高崎自転車工業株式会社

(2008年7月)

高崎自転車工業株式会社片岡 淳さん

高崎自転車工業株式会社「バイク・フライデー」ポケットロケットプロ(タイヤサイズは20インチ)

折りたたみ高品質スポーツ用自転車販売店

高崎自転車工業株式会社

 

  世の中にある数々の商売の中で、針の穴ほどのごく小さなマーケットでも〝世界からお客がこの店を訪ねてくる〟という信じられないビジネスをされてる方が高崎にいる。


 このシリーズ「小粋な全国区のお店・その1」は、市内下横町の店舗で、〝ママチャリ〟ではない、高級仕様の折りたたみできるスポーツ用自転車を販売する『高崎自転車工業㈱』(アメリカの自転車メーカー:バイク・フライデー販売代理店)を営む片岡淳さんをご紹介しながらこのご商売を見つめてみたい。


 取材者は、当誌広報委員会の担当副会頭・松本修平さん(㈱糸庄社長)と副委員長の吉村修二さん(㈱トリオ社長)だ。松本さんは大の自転車ファンでこのお店のお客でもある。吉村さんは健康的な生活に興味を持つ経営者で、靴全般を販売している。


●〝旅する自転車〟として人気

 開口一番に「僕は、これと同じ自転車を持っています」と松本さん。「この自転車は折りたためて専用のスーツケースに入ってしまう!これは材質がスチールだから10kgとちょっと重い。チタンやカーボンの材質であれば8kg、7kgともっと軽いのもある」と続ける。


 吉村さんは「トラベルバイクですか?電車では別料金がかからないのですか?」とすかさず質問をする。片岡さんは「現在は無料です。〝旅する自転車〟がキャッチフレーズのスポーツ用品なのです。群馬トヨタ自動車の横田衛さんもお持ちで、今週末に新潟方面にご一緒します」と自転車に関する知識は膨大で、さらに自転車マニアとの交流が数多くの方とあることがうかがい知れる。


●スポーツ車は他にもあるがなぜ売れる?

 現在高崎市内には、量販店を除いて約80店舗の自転車専門店がある。〝ママチャリ〟など普通自転車が量販店との価格競争で苦境に立っていることは分かるが、スポーツ車に特化して業績を伸ばしている専門店などもあるのに、なぜこの高品質の折りたためるスポーツ車が売れて自転車マニアのネットワークを持てるのだろうか。


 もともと市内高松町・国立高崎病院の入り口近くで「マキエ一貫堂薬局」を祖父の代から受け継ぎ薬局を営む片岡さんだが、なぜこの商売を始めたのかと吉村さん。


 「自転車を趣味にしていたのは中学生の頃からですが、15年位前にラスベガスで見た自転車が〝いい自転車だな!〟と気に入ったので、それを1台購入し、その後メーカーにどうしても扱わせてくれと手紙を再三出してやっと代理店になれました。現在の代理店は、オーストラリア、オランダなど世界で5店舗しかありません」と出発時を明かす。


 さらに、「小径車、折りたたみ、オーダーメードいう3つの特徴をもっていて、ミリ単位でからだに合わせて製作できます。この自転車は非常に狭い範囲ですが、〝買う人がいて売る人がいる〟ことを理解する必要があります。


 以前は高松町のガレージで組立・修理をしていてお店はありませんでした。そして、〝来店は困ります!〟と言っていたくらです」と笑う。「要は趣味の延長なのですが、『自転車を未来の乗り物に高める!』ことが経営理念です。これがうまくいけば自己の達成感が仕事としても成立する。それを時代が後押ししてくれている。ですから遊びながら仕事をさせていただいているのですからその分自転車を乗る人に還元していければと思います」と淡々と語る。


●他で買えないから世界から来店する

 こうしてこの実に稀な高機能自転車の販売を始めて15年程たった片岡さんのお店はどんな状況になっているのだろうか?


 「最近興味深いのは、ご夫婦で来店されて20万円、30万円の自転車を2台買っていく方が多くなっていることです。価格を気にされないで、体に良いという自分のイメージを実現するためならと最初から納得しています。しかも、売っているお店は他には無いのですから。今は首都圏のお客さんが6割、4割が全国で九州からも来ていただいています」と。


 ここで松本さんが興味深い情報を披露した。


 「先日顔を出したら、ドイツからの女性のお客さんが来ていましたよ」と話す。それを肯定してさらに片岡さんは「今は、アジアがブームで、中国・韓国から来て軽井沢などにパック旅行で来た時に寄っていただくのですよ」と徐々に狭い販路は広がっている。


●このご商売は利益をもたらしているか

 吉村さんが、「どのように利益を出すのですか?」と質問すると、片岡さんは、「アメリカのメーカーのホームページを見れば性能や価格は分かりますし、個人でも直接注文を出して購入することができます。例えば1、000ドルのものを200ドル送料を付けて1、200ドルで買えますが、うちではその1、200ドルで売ります。手間が掛からなくて、保証も得られるのでなければお客様はついてきません。技術料も取りたいですがほとんどとりません。商品自体に含み益がありますが、輸入品のリスクは非常に高いので、結果的に利益を出すことは厳しいですよ」というが、利益を出せるという自信と、別の販売店が新たに参入することは困難であるという読みには変わりはない。


 また、今後について「現在の問題は、定価販売ではないことです。見積もりを出して話し合います。ドルと円の為替相場は変動しますから、定価をつけることはできないのです。しかし、数を販売する目標や販売店舗を増やすためには現在のシステムではと考えていますが、逆に販売員の資質などの問題が出てきます」と付け加えた。


 この片岡さんが選択した自転車販売は市場規模が非常に小さいとしても、ビジネスとしても十分成り立っている。


高崎自転車工業㈱
所 在 地:市内下横町10-10
営業時間:平 日 12:00~21:00
     土・日 10:00~19:00
定 休 日:水曜日・木曜日
電  話:027-324-2360
スタッフ:店長・メカニック
(夏のみ軽井沢支店がオープン)


高崎商工会議所『商工たかさき』2008年7月号

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