ヤマダ電機の“シンボル”都市型大型店 『LABI』高崎 7月中旬にオープン

ヤマダ電機の“シンボル”都市型大型店 『LABI』高崎 7月中旬にオープン建設中のヤマダ電機本社ビル(2008年4月撮影)

 ヤマダ電機本社ビルの落成が7月5日に予定され、地下1階から4階に同社の北関東拠点店LABI高崎が同月中旬に開店する。ペデストリアンデッキで高崎駅東口と直結する都市型大型店LABIの売場面積は、テックランド通常店舗の6倍にあたる2万㎡。東口の様相を一変させるといわれるヤマダ本社ビルの姿が現れ始めた。

ヤマダのシンボルとしての存在感

都市型大型店LABI高崎

 ヤマダ電機本社ビルは、地下2階、地上12階。1階に高速バスターミナル、地下1階から4階に都市型大型店LABI、5階にレストラン街。6階から9階は975台を収容する立体駐車場、10階から12階がオフィスフロアとなる。ビル東側には野外ステージを設備した「ふれあい広場」、4階には約400席のホール「LABI Gate(ラビ ゲート)」と一般利用も可能なスペースを備え、地域貢献を前提に設計されている。

 2階部分は高崎市が建設しているペデストリアンデッキによって高崎駅と接続するが、ビル西側(新幹線高架側)には、ヤマダ電機の負担で4m幅のペデストリアンデッキを設置し、東口エリアのビル群との接続を可能にしている。

 ビル館内では、環境にやさしいグリーンエネルギーを活用。大型の屋外モニター「ラビジョン」は太陽光発電で電力を供給する。このモニターには国や県、高崎市などの公共情報、災害時の緊急情報も流していく予定だ。ふれあい広場やホールは、市民、県民に活用してもらえるよう、スケジュールを組み立てていきたいという。

「当社の経営理念は創造と挑戦、感謝と信頼。お客様、地元のために社会貢献したい。2兆円企業、業界のトップランナーとして企業理念を形にしていく」と話す桑野光正取締役。高崎駅東口に本社ビルを構えることで「群馬出身の企業としての存在感を示し、ヤマダ全店のシンボルにしたい」と建設に力を注いできた。

新幹線直結でビジネスが加速/旗艦店構想が高崎で実現

 高崎駅東口に完成するヤマダ電機本社ビルの従業員数は、ひとくちに800人。メーカーの営業マンなど一日の来訪者は最低でも200人、300人、多い日は700人に及ぶという。前橋市日吉町の現本社への乗り継ぎ時間が、新幹線に直結した高崎駅東口に移転することで解消し、スピードを求めるヤマダのビジネスを加速させる。

 桑野取締役は「私たちは仕事の効率とスピードを重視しており、取引先にも効率を高めてもらえる。交通の便がよくなり、取引先も喜んでいる」と言う。平成17年に高崎駅東口への本社移転を発表した際に、最も強調していたのが高崎の交通拠点性だ。

 交通アクセスに優れた「LABI」高崎店は、群馬県だけでなく埼玉、長野、新潟各県からの集客を見込んだ北関東の旗艦店。高崎スマートICにも期待している。「群馬に旗艦店をつくりたい、高崎にいち早くという考えは持っていた」と言う。

家電中心の百貨店/LABIは新しいコンセプトの店舗

 ヤマダ電機が全国に360店を展開する中で、都市型大型店LABIは都心を中心に9店舗。高崎店の売場面積は2万㎡で、LABI最大級の「なんば店」と同規模。テックランド通常店舗の6倍にあたる。「フロア計画を現在検討しており、決まり次第情報発信していきたい」と言う。

 LABIは、ヤマダ電機の新しいコンセプトによるスケールの大きなショッピングスペース。パソコン、家電のほか、玩具、ゲーム、CD・DVD、照明、健康器具、カー用品、ブランド品、ギフト・生活雑貨、書籍など販売商品は幅広く〝電気の百貨店〟。高崎と同規模の「なんば店」は80万アイテムを扱っている。高崎店の飲食フロアでは、和食、中華、イタリアン、エスニック、お好み焼きなどが楽しめ、17店舗が予定されている。

 ヤマダ電機の販売シェアは、群馬県では非常に高い。一方全国では約20%、関東では神奈川県が30%と高めだが、首都圏が弱いため、LABIを展開してヤマダの吸引力を高める戦略だ。LABI高崎店の集客見込み数は示されていないが、売場面積に見合う規模になることが想像できる。商談で本社を訪れるビジネスマンを加え、高崎駅東口に大きな人の流れが生まれることになるだろう。ヤマダ電機はJRとのコラボレーションで、高崎駅を核にした連携事業を進めている。

