精密プレスの常識を覆した新技術
(2009年8月)
充電式電池のプラス極部品などの絞り部品
第3回「ものづくり日本大賞」内閣総理大臣賞を受賞した石関さん
石関プレシジョン株式会社
多列高速絞り技術で生産量を増加
石関プレシジョン㈱の社是は「世界一の製品づくり」、精密プレスのエキスパートだ。得意分野は電子部品など小型の精密プレス。複雑な形状の部品もプレスで製作できれば、切削に比べ大幅に工期を短縮しコストを削減できる。
石関社長が開発した多列高速絞り技術は、従来技術と比較し、生産性を15倍に向上、材料歩留りを20%向上、金型メンテナンス頻度を1/10に激減させた。金型職人の高い技術力による金型により、従来1列で毎分100回転でプレスしていた絞り部品を、3列同時に毎分500回転でプレスすることができるようになった。またこの技術は、本年度の「元気なモノ作り中小企業300社」などに選定される決め手になるなど、周りから高い評価を受けている。同社が大きなシェアを占める充電式電池のプラス極部品は、1分間に1,500個以上、月間2,000万個以上の生産が可能だ。
信頼を裏付けるトータル技術
図面から工程を展開し、プレス金型を設計する。平らな金属板をプレス加工するので、設計が悪いと歪みや亀裂が生じる。標準的な加工データはあるが、最後の決め手は経験とノウハウ。試作に1、2カ月を要することもある。
1/1000ミリ単位の精度を保ち、受注よりも厳しい社内基準で検査を行っている。検査では細かな時系列データを採取し、製品の品質と共に金型の磨耗具合もチェックしている。このようなトータル技術が信頼を裏付けている。
いいものを作るためには失敗を恐れるな
石関社長は、大八木工業団地にある㈱石関工範の会長だったが、自分の得意分野の力を試したいと2002年に別会社として同社を設立した。「あきらめない限り成功への道は開かれている。失敗を恐れてはいけない」と後進の育成に力を入れている。金型製作(プレス金型製作作業)の技能検定試験では受験した社員4人を全員合格させ、同試験の群馬県第一位の技能者も出した。「毎日の仕事で培った技術が試験でも発揮できた」と我がことのように喜んでいる。
国内トップレベルの技術を自負する石関社長。「できませんと断るのが一番簡単。ものづくりの達成感は努力したものでないとわからない。お客様の喜びが大きな励みになる」。緻密な研究、豊かな発想、技術の継承を社員に浸透させている。
代表取締役:石関 誠二
住所:高崎市箕郷町矢原2177-1
TEL:027-371-5758
FAX:027-371-5986
URL:http://www.i-precision.co.jp/
高崎商工会議所『商工たかさき』2009年8月号