高崎駅の乗降客が一日3,000人増加

高崎駅の乗降客が一日3,000人増加高崎駅中央コンコース

その原因と今後の可能性を探る

 高崎市が群馬県最大の都市となり、北関東、信越地域の中枢都市としての存在感を持ち始めている。高崎駅は、交通拠点都市高崎の中枢として歴史的にも都市の発展を担ってきた。上越・長野新幹線、関越・上信越・北関東自動車道の高速交通網の結節点として、高崎駅を中心とした基盤整備が着々と進められる中、高崎の都市ポテンシャルを引き出すための方向も見え始めた。

増加に転じた高崎駅利用者
新幹線通勤・通学も増加

 JR高崎駅乗降客数は平成18年度から微増傾向となり、過去10年間の横ばいから増加に転じている。高崎駅の路線は、新幹線が2線、在来線が、高崎線、八高線、信越線、上越線、吾妻線、両毛線でネットワークの拠点駅。高崎駅はJR東日本エリアの1、700駅で140番目。高崎線沿線では、一日当たりの乗降客数で上尾駅約8万人、熊谷駅約6万3千人、高崎駅約5万7千人となっている。

 新幹線、在来線の利用者はほぼ半々。新幹線の通勤・通学は年々増加傾向にある。東京が通勤圏となったことは、近年のマンション建設ラッシュなど、高崎に大きな影響を与えている。

 人口35万人の高崎は、地方都市としては路線、駅ともに多く、市内にはJR7駅もある。7駅合計の乗降客数は一日約8万1千人。対して人口約50万人の宇都宮市にはJRの駅が4駅あり、合計が8万5千人。人口規模から見ても、高崎市全体の乗降客数は多く、交流人口の大きさを示している。

 高崎駅の悴田太司駅長によれば、今年度は一日当たりの平均乗降客数は3、300人ほど増加しているという。今年は、3月から6月に行われた「全国都市緑化ぐんまフェア」、7月に「ヤマダ電機」本社の移転と「LABI1高崎」の開店、8月の「第32回全国高等学校総合文化祭群馬大会」、深谷・本庄市などで団体競技が行われた埼玉総体(インターハイ)により、利用者の伸びが感じられるという。

 東横イン高崎駅前本館の小池敦子支配人も、8月の高校総文祭や埼玉総体の宿泊者利用が多かったことを指摘。埼玉総体では、熊谷市周辺の宿泊施設では収容しきれず、高崎駅周辺のホテルから、競技会場まで通う選手団も多かったという。前橋市で行われる学会でも、宿泊は高崎駅周辺のホテルが利用されている。ヤマダ電機の開店に伴う期間は、満室状態が続いていた。全国都市緑化フェアでは、宿泊については大きな動きが感じられなかったと小池支配人は話す。

にぎわう高崎駅コンコース
東口駅舎を大規模改修予定

 JR高崎支社はステーションルネッサンス事業として、平成16年2月から高崎駅舎の大規模改修を行い、平成17年12月に完成した。中央コンコースは、“音楽のあるまち高崎”の玄関として「シンフォニックアヴェニュー」と命名。東西の回遊性の向上やバリアフリー化で、アクセス性を高めた。

 駅舎の改装により、西口から中央コンコース、東口に新たなショッピングゾーンも生まれた。コンコースの東口付近は、『E'site(イーサイト)』として物販、飲食など、にぎわいのある空間の創出を目指している。今年7月のヤマダ電機開店により、東口エリアの集客力が高まり、高崎駅ではショッピングゾーンとしての機能強化を考えている。

 7月以降、中央コンコースの通行量が増加し、悴田駅長は「これまで休日のにぎわいは西口中心だったが、東口にも人の流れが生まれている」と実感している。夜間は、午後8時を過ぎると電車の発着時を除けば、コンコースの人通りはまばらだったが、午後10時のヤマダ電機の閉店時刻まで人の動きがあるという。

 高崎駅東口駅舎は、平成21年度から高崎市で計画しているペデストリアンデッキ整備に合わせ、駅舎を大規模改修する予定となっており、この改修に伴って、イーサイトエリアもさらに魅力的な空間に生まれ変わることとしており、今後の構想はこれから。

 現在工事が行われている駅東口ペデストリアンデッキ整備では、駅前デッキ(駅舎側~交番の上あたりまでの91・5m)が平成21年2月に竣工予定。また高崎市タワー美術館も、屋外に館名の表示看板が設置される予定で、場所がわかりにくかった点を解消。高崎駅から東口エリアの一体的な都市づくりが進んでいる。

 一方、中心商店街では高崎駅のショッピング機能が高まることで、駅とヤマダ電機で客の囲い込みが進むのではないかと危惧する声もある。

高崎はパークアンドライドのお手本
広がる交通網と利用形態

 悴田駅長は「車社会の群馬で、鉄道と車の接点をどのように作り上げていくかが課題」と言う。新幹線通勤、通学が増加し、1万台規模と言われる駅周辺駐車場を後背に、パークアンドライドを成功させている。駅東口バスターミナル、スマートインターチェンジの整備により、高速交通の結節点として、高崎駅の機能が益々高まっていく。スマートインターチェンジの整備に合せ、高崎市もバス路線の開発誘致に積極姿勢だ。既存路線でも新幹線の最終時刻に接続する運行が行われるなど、利便性が高まっている。

