証されたと思っています」と堀米さんは語った。

高崎のイベントは、集客力、経済力、市民力、創造力、発信力を高めているか?高崎商都博覧会

日本で最初の大型店連携プロモーションイベント「高崎商都博覧会」

 スズラン高崎店・高崎高島屋・高崎ビブレ・高崎モントレー・ヤマダ電機LABI1高崎が手を結び、各店のオリジナルフェアを博覧会開催期間である10月20日から26日の間に行った。共通イベントとして「高崎5店ぐるりんスタンプ」を開催。大型店5店舗のいずれか2店舗以上で各1000円以上の買い物をした人が、抽選を行える。協賛イベントとして、高崎中部名店街は、マグロ解体ショーを、大手前慈光通り商店街はストリートガイドマップ絵馬抽選会を、(財)高崎経済大学後援会は、ヤマダ電機LABI1高崎・LABI Gardenと高崎高島屋正面玄関で高崎経済大学の音楽クラブの演奏を行った。

 効果としては、各店舗とも入店客数や売上の増加、また「ぐるりんスタンプ」による新たな客層の開拓等の効果を挙げており、中心市街地に新たな賑わいを創出するイベントとして、今後に繋がる成果を収めたといえる。

 高崎商都博覧会は、大型店同士が手を結んだという観点から非常に意義が高い。このようなケースは日本で初めてだ。

イベント都市高崎のさらなる強化を目指して

 集客都市として考えたとき、イベントは、それぞれ高崎市の発展のために重要な役割を担う。

 榛名湖のイルミネーションやえびす講市は地域の人たちのパワーが集結した証、高崎光のページェントは高崎の都市力の象徴だ。高崎マーチングフェスティバルは、市民の創造力、行動力をPRするための有力なツールであり、音楽教育のレベルの高さを示している。ミュージック高崎ジャパンとともに、「音楽のある街高崎」を県内外に情報発信させることができる。大型店が手を取り合ったという意味で、商都博覧会は先進的で、商都高崎の底力をアピールした。

 今回は、触れなかった高崎花路花通りは、2008年に行われた第25回全国都市緑化ぐんまフェア以後も、まちなかを緑化、飾花することで、高崎の街中の楽しさを演出する。  また、高崎音楽祭や高崎映画祭も高崎でしか観ることや聴くことのできないプログラムを組むことで、高崎の都市文化の創造力を高めている。

 高崎の個性豊かなイベントは、その成果を高崎の街に確実に根付かせている。今後の課題は、各イベントが継続して開催され、個性を活かしながら連携を深めていくことで、そのパワーを増大させ、場合により連携するだけでなく統合やより複合化することで、質的な向上や効率化を図ることも考慮すべきだ。

 イベントのもつ集客力、経済力、市民力、創造力、発信力を高め、高崎の都市力をさらに増大させていくことが求められている。

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