株式会社 丸山機械製作所
(2009年4月)
製造中の大型車両移動機。車輪がから回りしない様に自重が7トンもある。160馬力で13両を移動させる
重さ約150トンのSL専用に製造された移動機
佐藤誠一社長
技術力の象徴 車両移動機シェア100%
株式会社 丸山機械製作所
”ものづくり”の世界は、工場の外観や部品の一部を見ても、一体何を造っている工場なのかほとんど分からない。通常、製造業者と消費者が直接関係することが少ないので、余計に分からない。しかし、私たちが知らないだけで身近な場所で意外な物が造られている。
新シリーズ「勝ち残る製造業」では、独自の技術や発想を武器に”キラリと光る製造業者”を紹介して行く。初回は、若手製造業者で組織される「高崎青年経営者協議会」の池田広之理事長(池田建商取締役)に同行していただき、JRで稼動する車両移動機シェア100%を誇る「丸山機械製作所」に伺った。
●「新しいものを生み出す社風」
昭和25年、油圧機器メーカーとして並榎町で創業した「丸山機械製作所」。地元では車両移動機よりも、むしろ新聞の折込広告丁合機メーカーとして知られている。
高崎市において、工業に関係する事業所は807社で24、681人(平成17年12月末時点、従業員4人以上)が従事するが、ほとんどは下請け企業が多く、半世紀以上も”メーカー”として生きてきた丸山機械製作所の存在は、まさに”キラリと光る”存在だ。
丸山機械製作所の経営理念に「家庭同様、企業内でも社員同士が良好な人間関係を築き、プラス思考で全員が一丸となって成長する組織を目指す」と記されている。
そして経営方針には「オリジナリティーあふれる製品と、安定したメンテナンスの供給」が掲げられ、これらを達成するために「勇気ある決断と成功を信じて実行し、そして例え失敗に終わってもつねに前進する」という内容が書かれている。この理念の通り、世の中の変化に対応し、常に時代に順応した商品を作り続けてきた。
車両移動機や広告丁合機など、いずれにせよ高い技術力と豊かな発想、新しいものを生み出そうとする社風こそが、これまで丸山機械製作所を支え成長させてきた。
●「なぜ丸山なのか」
一口に車両移動機と言っても、様々な業種で色々な使われ方をしている、まさに噦縁の下の力持ち器の総称だ。鉄道を例に考えてもJRもあれば私鉄や地下鉄もあり、線路の幅だけでも新幹線・在来線・私鉄各社・地下鉄など規格は様々だ。このほか山間部の建設現場などで見かけるトロッコ列車や製鉄所で鋼材を乗せる台車など、無くてはならない存在だ。
「車両移動機」を扱う会社は国内に2、3社存在するが、細かく区分すればそれぞれが重ならないマーケットで営業している。
丸山機械製作所で作られる車両移動機は、鉄道車両を整備工場まで移動させる事が目的の機械で、東京のメーカーにOEM供給し、設置先はJRと主要私鉄会社、特にJRで働く車両移動機に至っては昭和40年の製造開始より、北海道から九州まで100%が「Made in丸山」、丸山機械製作所の規格はJRの規格なのである。
●参入障壁は「技術力と小さな市場」
なぜ他社の参入がないのか?、「儲からないから他社はやらないんじゃないですか」と佐藤社長は冗談まじりに話すが、実は丸山機械製作所にしか出来ない理由がある。
一つは技術力である。設計?機械加工(NC旋盤・フライス加工)?溶接?塗装?組立まで、社内で一貫生産を行なえるのが最大の強みだ。「従業員50人程度の規模で、全てが行なえるのは稀ではないか」と長井製造本部長の自信の言葉通り、ものづくりには噦技術の裏づけ器が絶対に不可欠なのだ。
もう一つはマーケット規模が小さいこと。国内の貨物輸送は、平成12年を境に鉄道と自動車の輸送量が逆転し、平成18年度は鉄道貨物が2、738万9千トン、自動車貨物は49億6、132万5千トンとなっている。
かつて丸山機械製作所でも、車両移動機の供給が需要に追いつかない時期もあったが、最近では鉄道輸送の減少に伴い生産台数も減っている。大型の車両移動機は完成までに約2ヶ月を要し、現在では大小合せ年間で15機前後を製造している。
「新たにノウハウの蓄積や設備投資を考えた時、マーケットが小さすぎて新規参入は無理だと思います。本当に小さな小さな隙間で我々は生きているのです」と古澤課長、これがもう一つの大きな理由のようだ。
丸山機械製作所の技術は海外でも認められ、昨年はモノレールの車両移動機をインドネシアに納めた。
●改善すべき問題
丸山機械製作所の売上構成は、折込広告丁合機とその周辺機器が最も大きく、次いで車両移動機。この大きな2本柱の他に、試作品や一品物の省力機械などを加え合計で85%を占め、残り15%が部品加工等の下請け仕事となっている。
「製造業にしては、割とのんびりとした工場に見えませんか」と佐藤社長。丸山機械製作所はメーカーであるため、親会社からの納期やコスト削減にさらされていない。「皆、一生懸命やってはいるのですが、一分一秒を競う力が不足している。つまりコスト競争力が弱い」と、この贅沢とも言える意識レベルを最も危惧している。
「厳しいのは当社も同じです」。今後、下請け仕事の売上比率を30%程度まで引き上げ、外部との関係をより増やすことで意識の改革と更なる競争力アップを図って行く。
株式会社 丸山機械製作所
所在地:高崎市小八木町304-2
(ハルナ工場:北群馬郡榛東村新井856)
電 話:027-361-6631
URL:http://www.tpmc.jp/
高崎商工会議所『商工たかさき』2009年4月号