東口の都市集積を誘導/新たなまちづくりへの期待高まる

 JR高崎駅東口へのヤマダ電機本社移転、都市型大型店舗のオープンにより、高崎市では、東口エリアに大きな構造変化が生まれてくるととらえている。高崎市都市整備部の松本泰夫部長は「ヤマダ電機本社ビルの建設では、企業貢献の度合いが高い。高崎市が要望していた高速バスターミナルに加え、東側にふれあい広場が整備された」と東口における都市機能の高度化にも注目している。中心市街地では、イベント用のスペースが少ない。この広場はステージが備えられており、貴重な空間となっている。宣伝関連のイベントだけでなく、一般に開放され市民や公の行事に活用できる。イベントの無い時でも閉鎖されず、通行できる。

 ビル西側のペデストリアンデッキ北ルートも、回遊性を高めるために市が構想していたもので、ヤマダ電機の費用で建設されたことで、東口整備が大きく前進した。都内や大都市では、公私の境のない空間活用が進められているが、地方都市でのこうした空間活用は先進的な取り組みと言えるだろう。

 高崎市では、「イーストサイト地区計画により、東口エリアの高度利用をはかったことが、開発を促進させた」とまちづくり施策の手応えを感じている。高度利用エリアを東口線から環状線まで広げ、規制と緩和のバランスを取りながら民間の高度利用を促していく考えだ。コンベンションホールのような施設も、民間の協力を得ながら整備できれば、ビルの価値やステータスを高め、市の財政負担を軽減できる。高崎市では、地域の合意を得てルールを整え、住環境にも配慮し、防災や景観にも寄与できるようなまちづくりを進めていく。

都市機能を高める実験的な事業にも挑戦していく

 ヤマダ電機本社ビル壁面の大型モニタースクリーンを活用し、企業広告やプロモーションだけでなく行政情報も含め、周辺の環境にあわせた映像を流していけるよう、高崎市は、ヤマダ電機、県と協議を行っている。屋外広告物を活用したまちづくりは群馬県では初めて。海外ではソウルが成功している。国内では札幌や旭川、金沢など全国でも例が少ない。アートインキュベーションなども、ヤマダ電機とコラボレーションできれば、高崎型の情報発信として期待ができる。

 高崎市では、駅東西の市営駐車場、民間駐車場のシステムを工夫し、大型店や商店街の買い物でポイントが貯まるような仕組みを構想している。駐車場の利用ポイントが共通化できれば、中心市街地の滞在時間も長くなり、ゆっくりと買い物を楽しんでもらうことができる。現在、高崎の中心市街地に設置されている駐車場案内システムは、高崎市が先鞭を付けて開発・運用しているもので、他都市でも活用されている。自由度の高い駐車場料金システムが構築できれば、全国の中心市街地活性化に寄与するものとなるだろう。

 ヤマダ電機によって生まれる集客をつかみ、新たなチャンスとしてプラス方向に生かしていくため、市では「行政もスピードを上げ、早め早めに課題を解決し、計画を進めていかなければならない。状況は刻々と変わっており、今が大切だ」と施策展開に積極的な姿勢を示している。

集客・観光・コンベンション/「Next Stage」の具体化へ
高崎市・座間愛知副市長に聞く

 売上や雇用、税収などの経済効果がまず上げられる。関連企業が、周辺に張り付き、ヤマダ電機を中心とした関連産業が創出される可能性もある。全国からビジネスマンが定期的に集まることで、宿泊、飲食の需要も喚起される。

 大きな商業核が高崎駅東口にできることで、東西の連携、競合による買い物の動線が広がるだろう。高崎の商業に大きな刺激になる。長距離バスターミナルで高速交通の結節点となり、観光面での効果も期待できる。ビックカメラの動向もあるが、ミニ秋葉原のような観光スポットになる魅力も秘めている。

 高崎駅東西の回遊性を高めるために、駐車場が一体的に機能するようなシステムを構築する必要がある。例えばヤマダ電機に駐車し買い物をしてから、高島屋に行く、食事をする。東口、西口の共通駐車場システム、どちらで買い物をしても駐車料金が無料になるようなパーキングスイカのような仕組みが必要だ。

 ヤマダ電機によって、高崎駅周辺、中心市街地全体のパイが大きくなる。ヤマダ・高崎駅・高島屋・スズランが動線の軸。スズランの増床、慈光通りの魅力付けもカギだ。駅周辺から商店街の魅力づくりに知恵を出しあっていきたい。

 高崎駅東口のまちづくりでは、競馬場跡地との関係も市民の大きな関心事になっている。一つの例としては、芸術・文化の要素を取り入れ、東京国際フォーラムのようなイベント、コンサート、アートの複合施設としてゾーン形成していくことも考えられるだろう。

 高崎駅東口のまちづくりが前進しているのは、まぎれもない事実。松浦市長の政策「Next Stage」の具体化に向けて、大きな一歩が踏み出せるのではないだろうか。

(文責/菅田明則・新井重雄)

■本社店舗概要

建物:地上12階、地下2階 高さ55メートル、大型店併設
完成:2008年7月完成予定
敷地面積:約10,000㎡
建築面積:8,200㎡
延べ床面積:86,000㎡
店舗概要:都市型大型店「LABI」
売場面積:約20,000㎡を予定

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