ピアノプラザ群馬

(2009年6月)

ピアノプラザ群馬ピアノプラザ群馬

ピアノプラザ群馬常時250台のピアノを最高の状態で展示

ピアノプラザ群馬中森隆利社長

「スタインウェイセンター」をオープン

ピアノプラザ群馬

 

 “音楽のまち”を標榜する高崎市。群馬交響楽団や国内最大級のマーチングイベント「高崎マーチングフェスティバル」「高崎音楽祭」「ミュージック高崎ジャパン」など、年間を通して様々な音楽イベントが開催され、街中に音楽があふれている。


 今回はピアノを中心に楽器販売を行う「ピアノプラザ群馬」に、本誌編集委員の本島東男さん(本島ビジネスセンター社長)とおじゃまして、勝ち残りへの道のりと現在を伺った。


 ギターの弦などの消耗品から楽譜やほとんどの楽器まで扱っているにもかかわらず、大多数の認識は“ピアノ屋さん”。国道17号沿という立地から、お店の存在は知られているが中身は意外と知られていない。確かにピアノ販売が売り上げの中心だが、規模・扱うブランド・メンテナンス技術・演奏ホールなど、どれをとっても国内随一のお店だ。


●縮小する市場と拡大するピアノプラザ群馬

 楽器市場の成熟化が進み、特に楽器の象徴ともいえるピアノの国内出荷台数は、1980年前後のピーク時に約40万台が生産されていたが、2007年には約5万8千台と1/7程度に減少、金額ベースでは約390億円の小さな市場だ(工業統計)。この数字はあくまでも出荷台数で、販売台数に至っては3万台を割ったと言われている。また中古市場の数字は含まれていないが、これを含めても恐らく500億円程度の小さなマーケットではないか。


 少子化や学校・愛好家の減少、住宅事情やピアノに替わる電子ピアノの普及などがピアノ需要の長期低迷をもたらしている。


 こうした状況下、1974年創業の「ピアノプラザ群馬」は、1992年「シューベルトサロン」、今春4月には世界最高級と言われるスタインウェイブランド専門の「スタインウェイセンター」をオープンさせた。これらハードの拡張と同時に、音楽教室やコンサート事業部の立ち上げなどソフト面の充実も進められてきた。創業35年を迎えた現在も成長を続けている。


 シューベルトサロン二階では、音楽教室や演奏会などを通じて音楽普及活動を行なうと同時に、若い音楽家の発表の場としても利用されている。サロン一階には世界4大メーカーのピアノが一堂に並び自由に弾き比べが体験できる。門外漢には〝すごい〟と言う程度の驚きかもしれないが、このような仕掛けは世界でここ「ピアノプラザ群馬」でしか体験できない。


●なぜ高崎だったのか?

 中森社長の出身は静岡県磐田市。家業は「㈱シュバイツア技研」という、国内に6社しかないピアノメーカーの内の一社。


 高崎経済大学への入学が群馬との縁の始まりで、卒業後一旦は実家に戻るが、ピアノの製造ではなく販売への強い想いに駆られ、東京進出を模索していたところ、大学時代に培った群馬の仲間から「東京まで来るのだったら、いっそのこと群馬に戻れ」と誘われ、会社設立時にはこの仲間を中心に60人もの株主がいたそうだ。


 創業は新前橋、「ピアノを3台並べるのがやっとの小さな店でした」と35年前を振り返る。10歳の時から父の工房へ出入りしていた中森社長にとって、ピアノに対する技術や知識は自然と充分すぎるほど身についていたが、販売方法や会社経営は全くの素人。当時、ピアノの販売方法と言えばメーカー系列の販売店が中心で、展示・在庫スペースを持たないカタログ販売が主流だった。


 「後発の素人が他と同じ事をやっても通用するはずがない」。当時は型破りといわれた路面店を現在の地に出店、見て触れてもらうというコンセプトの下、数十台のピアノを常設展示する商売の手法が見事的中、今日の「ピアノプラザ群馬」の礎となった。1979年、創業から5年目の節目の時だ。


●なぜ支持されているのか 顧客は全国から

 現在、本館と隣接するスタインウェイセンター、シューベルトサロン、ぴあの館合せて約250台のピアノが常設されている。国産はもちろん、世界各国の新品・中古ピアノが所狭しと並んでいる。


 お客にとってはワンストップでこれほどのピアノが見て触れる事ができれば最高だ。これこそが「ピアノプラザ群馬」が勝ち残る理由のポイントだ。「プロもアマチュアも、これからピアノを習おうとする小さなお子さんまで、あらゆる方がこのお店に来ます。いつなんどきでも250台のピアノを最高の状態に保つことが他との差別化です」。単に、広い場所にたくさんのピアノを並べるだけなら資金力さえあれば可能だが、そこに形の無い目に見えないソフトを注入する技術が他社の追随を許さないのだ。


 実際に1台1千万円以上もするピアノを自由に体験できるのも、「私たちはどんなピアノでもメンテナンスに自信がある」からだ。調律・メンテナンスの先頭に立つ志村技術部長は、スタインウェイ社やベーゼンドルファー社などのメーカーで行なわれる厳しい訓練を受けた国内でもわずかしかいない認定技術者の一人だ。  それともう一つ、高崎市内にはざっと30のピアノ教室がある。取材で我々が感じた中森社長の人柄と音楽の普及活動などを通じて、地域のピアノ教室の先生や生徒からも支持されているからではないか。


●上位に位置する群馬のピアノ文化

 群馬県のピアノ普及率は、ここ数年全国のトップクラスに位置している。普及率は30~35%というから、3軒に1軒はピアノを保有していることになる


 前段でも触れた通り、高崎は音楽のあるまちでもあり、群馬交響楽団のホームグランドだ。これらがピアノの普及に大きく影響しているという意見もあるし、教育や文化水準の高さの表れでもある。


 「ピアノプラザ群馬」が創業したころの普及率順位は27位。これまでの音楽普及活動や若手音楽家の育成など、中森社長の地道な活動も大きく寄与していると信じている。


 インターネットが普及した現在、お客は海外にまで広がっている。全国から来るお客の平均滞在時間は6時間、宿泊して品定めをするお客も少なくない。


日本ピアノホールディング㈱
所在地:高崎市問屋町西1-3-10
電 話:027-363-1262
URL:http://www.pianoplaza.com/


高崎商工会議所『商工たかさき』2009年6月号

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