株式会社泰山
(2008年11月)
お客様に出される抹茶と和菓子
茶道具 茶器・掛軸
井上智太・晴美夫妻
年に5回の展示会を開催
お茶一家で支える茶道具専門店
株式会社泰山
今回の「勝ち残る専門店」第4回目は、市内片岡町で茶道具・漆器・印傳(いんでん)を販売する「㈱泰山(井上博之社長)」の息子の智太さんと妻の晴美さんを訪ねた。
お店に伺うとすぐに出てきたのが抹茶と季節の和菓子、晴美さんが店舗奥の茶室でたてた抹茶だ。取材に伺った私たちだけかと思えば、お店に来るお客さんには皆さんに出している。初めてきたお客さんでも常連のお客になった気持ちで迎えてくれる店だ。
小売店として立地が良いとは言えず、取り扱う商品のマーケットも極わずかな専門性の高い商材を、年間を通してお店を展示会場に模様替えをしてお客さんを呼び、販売するのが売上の柱、そのノウハウを見つめてみたい。今回の取材は、当誌広報委員会副委員長の宮崎洋さん(㈱宮崎社長)との取材である。
●茶道具、漆器、印傳の三本柱
茶道具専門店は、高崎に2店、前橋に2店、沼田に1店で県内に5店舗しかない。もっと多いのかと思ったが意外に少ない。東毛地区にあったお店がやめてからは、そのお客さんは前橋まで出かけてくるようだ。待っていては高崎まで来てくれないと、智太さんは桐生地域へ月に一度訪問でお客様廻りをする。
茶器は年に2度程、産地の京都や奈良、名古屋へと仕入れに出向く。茶道具を使うお客さんの数は県内にそう多いわけではないだろうが、泰山のお客さんは茶道会の先生や生徒さんが中心で女性が9割。リピートで買い求めてくれる顧客は200人程。
店内に並ぶ茶道具や漆器、印傳は高価なものばかりでなくて数千円程度の手ごろなものも並ぶ。印傳とは聞きなれない方もいるかも知れないが、高級鹿皮に本漆で柄付けする日本固有の皮工芸品で甲州印傳が有名。泰山では甲州印傳14代目上原勇七商店の商品を扱う。
泰山の特徴を聞くと「茶道具専門店として県内では一番ではないが、茶道具・漆器・印傳の3本柱で売上を上げていくのが泰山の特徴です。茶道具の売れない時期には漆器や印傳の販売に力を注ぎます」と謙虚だが自信に満ちた答えが返ってくる。
●展示会は年5回開催
お客さんに店に出かけてもらえるように、年に5回ほどの展示会を店舗で行う。茶器、茶道具の展示会が年に3回、印傳の展示会は年に2回行う。茶道具の展示会では、流派を問わず県内のお茶の先生・生徒さんが所属する茶道会会員へDMを1000通発送する。印傳の展示会では、来店客を中心に700通のDMを発送する。しっかりとした顧客管理でお客さんに情報を伝え来店に結びつける。
展示会は外部の施設などは使わず、店舗を家族で模様替えして1週間から3週間程度の期間で開催し、多いときで500万円の売上もあると言う。通常の時期での平均客単価は1万円ほどだが、やはり展示会では高価な商品が売れるので客単価は10倍を超える。年間を通して展示会を企画していくのが営業スタイル。
着物や宝飾などを扱う宮崎さんも展示会を開催する機会が多いが、費用をかけずにこの規模の展示会で、お客さんを集めて売上を上げるのは大変なことだと言う。
●お茶一家みんなの力で
智太さんのお母さん、叔母さんもお茶の先生で泰山の茶室で茶道の教室を開く、智太さん自身も23歳から茶道を始めて20年、茶道が身体になじみ好きだという。奥さんとはお茶会で知り合った。家族の中でも流派は異なるが、それがかえって流派を超えたお客様とつながる。長年家族みんなが茶道に通じていることで、懇意にするお茶の先生とのつながりでお客さんも広がる。
観音山を散策されている方が、お店に寄られたときなどは、のども乾いているのではとまず先に抹茶を出す。ゆっくりと腰掛けていただくとお客さんに話しかける時間が生まれ、晴美さんの世間話から智太さんが商品の説明で販売につながる。
お客さんに気持ちよく買い物をしていただくことが一番と、最も気を使うのは日々の接客の中でも、お茶のおもてなしの心。お父さんの博之さんのファンは多く、まだ私たちではかなわないと晴美さんは話す。社長譲りの接客が泰山の強みのひとつだ。
●前職はスーパーマーケット
境町(現在の伊勢崎市)でスーパーマーケットを経営していた、お父さんの博之さんがこれからは専門店が良いと、輪島塗の専門店「泰山」として昭和57年に始める。昭和59年に高崎の下横町に移り、平成3年には駐車場の確保できる広い場所へと片岡町に移り、漆器から茶道具専門店へと商品構成を広げた。
スーパーマーケットの薄利多売の経営から、専門性の高い漆器、茶道具の販売へ商材を変えてきた。茶道具の専門店としては後発と言えるが、これからもお茶好きな一家が泰山を盛り立てて行く。
所 在 地:高崎市片岡町3-1-20プレステージ1F
営業時間:AM10:00~PM7:00
定 休 日:水曜日
電 話:027-327-2366
高崎商工会議所『商工たかさき』2008年11月号