続“梅”特集/高崎の地域資源にならないはずはない

 『商工たかさき』2月号では、榛名・箕郷地区の梅生産とその流通の全体像を明らかにした。確かに全国第2位の榛名・箕郷地区に対して、年間7千トン対7万トンという桁違いの梅生産量を誇る和歌山県は〝紀州ブランド〝として地位を築いた。その和歌山県でも〝ブランド化〝に向けた努力を過去幾重にも積み重ねてきた結果である。

 生産量そのものは上位地域ではないものの、梅を〝観光資源〝化し地域を挙げて盛り立て事業を行う近隣市町村もある。
そうした目で改めて〝高崎の梅〝のブランド化を見つめてみたい。

高崎市農政部 関田寛農政部長に聞く

安全で美味しい高崎産農産物への期待は高まっている

 高崎市が昨年夏に実施した「農業振興計画市民意識調査」で、市民が購入したことのある高崎産農産物34品目の中で、梅は16位(28・6%)、梅干しは26位(21・1%)という結果が出た。

 一方、安心安全でおいしい高崎産農産物を食べたいという要望は90%と高く、高崎ブランドへの市民の期待は大きい。

 食と農への関心が高まり、安心安全でおいしい高崎産農産物の需要が高まっている。高崎市がグリーンツーリズムとして実施している農業体験バスツアーは、一般向け、親子向けともに好評で、参加希望者が多く定員を上回っている。梅の関連では、一般向けの梅漬け体験、親子向けの梅ジュースづくりを榛名地区で実施した。箕郷地区の梅収穫と梅漬け体験には、新潟から観光バスで参加者が訪れている。

高崎の梅の評価は高く、加工販売にも取組んでいる

 榛名・箕郷地区の梅の生産量は6対4。榛名では、水稲から梅への転作が増えたことが、梅生産の増加につながっている。水稲や梨などの果樹、あるいは他の農産物を兼業で生産している農家も少なくない。榛名の梅選果場は、群馬県内一の施設だ。

 榛名・箕郷地区で生産されている「白加賀」は青梅(あおうめ)で出荷され、梅酒などに適している品種。また、高崎産の梅干しは和歌山産よりも〝減塩〝で、梅本来の味が生きていると評価されている。

 しかしブランド力では、和歌山に押されてしまっているのが現状だ。和歌山の強さは、紀州ブランドとして〝加工製品〝が出荷されているためだろう。青梅の出荷価格の低迷や、生産農家の高齢化、後継者不足は現状として否めない。産地の強化を図るためには生産者、JA、行政、研究機関が一体となって生産、加工、販売の効果的な対策を検討することが重要と考えている。

 梅加工では、地域や農家独自の取り組みも成果を上げてきている。「榛名の梅研究会梅21」は、積極的に加工販売を行い、エコファーマーの認定も取得している。箕郷地区では、織姫ブランドの加工品販売に取り組んでおり、高崎市では平成18年度に「織姫の館」の増築拡張工事を行った。今後も地域の取り組みを支援していきたいと考えている。

 榛名地区では、一次加工をしてメーカーに出荷したり、梅農家と生産契約を結ぼうと考えている加工業者の進出の動きも出てきている。榛名地区の今後の計画では、優良品種栽培目標として、「白加賀」の作付けを50ヘクタール、「梅郷」を10ヘクタール、新品種の「紅の舞」を5ヘクタールに増やしていく。

榛名・箕郷地区では、梅の剪定枝を利用した霊芝れいし(マンネンタケ)栽培を産学連携で研究している。事業化の方向が出ており、応援していきたい。 新しい動きも出てきており、東日本第1位の梅を含め果樹を高崎ブランドとして育てていきたい。榛名、箕郷生産地それぞれの取り組みを大切にしながら、高崎ブランドとして確立していくことが重要だと考えている。