 レンタカーも好調で、利用が増加している。高崎駅レンタカー「ジェイアール東日本レンタリース・高崎支店」の清水修課長は「ビジネスマンが多く、一人で利用されるお客様が多い。利用は土日よりも平日が中心」と言う。高崎まで新幹線を利用し、レンタカーで客先回りという利用で、関西方面から日帰りのビジネスマンも珍しくないとか。特に年末年始やお盆時期などは利用者が多く、お盆に帰省しレンタカーで八幡霊園へお墓参りに行く人も意外に多いそうだ。自分のペースで時間を使えることが好まれている。東横インでもレンタカー会社と提携し、月に60件から70件と利用者が多いという。ホテル前に車を届けてくれるのがお客様に好評だ。

 ジェイアール東日本レンタリースの場合、利用者の使用距離は平均して一日に70キロから80キロだが、中には高速道路を使って250キロ走る方もいれば、こまめに10キロ程度の利用者もいる。自由に動き回れる利便性から、レンタカーが機動力を発揮しているようだ。所有する約100台のレンタカーが全て出払い、車が足りなくなることもある。人気車種は小型化の傾向にあり、排気量1、000ccから1、400ccと燃費が重視されている。

まだまだ生かせる高崎の都市力
音楽のあるまち高崎の駅に

 人口減少社会の中で、高崎市の定住人口が伸びていることは、本市の都市力を示す指標の1つだ。その要因として、新幹線を利用することで首都圏が通勤圏となったことや、生活圏が広がったことも上げられるだろう。高崎駅乗降客数の伸びは交流人口の拡大を示し、都市戦略の上でも重要だ。高崎駅の乗客が増えることは、高崎の集客力と表裏一体で、言うまでもなく来街者が増えることである。

 近年、新しい高崎として都市の形が見え始めたが、ハード整備も含めより戦略的な政策がますます必要となってくるだろう。高崎市の観光客入りは年間542万人。そのうち県外宿泊者については年間57万人で、県内都市部ではトップとなっている。宿泊者の実態は「通常はほとんどがビジネスマン(東横イン・小池支配人)」となっている。レンタカーの観光客利用は「全体の2割から3割(ジェイアール東日本レンタリース・清水課長)」。車で市内の観光巡りという需要は、まだまだ伸びる余地がある。

 高崎市内のホテルが満室状態になったのは、イオンモール高崎、ヤマダ電機の開店時。イベント関係では、石川遼選手で話題になった日本プロゴルフ選手権。高校総文祭、埼玉総体、日本選抜車椅子バスケットボール大会などの全国大会でも県外からの宿泊を増やしている。

 群馬県内、埼玉北部あるいは北関東信越までカバーする交通機動性と宿泊者の収容力を持ちながら、集客する仕掛けやハードについては、途上にあるのが現状だ。芸術文化ホール、コンベンション機能など、真剣に検討していく必要がある。観光についても、戦略的な展開が必要だ。高崎市民は、高崎の良さをあまり自慢しないという面もあり、地域の観光資源を市民自ら磨き上げることも重要だろう。

 北陸新幹線の金沢延伸を控え、悴田駅長は「高崎市のお客様を金沢にお連れして楽しんでもらうことはできる。逆に金沢市のお客様を高崎にお連れするにはどうしたら良いのか」と今後の対策を検討しており、北陸新幹線の延伸を大きなチャンスとして、高崎駅と金沢駅が連携。支社長以下、戦略を練っているという。湘南新宿ラインに続き、高崎線の東京駅乗り入れも予定されており、これにより利用者の利便性が高まるものと期待されている。悴田駅長は「高崎駅は群馬の玄関口。高崎駅から群馬の旅、群馬の観光が始まる。もう一度、高崎に来たい、何度も来ていただける高崎駅にしていきたい。また群馬と言えば『だるま』のイメージが強いが高崎駅を降りれば、何かしら音楽を感じられる音楽のあるまち高崎を高崎駅から発信していくことも検討している」と話している。

取材を終えて

「高崎駅に乗降客が増えた」と言うけれど、今回の取材を通じてその原因や問題点、対応策などが見えてきた。駅の乗降客が増えたというのは事実だが、都市の魅力やポテンシャルが急激に高まり、自然発生的に増えたのではなさそうだ。

 本文にもあるように、全国規模のイベントが高崎市内外や隣接する埼玉県で開催されたことや大型商業施設のオープンなどが大きく影響している。東横インの小池支配人の証言にもあるように、実際ホテルが満室になったという。

 しかし、全国規模の催事を誘致するには受け入れるハードが必要だ。箱物行政は批判されるけれど、高崎市に限っては、その〝箱物〟がない。コンベンションを行うハード不足なのである。

 鉄道も高速道路も整備され恵まれた都市である。ホテルだってここ数年で随分と客室が増えた。更に高速バスターミナルやスマートICの整備が検討されるなど、利便性が高まることが期待されている。

 悴田駅長のコメントにある通り、金沢との交流の中で、観光地金沢に対する高崎への来街者誘致が今後課題という。

 コンベンションシティは目指せないか。

(文/菅田明則・新井重雄)

高崎商工会議所 『商工たかさき』2008年10月号

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