イオンの集客力の秘密

 「イオンモール高崎」がオープンしたのが一昨年の秋。早いものでほぼ1年半が経過した。
 大型ショッピングモールが、高崎の商業にどのような影響を与えるのか各方面から注目され、商工会議所としても商業者の重要関心事として、開店する1年以上も先行してイオンの情報を伝えてきた。影響が大きいと予想されたからである。
 小売業は、店が開店してしまえば出入りは自由だからおよその事はわかってしまう。秘密などなさそうだが、イオンの場合は、その規模が大きく全体像はつかみにくい。1年半経ったイオンはどうなっているのか、何を目指しているのか、あらためて確かめてみたい。

駐車場が足りない

 イオンモールへ高崎市内の小八木方面から行くと、まず手前に広い駐車場が現れる。ここには1000台止められるそうだが、たいていの場合空いている。普通、この距離のありそうな建物から遠い駐車場を通過して、建物に近い方へ近い方へと進めるが、いざ近くの駐車場に入ると空スペースが見つからずウロウロする破目になる。とはいうものの、少し探せば空スペースができて、駐車することができる。  イオンの駐車場は余裕があり、いつでも止められるという印象を持つ人が多いのは確かだろう。
 一方、イオンの栗田健二ゼネラルマネージャーは「駐車場不足が最大の問題だ」というのである。これはどういうことなのか。
 イオンの駐車場は3700台。栗田さんによると、年間の日曜日と、祭日のおよそ9割、約60日以上が満車になるそうである。もちろん、朝からというわけではなく、午後の2時を過ぎた頃手前のいつも空いている所も満車となり渋滞が始まる。これだけの量の車は、1台が出庫したら1台入るなんて簡単にはいかずに複雑となる。
 イオンでは監視システムをにらみながら、こんな状態になる前に駐車場がスムーズに機能するように誘導員を増員するそうだが、要するに駐車場が足りない事が、最大の問題だというのである。
 年間を通して見れば瞬間的とも思える駐車場不足が最大の問題だというのは、ずいぶんぜいたくな話のようで、認識の違いなのだろうが理解しづらい。とにかく、お客様が駐車場に不満を持ってはならない、という点を重視しているのである。「駐車場が足りない」というのは「駐車場を増やせば売上げが増やせる」という意味なのか。
 3700台の駐車場は混む時には5回転を超え4人以上のお客様が押し寄せてくるのである。イオンの集客力の大きな要因はこの広い無料駐車場である事は今さらいうまでもない。

駐車場と販売額の関係は?

 駐車場に関してはこんなデータがある。中心市街地の商店街と商店が発行している、共通に使える『共通駐車券』を契約している駐車場がおよそ20ヶ所ある。民営と公営があり、駐車可能台数が3800台で、イオンの3700台の無料駐車場と同じだということだ。
 中心市街地には、高島屋の専用駐車場や共通駐車券の契約をしていないコインパーク、月ぎめなどがあり数字はつかめないが、当然、全てが有料駐車場で、買物の結果無料となる駐車場だ。全体の台数はイオンより多いが、買物のお客様に用意された駐車場は同数といえる。
 では駐車台数と販売額との関係はどうなっているのであろうか。「イオンモール高崎」の年間販売額は公表されていないが、出まわっている資料から、2月決算の年間販売額は260億円と推定することができる。  一方、高崎の中心市街地の高島屋、スズラン、ビブレ、モントレーの大型4店と商店街の物販飲食の年間販売額は大雑把なものだが600億円程度だろう。
 駐車台数は同じだが、有料と無料、年間販売額は2倍。イオンモール高崎と中心市街地のショッピングゾーンのこの比較数字をどのように考えるべきなのか。
 〝お客様に駐車場に関して決して不満を持たせたくない〝、これがイオンの考え方だ。イオンには駐車場不足以外に、全く問題がないかというと、必ずしもそうではない。イオンの悩みの種は、高崎駅、前橋駅などから出ているバスを利用するお客様が少ない事だ。これは、バス利用が増えれば駐車場問題が解決するという事もあるが、これは問題の本質とはいえない。バス利用はCo2の問題であり、イオンが企業として最も重視している環境の問題なのである。
 とりあえず、イオンモール高崎は、「ほぼ予定通り1年半が経過した」(栗田ゼネラルマネージャー)。イオンとは何なのか、テナントの構成などを続けて探って行きたい。

(高崎商工会議所小売部会長 根岸良司)

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