奮闘する近隣の有名〝梅〝観光地/高崎梅20万本VS数万本

ここでは、高崎市以外で梅を積極的に〝観光資源〝としている近隣市町村の状況を見てみることにしよう

梅の開花にあわせ臨時駅ができる水戸市「偕楽園」

 まずは『偕楽園』で有名な茨城県水戸市。毎年2月下旬から3月下旬にかけて偕楽園内100種類・約3千本、弘道館60種類・約8百本の梅を中心に「水戸の梅まつり」を開催している。その歴史は古く、水戸―上野間に鉄道が開通し、観梅列車が運行された明治29年に始まり、今年で112回目となる。

 「梅まつり」の開催期間中は、週末限定ながら水戸駅と赤塚駅の間に『偕楽園駅』が臨時開業するのもその特徴だ。さらに週末には、〝野外琴の会〝や〝野点茶会〝、〝ひな流し〝、〝写真コンテスト〝など、様々なイベントが開催され、多くの観光客で賑わっている。

 また、「梅まつり」の観光PRには、毎年公募によって選ばれた10名の「水戸の梅大使」があたっており、週末は偕楽園駅を降り立った観光客を出迎えている。先日もその様子がNHKの地域ニュースの中で取り上げられていた。

 最近では、『水戸観光土産品協会』が中心となり、梅にちなんだ観光土産品の開発にも力を入れており、平成18年には水戸商工会議所が土産品統一ブランド「梅色未来」を商標登録するなど地域ブランドの強化に注力している。

第3セクター会社がリードする埼玉県・越生おごせ町

 次に約20、000本の梅の木を保有する埼玉県越生町。水戸市と同様に毎年2月中旬から3月下旬にかけて「越生梅林梅まつり」を開催している。 「梅まつり」の開催期間中には、〝越生ばやし〝や〝獅子舞〝、〝雅楽〝や〝モデル撮影会〝など、様々なイベントが開催されている。また、梅林の中を子供たちの歓ぶミニSLを走らせるなど、家族連れの誘客にも努めている。

 そして越生町の取り組みで特に注目したいのが、梅にちなんだ観光土産品の開発。町特産の梅と柚子を使用した製品の開発・販売を行うため、昭和55年に越生町として加工研究所を設立、昭和62年には第3セクター方式(町、JA、農家、商業者が出資)の『㈱越生特産物加工研究所』に移行し、現在も様々な製品開発に取り組んでいる。

 具体的な製品としては、「梅干」や「梅ジュース」といった定番の製品から、「うめマヨネーズ」や梅干を乾燥させた「プチうめ」などオリジナル製品も多数そろっている。

駅から至近の広大な会場での「小田原梅まつり」

 最後に梅林内の流鏑馬で有名な神奈川県小田原市。ここもやはり水戸市、越生町と同様に毎年2月初旬から下旬にかけて「小田原梅まつり」を開催している。

 「小田原梅まつり」の特徴は、その会場の広さだ。「梅まつり」の会場となる曽我梅林は、約3万5千本の梅の木があり、流鏑馬で有名な原会場のほかに別所会場、中河原会場がある。もちろん期間中のイベントも豊富で、〝獅子舞〝や〝フォトコンテスト〝といった定番のイベントに加え、〝流鏑馬〝や〝大書会〝、〝種とばし大会〝などのオリジナルイベントも多い。

 また、水戸市と同様に「梅まつり」の観光PRには、毎年公募によって選ばれた「小田原観光大使」があたり、「梅まつり」の開催時期に合せて近隣の主要都市をまわり、観光PRを行っているそうだ。

3市町の共通点と高崎市との相違点

 水戸市、越生町、小田原市のケースと高崎市の違いはどこにあるのだろうか。
 もちろん前項で説明したように取り組み方の違いや歴史の違いはある。それ以外の要因を考えると、水戸市、越生町、小田原市の3 ケースとも鉄道とのかかわりが強そうだ。

 水戸市と小田原市のケースでは、「梅まつり」会場付近にそれぞれJR偕楽園駅、JR下曽我駅があり、JRと一体となった誘客が展開されている。また越生町は、JR八高線と東武越生線の終点駅となっており、東武鉄道と一体となった誘客が展開されている。

 高崎市でも仮に梅の季節のイベント会場への集客を強化するとなれば、何らかの観光客輸送手段の整備ということも検討しなければならないだろう。

(文責/菅田明則・新井重雄)

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