昔ながらの手仕事。江戸小紋の技術を継承
(2018年09月30日)
江戸小紋師 麻薙詩乃さん
「スタイリッシュで凛とした気品があり、身にまとえば、人の目をひくこと請け合いです」。展覧会出品のために初めて染めた江戸小紋を着物に仕立て、友人の結婚式に出席した麻薙さん。「一緒に写真を撮ろうと引っ張りだこだった」と誇らしげだ。
江戸小紋は、精緻な柄を彫り起こして型紙を作る型彫師と、それを使って柄を染める染師の技術の融合から生まれる。工房で使われる型紙は、親方の藍田正雄さんが当時人間国宝だった型彫師のもとに何度も足を運んでやっと入手した貴重なもの。
この型紙を使った「型付け」の工程が最も難しい。白い生地の上に型紙を重ね、上から防染糊を置いていく。“3往復のヘラの動きで紙一枚ほどの厚さに糊を置く”という感覚を体が覚え込むまでには長い時間が必要となる。
「最近、糊を均等に平らに置けるようになりました」と、麻薙さんは江戸小紋師としての成長を実感する。この工程の完成度を上げると、染ムラを修正する「地直し」の時間が削減でき作業効率が格段に上がる。
「君はすごいんだよ。自信を持って」。行き詰ってふてくされた麻薙さんを温かく励ましてくれた親方の藍田正雄さんが、昨年7月9日に逝去した。その言葉を今なら素直に受け止められる。「一流の職人だった親方。そして先輩たちの教えを受けて大事に育ててもらってきた自分は、まさにレアキャラ(希少種)!」。だからこそ、同世代の若者たちに江戸小紋の魅力を発信し、ニーズを掘り起こす義務がある。展覧会で入賞するのもその一環。
藍田染工
住所:高崎市足門町637-18
TEL:027-373-6163
業種:江戸小紋染め
江戸小紋
江戸時代の武士の裃に使われていた「定め小紋」がルーツ。精密で繊細な模様は、遠目からは深みのある無地に見える。江戸小紋の紋付は、準礼装と同等の格をもち、フォーマルシーンにも対応する。
『商工たかさき』2018年8月号